サイエンス

パンが片頭痛を引き起こす仕組みとは?

by Evgeni Tcherkasski

片頭痛は単に頭痛が起こるだけでなく、吐き気・おう吐・光過敏症・めまいといった症状が含まれ、世界で3番目に多い病気として数千万人を苦しめています。偏頭痛の原因は人によってさまざまですが、環境・ホルモン・遺伝のほか、チーズ・赤ワイン・チョコレートといった特定の食べ物によって引き起こされることも。近年はグルテンを原因とする偏頭痛が注目されているということで、南カリフォルニア大学神経学准教授のLauren Green氏がその仕組みについて解説しています。

How does a piece of bread cause a migraine?
https://theconversation.com/how-does-a-piece-of-bread-cause-a-migraine-126421

小麦・大麦・ライ麦などに含まれるタンパク質の一種であるグルテンに対する免疫反応が引き金になって起こる自己免疫疾患を「セリアック病」と呼びます。近年の調査では、セリアック病患者のグルテン摂取と偏頭痛の間に関連性が確認されています。

by Aiony Haust

セリアック病を患っていない人がグルテンを摂取した時、食べ物は胃腸を通り、栄養が吸収されていきます。一方でセリアック病を患う人の体の中では、免疫系がグルテンを外敵だとみなし、攻撃を行います。この攻撃で使われるトランスグルタミナーゼ抗体はグルテンを破壊するのですが、問題は、この攻撃の中で人の健康な組織もまた破壊されてしまうということ。グルテンは胃腸で吸収されていきますが、抗体は吸収されていくグルテンを見つけ出し、細胞ごと壊してしまうためです。

組織損傷といった異常に対し、体は警告サインである炎症を起こします。炎症は体の至る所で起こり、胃腸問題・疲れ・学習困難、そして頭痛といった形で現れるとのこと。

初期の研究では、偏頭痛の原因は血管の拡大にあると考えられていましたが、最新の研究では偏頭痛の原因は血管の拡張だけにとどまらないと考えられています。偏頭痛には、「かむ」といった顔の動きに関係する三叉神経血管経路(TVP)内の神経が関係しているとのこと。

グルテンによって三叉神経血管経路が活性化すると、アレルギー症状を起こすヒスタミンを始めとする化学物質が放出されます。このとき、三叉神経血管経路の神経はカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)と呼ばれる偏頭痛のトリガーとなる物質を放出することも、近年の研究でわかってきました。

by Kobby Mendez

CGRPが放出されると髄膜内の血管が拡張され、タンパク質や水分が髄膜に流れ出します。これにより三叉神経が刺激され、痛みを知覚する視床など脳の他の部位までメッセージを送り、偏頭痛が起こるわけです。2018年には片頭痛予防薬としてCGRPモノクローナル抗体と呼ばれる薬がアメリカ食品医薬品局に承認されました。この薬は、CGRPが受容体と結合することを防ぎます。

通常、食品がトリガーとなる偏頭痛は、食品摂取後15分以内にその症状が現れます。セリアック病と診断された人は食べる物からグルテンを取り除くことが重要となりますが、セリアック病と診断されなかった人でも非セリアック・グルテン過敏症である可能性があるため、食品からグルテンを抜いてみることは価値があると考えられています。

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in サイエンス, Posted by darkhorse_log

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