スポーツや職場の評価では「運」が「技術」と混同され過大評価されがちだとの研究結果
by fotografierende
2017年に発表されたプロスポーツの分析により、「サッカーの試合はバスケットボールやテニスに比べて運に左右されやすい」ことが判明しています。そのサッカーの試合における1万回以上のシュートに関する統計的な研究から、「運」と「技術」は混同されやすいことが分かりました。
Fooled by Performance Randomness: Overrewarding Luck | The Review of Economics and Statistics | MIT Press Journals
https://www.mitpressjournals.org/doi/abs/10.1162/rest_a_00783
Evaluation bias muddying performance perceptions
https://www.smh.com.au/business/workplace/evaluation-bias-muddying-performance-perceptions-20191104-p5375a.html
オーストラリアにあるシドニー工科大学ビジネススクールの経済学教授であるライオネル・ペイジ氏らは、ヨーロッパで開催されたプロサッカーの試合のデータを調べて、ゴールポストに到達した1万回以上のシュートと、シュートした選手のパフォーマンスを分析しました。その結果、「ゴールに入って得点になったシュートを決めた選手」と、「得点を得られなかった選手」の、その後の試合における平均的なパフォーマンスに有意な違いは見られなかったとのこと。
by Phovoir
このことからペイジ氏は「ゴールポストに到達したシュートが得点につながるかどうかは、選手の技術より偶然に左右されることが分かりました」と述べています。
しかし、ゴールを決めた選手はその後の試合で監督から長いプレー時間を与えられることが多く、ジャーナリストやサッカーファンからの評価も高かったとのこと。また、この傾向は得点が試合の勝敗を左右するもので、得点によりチームが勝てそうだった場合に特に顕著でした。
ペイジ氏はこの調査結果から、「運がサッカー選手の格付けや評価に過度な影響を与えていることを踏まえると、この傾向はビジネスや他の分野にもあてはまる可能性があります」と述べて、サッカー以外のチームスポーツや、企業におけるチームワークでも運が評価に過大な影響を与えかねないことを指摘ました。
by nd3000
ペイジ氏によると、職場の上司や意志決定者の判断には、しばしば「結果バイアス」がかかっているのだとのこと。結果バイアスとは、「結果が偶然の産物だったとしても、良い結果には良い評価が与えられる」という認知バイアスの一種です。ビジネスの世界では課程よりも結果が重視されるため、成果主義が採用されることが多々ありますが、「ゴールを決めた選手には長いプレー時間を与えられた」事例からも分かるとおり、幸運にも良い結果が得られた人は、その後もチャンスを与えられてさらに成果を挙げる可能性があります。
こうした知見を踏まえて、ペイジ氏は「誰かの成功は運が重要な要因になっている可能性が高いことや、誰かが成功しなかった場合、その人にはどうすることもできない事由があった可能性があることに留意しておく必要があります」と話し、結果だけを見て人を評価するべきではないとの見方を示しました。
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