レビュー

美しい野鳥をいざなって「鳥のパラダイス」を作り上げるボードゲーム「ウイングスパン」プレイレビュー


美麗なアートワークや餌箱型ダイスタワー、専用ダイスなどの凝ったアイテムを駆使し、170種類もの鳥からなる鳥の楽園を作り上げるというボードゲームが「ウイングスパン」です。2019年にはボードゲーム大国であるドイツで年間ゲーム大賞エキスパート部門の大賞を受賞したという注目作品なので、編集部で実際に日本語版をプレイしてきました。

ウイングスパン 完全日本語版 | ArclightGames Official
https://arclightgames.jp/product/ウイングスパン/

ウィングスパンは片手で持ち上げるのは困難なほどの大きさ&重さのパッケージ。大きく羽ばたいたエンビタイランチョウが描かれています。


プレイ人数は1~5人、対象年齢は10歳以上、プレイ想定時間は40分~70分。


パッケージの中には、鳥カード、ボーナスカード、カードトレイ、トークン・目的タイルシート、個人ボード、説明書、卵トークン、アクションコマ、専用ダイスが入っています。


「鳥カード」は文字通り鳥のカード。プレイヤーはこの鳥たちを保護して、自分の自然保護区を鳥の楽園にしていきます。


ウイングスパンには、北アメリカで見られる914種類の鳥のうち、170種類が採録されています。そのため鳥カードはかなりの枚数。


「ボーナスカード」はそれぞれのプレイヤーの個人目標を記したカード。カードに書かれた条件を達成することで勝利点が得られます。


「目的タイル」は全プレイヤーの共通目標。ゲームの区切りごとに、各プレイヤーは目的タイルの条件に応じた勝利点を得られます。


「卵トークン」は鳥を自分の自然保護区に呼び寄せるときに必要になります。なお、5種類の色がありますが、色による違いはありません。


鳥カードの餌が「餌トークン」。左から順に「果実」「魚」「無脊椎動物」「げっ歯類」「種子」で、鳥はそれぞれ決まった餌しか食べられません。


鳥たちが餌を食べに来る、組み立て式の「餌箱型ダイスタワー」がこれ。


説明書に従って組み立てて……


完成するとこんな感じ。


背面には専用ダイスを投入する穴が空いています。


ダイスを投入すると中でゴロゴロ転がって、こんな感じで下段に出てきます。各プレイヤーはここから鳥の餌をゲットするというわけです。


実際に投入している様子が以下。

「ウイングスパン」の餌箱型ダイスタワーはこんな感じ - YouTube


ウイングスパンは自分の自然保護区を豊かにし、鳥カードやボーナスカード、産卵した卵、蓄えた餌から得られる勝利点を、もっとも多く獲得した人が勝利となります。

というわけで、実際にプレイしてみます。まずは卵トークン・鳥カード・餌トークン・餌箱型ダイスタワーを全員の手の届くところに置きます。


カードトレイに山札から鳥カードを表向きで3枚設置します。


「目的ボード」は各ラウンドごとの勝利点を示すボード。


目的タイルをランダムに選んで、それぞれのラウンドにセットします。各ラウンド終了時に、配置している鳥カードの枚数や鳥カードに置かれている卵トークンの数に応じて順位が決まり、勝利点が得られます。また、1ラウンド目は8ターンありますが、2ラウンド目、3ラウンド目、4ラウンド目はそれぞれ7・6・5ターンと徐々にターン数は減っていきます。


ゲーム開始時には、各プレイヤーにボーナスカード2枚・アクショントークン7個・鳥カード5枚・餌トークン1種類ずつ計5個が配られます。


鳥カードはそれぞれ能力が異なっていますが、中でも以下の画像の赤枠部分の「能力」が重要。「起動時」と書かれたカードは、各アクションを実行するごとに能力が使えるので、条件を満たせば何度でも発動できます。


「プレイ時」と書かれた能力は、鳥を自分の保護区に呼び寄せたタイミングで、1度だけ発動します。


「次の手番まで1回」という能力は、他のプレイヤーが特定のアクションを取ったときに自動で発動する能力。ウイングスパンは他プレイヤーに対する直接的な妨害が存在しないので、「他プレイヤーが卵/餌トークンを得たときに自分も得る」などの効果が主。強力な能力ですが、1ターンに1度しか発動しません。


能力を持たない鳥もいます。


能力を持たない鳥は、自分の保護区に呼び寄せて得られる勝利点(赤枠部分)が高く設定されているなど、基礎的な能力に優れています。


まず初めに、プレイヤーは5枚の鳥カードから、好きな枚数だけ「残す鳥カード」を選びます。説明書いわく、「『起動時』の能力は、特に有効です!」とのことなので、起動時の能力を有するパッケージにも描かれていたエンビタイランチョウとアメリカフクロウを選びます。


手札に残した鳥カードと餌トークンの合計数が「5」になるように、餌トークンも手元に残すものを選びます。今回はげっ歯類・無脊椎動物・果実を残しました。


続いてボーナスカードを2枚のうちから1枚選びます。今回配られたのは、「『捕食』の能力を持つ鳥カード1枚につき2点獲得」という「鷹匠」カードと、「『湿地』にのみ住む鳥カードの枚数」が3枚から4枚なら3点、5枚以上なら7点という「湿地研究者」のカードでした。


アメリカフクロウは「捕食」の能力を有しているので、「鷹匠」を選ぶことに。


また、各プレイヤーには「個人ボード」も配られます。個人ボードの裏面は革張りのようなデザイン。


パカッと開くと、「自分の保護地」が示されています。上側から順に「森林」「草原」「湿地」という鳥の生態に応じた生息地が描かれています。


これで準備は終了。実際にプレイ開始してみます。ウイングスパンの説明書は丁寧かつわかりやすく、「この解釈がよくわからない」と思うようなルールは、細かくしっかり解説されています。また、英語版の公式ページに遊び方解説ムービーもあるので、実際の「ゲームの進行」をチェックすることも可能です。


親を決めて、時計回りに順番が回ります。自分のターンでは、「鳥カードのプレイ」「餌箱から餌の獲得」「鳥カード上に産卵」「鳥カードの獲得」という4種類のアクションが可能です。各アクションを1度行った後は、それでターンは終了するので、1ターンで複数のアクションを行うことはできません。


「アクショントークン」はアクションを行うときに、他のプレイヤーに「このアクションを行います」とわかりやすくするためのコマで、プレイヤーごとにそれぞれの色があります。まずはアクショントークンを置いて、「鳥カードのプレイ」を実行します。


「鳥カードのプレイ」は、「手札から自分の保護区に鳥カードを置く」というもの。このとき、鳥カードの左上に描かれている生息地を見て、対応する生息地に鳥カードを置きます。アメリカフクロウは森林にしか生息できないというわけです。また、鳥カードは各生息地に左詰めで置いていきます。


鳥カードを森林に出すタイミングでカードに描かれた餌を支払います。アメリカフクロウを自分の保護地で養うには、げっ歯類トークン1つが必要。「鳥カードのプレイ」は、場に鳥カードを置くとターンが終了します。


アメリカフクロウを出した結果、エンビタイランチョウと無脊椎動物と果実のトークンが残りました。エンビタイランチョウを「鳥カードのプレイ」で自分の保護地に呼び寄せるには、無脊椎動物のトークンが1個足りません。


そのため、自分のターン「餌の獲得」を実行します。餌の獲得は「森林」で実行可能。すでに左端のマスにはアメリカフクロウが置かれているので、その隣の赤枠部分にあるマスに書かれている指示の通りに餌の獲得を行うこととなります。このマスは「ダイスが示す餌トークンを1個獲得。さらに、手札を1枚捨てて追加でダイスが示す餌トークンをもう1つ獲得することもできる」というものでした。


餌箱型ダイスタワーから、ダイスを1つ取得して、対応する餌トークンを獲得します。


さらに、「餌の獲得」「産卵」「鳥カード」のアクションでは、すでに並べられている鳥カードの「起動時」の能力を右から順に起動することが可能です。今回、置かれているアメリカフクロウの「鳥の山の一番上のカードを確認する。その鳥の翼長が75cm未満なら、この鳥の下にその鳥を差し込む。そうでないなら、その鳥を捨て札にする」という能力が発動しました。


指示に従って、山札の一番上のカードを確認すると、翼長43cmのコマツグミでした。


コマツグミは翼長が75cmだったので、アメリカフクロウに「捕食」されてしまいました。捕食されたコマツグミは、アメリカフクロウの下に裏向きで差し込まれます。差し込まれたカードの枚数も勝利点としてカウントされます。


アクションを選択したとき、すでに並べられている鳥カードの「起動時」能力が全部発動するというのがウイングスパンの特徴の1つ。以下の画像のように森林に「起動時」能力を持つ鳥を5匹並べていると、右から順に全ての鳥の能力が発動します。以下の画像の場合では、能力を全て合算すると、最大で種子3個&無脊椎動物1個&果実1個を獲得可能という、かなりパワフルな組み合わせ。


しかし、森林・草原・湿地の2列目以降に「鳥カードのプレイ」で鳥カードを置く場合、卵トークンが追加コストとして必要になります。


そんなときは、卵トークンを獲得できる「鳥カード上に産卵」アクションを実行。


獲得した卵トークンは、すでに並べられている鳥カードの上に置きます。すでに保護区で暮らしている鳥たちがそれぞれ卵を産んで、保護区を豊かにしてくれるというわけです。卵トークンを追加コストとして支払う場合は、任意の鳥の上に置かれた卵トークンを消費します。


また、それぞれの鳥カードの上に置ける卵トークンの個数はカードによって制限があります。この数は「実際にその鳥が産む卵の数」に比例しているとのこと。この設置上限数は1個から6個までなので、画像のエンビタイランチョウは「それほど多くの卵を産まない鳥」ということになります。


手元の鳥カードが0枚の場合など、鳥カードを引きたいときには、「鳥カードの獲得」アクション。


「鳥カードの獲得」では、カードトレイに並べられた3枚のカードか、山札からカードを指定の枚数引いて手札に加えます。


各プレイヤーは「鳥カードのプレイ」「餌箱から餌の獲得」「鳥カード上に産卵」「鳥カードの獲得」を行って自分の保護区を拡大するというわけです。

指定のターン数が経過すると、ラウンドが終了。各ラウンドごとに設定された「保護区に置かれた鳥カードの枚数」などの目的に応じて勝利点を獲得します。同じ順位のプレイヤーがいた場合、プレイヤーの人数で勝利点を割り算してから分配します。


また、ラウンド終了ごとに、カードトレイに置かれている3枚のカードを破棄して山札から新たな3枚を並べます。


実際にプレイすると、ゲットした鳥カードなどの状況に応じて取れる戦略がかなり変化します。「産卵」に特化して卵トークンの数で勝利点を稼ごうとする編集部員もいれば……


森林に鳥カードをズラッと並べて「餌の獲得」に特化する編集部員も。ズラーッと並んだ鳥カードの能力を発動させるとかなりの爽快感。


一方で、こんな感じで「起動時」以外の能力のカードを並べると、対応するアクションを実行しても鳥の能力は発動しません。「プレイ時」のカードは場に出したタイミングでは強力な効果を発動できますが、長期的には弱いわけです。


編集部員3名がガチンコで勝負した結果が以下。複数回プレイしても、それほど大きな差は出ませんでした。


ウイングスパンに「他人に妨害される」という要素がないこともプレイが快適だと感じる要因の1つ。しかし、ハシグロアビの「湿地の鳥が最も少ない各プレイヤーは、鳥カードを1枚ずつ獲得する」といった能力など、「他のプレイヤーの利益になる」カードはあるので、間接的に自分が不利になることはあります。


また、各コンポーネントのビジュアルの美麗さも見所の1つ。


設定されている鳥の能力は、現実の鳥の生態に即したものになっていたり……


各カードには豆知識が書かれていたりするので、愛鳥家にはまさに必見。鳥のことをよく知らないという人でも、眺めているだけで鳥への興味が増していきます。


引くカード次第でグッと戦略が変化するため、プレイするたびに展開が変わってリプレイ性が高い点も魅力。その反面、ある程度運に左右される印象はあります。また、箱にはプレイ時間40~70分と表記されていますが、編集部員5人でカードの効果を確認しながらプレイしたときには、3時間ほどかかりました。

また、友だちと集まってボードゲームをする時間がなかなかとれないという人向けの「一人用モード」もあるので、実際にプレイしてみました。


一人用モードでは、簡略化されたルールにしたがって、人間よりも速いペースで鳥カードや卵を獲得して得点を重ねる「オートマ」相手に戦います。また、一人用モード専用マニュアルもあります。


対戦相手がマニュアル化した以外は基本的に同じ。最高難易度のオートマはかなりの早さで得点していくので、倒すのには実力と運の両方が必要でした。


ウイングスパンはメーカー希望小売価格は税別6500円ですが、品薄のためか、記事作成時点ではマーケットプレイスで税込1万500円で販売されていました。

Amazon | ウイングスパン 完全日本語版 | ボードゲーム | おもちゃ

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in レビュー,   動画,   ゲーム, Posted by darkhorse_log

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