がん患者がイラクやアフガニスタンの戦闘を経験した退役軍人に急増しているという報告
by U.S.Army
日刊紙29紙を発行している新聞社・McClatchyが、アフガニスタン紛争やイラク戦争に参加した退役アメリカ軍人で、肝臓がん、前立腺がん、血液がんなどを患う人が61%も急増していると報じています。
Why are so many Iraq, Afghanistan war veterans getting cancer? | McClatchy Washington Bureau
https://www.mcclatchydc.com/news/nation-world/national/national-security/article236413328.html
McClatchyは、2000年度から2018年度までの退役軍人用医療施設(VA)でのがん診断データを、情報公開法による要請で入手した上で分析。VAで診察を受けている退役軍人の数は2000年だと320万人だったのが、2018年末には620万人とほぼ倍増していたそうです。McClatchyは、第二次世界大戦が終わって軍隊が削減されたにもかかわらず、診察を受ける退役軍人が増加していることに注目しています。
by Airman 1st Class Kaylee Dubois
そして、VAで治療されているがんの症例数は、2000年では33万6453件だったのが、2018年では71万215件と倍増。特に、リンパ腫や骨髄腫、白血病といった血液がんの治療を受けている人が18%増加し、前立腺がんの治療を受けている人は23%増加していたとのこと。また、もっとも増えていたのがすい臓がんと肝臓がんの患者で、全体では96%も増加していたそうです。特に海兵隊内では112%の増加、陸軍では104%の増加と、2倍以上に増加していたことがわかりました。
McClatchyによれば、退役軍人ががん治療を受けている割合は2009年にピークに達し、そこから数年で低下したそうです。それでも、2001年9月11日のアメリカ同時多発テロ事件をきっかけに始まったアフガニスタン戦争以前よりも大幅に高くなっているとのこと。
なぜアフガニスタン紛争やイラク戦争に参加した軍人の中でがんの発症率が高くなっているか、その原因はまだ明らかにはなっていませんが、アメリカ国防総省は、少なくとも1つの有毒物質暴露エリアを調査しているそうで、McClatchyは「アメリカ軍で使われている消火用の泡による影響が疑われている」と報じています。
McClatchyががん治療を受ける退役軍人の数が増加していることをVAに指摘したところ、VAは「主にアメリカ国内でがん患者が増加している傾向を反映している」と反論しました。しかし、脳がんの治療を受けている割合は33%減少したとMcClatchyは分析しています。このほか、精巣がんは22%、肺がんなどの呼吸器がんは13%減少しており、がんの種類によって増減が偏っていると指摘しています。
アメリカ陸軍軍曹だったカート・フォーシーさんは、イラクでの2度目の任務中に鼻血が止まらなくなったとのこと。その後、フォーシーさんはクウェートにある病院に入院し、白血病と診断されたとのこと。フォーシー氏はすぐにドイツへ搬送されましたが、フォーシー氏の奥さんがドイツに着いた頃には昏睡状態となり、22歳の若さでこの世を去りました。
奥さんのローラ・フォーシーさんは軍配偶者の支援グループに参加し、他の軍関係者の夫を亡くした女性と交流を行っているとのこと。ローラさんは「支援グループで出会ったのは、同じ場所もしくは同じ年にイラクやアフガニスタンに赴任した夫を亡くした女性ばかりです。がんによって話が結びつき始めています。大きなつながりを作っているのは軍隊でした」とMcClatchyに語りました。
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