一般的な先進国が1年で放出する量のメタンがアメリカのガス田事故で漏出したと判明
2018年2月にアメリカ・オハイオ州で発生したガス田事故によるメタンの総漏出量が、イギリス・ドイツを除くヨーロッパの国が1年で放出する量に相当するという研究結果が発表されました。
Satellite observations reveal extreme methane leakage from a natural gas well blowout | PNAS
https://www.pnas.org/content/early/2019/12/10/1908712116
Ohio gas well blowout leaked more than many countries do in a year | Ars Technica
https://arstechnica.com/science/2019/12/ohio-gas-well-accident-last-year-released-surprising-amount-of-methane/
問題のガス田事故は、2019年2月15日にオハイオ州とウェストバージニア州との州境付近に位置するXTOエネルギーのガス田で生じました。事故による漏出は20日間も持続し、二酸化炭素の25倍もの温室効果を有するメタンを含むガスが放出され続けました。事故当時の映像が以下。山間から一目でわかるほど大規模に黒煙が立ち上っています。
Powhatan Point XTO Well Pad Explosion Footage from Ohio State Highway Patrol - YouTube
オランダ宇宙研究所(SRON)のSudhanshu Pandey博士率いる研究チームは、約7kmという高い分解能でメタンを識別できる欧州宇宙機関(ESA)の新型衛星「Sentinel-5P」のデータを活用して、事故当時の気象条件などのシミュレーションを行って、メタンの総漏出量を算定しました。
漏出は20日間持続しましたが、Sentinel-5Pが地上を観測できるような晴れの日は2日だけだったため、算定値にはかなりの誤差が認められています。シミュレーションによる補正などを含めた計算の結果、研究チームは問題の事故によるメタンの漏出量は1時間あたり98トンから152トンだったと推定。この推定値を元に算出された、20日間のトータルでのメタン漏出量は、合計で約4万5000トンから7万5000トンになるとのこと。研究チームはこの総漏出量を、「ヨーロッパに属する国の、1年分の石油や天然ガスによるメタン排出量に相当する」と表現しています。
By antonpetrus
オハイオ州のガス田事故は、メタン漏出に関する重要な事実に光を当てています。それは、「スーパーエミッター」と呼ばれる漏出が特に激しい掘削施設が、総漏出量の大半を占めているという事実です。漏出上位10%の掘削施設が、総漏出量の77%を排出しているという研究結果も発表されています。
今回発表された研究では、研究チームは、「Sentinel-5Pのような衛星を用いれば、機械を点検して『誤作動などによる漏出の有無』を調べる必要はありません。衛星は常にメタン排出量を監視してくれるので、スーパーエミッターは自ずから特定されます」と述べています。
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