ランニング中にハエの群れの中を通った女性の目から取り出された蠢く物体とは？

by Createria

夏の夕暮れ時に、水たまりの上や電灯の下に蚊柱が立っているのを目にしたことがある人は多いはず。もし気づかず蚊柱に突っ込んでしまっても、大抵の場合は不快なだけで大事には至りません。しかし、アメリカでランニング中に虫の群れの中に顔を突っ込んでしまった人の目から、寄生虫が発見されるという事件が発生しました。今回発見された種の寄生虫が人の目から発見されたのは、世界でもたった2例目だとのことです。

A Second Case of Human Conjunctival Infestation With Thelazia gulosa and a Review of T. gulosa in North America
https://www.researchgate.net/publication/336746845_A_Second_Case_of_Human_Conjunctival_Infestation_With_Thelazia_gulosa_and_a_Review_of_T_gulosa_in_North_America

Woman Finds Parasitic Worms in Her Eyes After Running Through a Swarm of Flies
https://www.sciencealert.com/woman-finds-parasitic-worms-in-her-eyes-after-running-face-first-into-swarm-of-flies

アメリカ疾病予防管理センター(CDC)は、「ネブラスカ州に住む68歳の女性の目から4匹の寄生虫を発見した」と発表しました。寄生虫はThelazia gulosaという種類の線虫で、主に牛やヤクの目に寄生し、目の粘液を食べて生育することで知られています。

女性は、不整地を走るトレイルランニングを趣味にしており、2018年2月上旬にはカリフォルニア州にある避寒地でトレイルランニングを楽しみながら冬を過ごしていました。女性がトレイルランニングをしていた公園の近くには、牛や馬を飼育する牧場があったとのこと。

by blas

女性はある日のトレイルランニングの際に、不意に小さなハエの群れに顔を突っ込んでしまい、口の中に入ったハエを吐き出したとのこと。その時は何ともありませんでしたが、3月上旬になって右目に刺激を感じたため、水道水で目を洗ったところ、0.5インチ(約1.27cm)ほどの大きさの透明な線虫が2匹動いているのを発見。翌日受診した眼科で、眼科医の手により3匹目の線虫が摘出されました。眼科医は女性に、二次感染を防ぐための抗生物質を処方し、引き続き目をよく洗うよう指示しました。

3月中旬にネブラスカ州の自宅に戻っても、女性の目の痛みは治らなかったため、再度眼科を受診したところ結膜炎と診断されただけで寄生虫は見つかりませんでした。しかし、診断の直後に女性が目を洗うと、4匹目の線虫が出てきました。これを最後に目の痛みや結膜炎はおさまり、その後の検査でも寄生虫が存在する兆候は見られなかったとのこと。

女性は合計で3匹の線虫を自力で目から取り出したことになりますが、カリフォルニア州の眼科医が線虫をホルマリン漬けにして保管していたため、CDCが検査したところ、線虫はThelazia gulosaと断定されました。Thelazia gulosaは2018年2月にも、オレゴン州在住の26歳の女性の目から14匹発見されており、Thelazia gulosaの感染例としては今回の事例が2例目だとのこと。アメリカでは以前にも、人の目から線虫が摘出された事例が10件報告されていますが、全てThelazia californiensisという別種の線虫で、Thelazia gulosaが人の目から見つかったのは2018年が初めてです。

by Richard Stewart Bradbury

CDCの研究チームは、「Thelazia gulosaが人に寄生した理由は不明」だとしつつも、「重要なのは、サンプルとなった線虫の中に、発育した幼虫が中に入っている虫卵が確認されたことです」と指摘し、これまで牛などの目からしか発見されてこなかったThelazia gulosaが人の目でも繁殖可能なことを示唆しました。