AMDの第3世代Ryzen CPUで「システムが起動しなくなるバグ」の修正が遅々として進んでいないという報告
by Fritzchens Fritz
2019年7月7日に発売されたAMDのZen 2アーキテクチャを採用した第3世代RyzenのRyzen 3000シリーズで命令系統に不具合があり、一部環境が動作しないという不具合が、2019年7月下旬に報告されていました。これについて、AMDは「BIOSのアップデートで修正可能」と説明しましたが、技術系メディアArs Technicaの記者であるジム・ソルター氏が、自身の体験と共に「7月に発見された不具合の修正が3カ月経っても進んでいない」と報告しています。
How a months-old AMD microcode bug destroyed my weekend [UPDATED] | Ars Technica
https://arstechnica.com/gadgets/2019/10/how-a-months-old-amd-microcode-bug-destroyed-my-weekend/
2019年夏、「ハードウェア乱数を返すRDRAND命令が乱数ではなく-1(0xffffffff)を返してしまう不具合」が確認されました。
Linuxの起動処理やシステム管理を行うsystemdはバージョン240以降でRDRAND命令を使用するようになっていたため、systemdのバージョン240以降を採用するLinuxディストリビューションがブートできなくなってしまいました。他にも、Windows向けのマルチプレイヤーアクションRPG「Destiny 2」を起動できないという報告もあがっています。
Bug #1835809 “AMD Ryzen 3000 series fails to boot” : Bugs : systemd package : Ubuntu
https://bugs.launchpad.net/ubuntu/+source/systemd/+bug/1835809
本の虫: AMDのZen 2でRDRANDが-1を返すので最近のGNU/Linuxがブートできない問題
https://cpplover.blogspot.com/2019/07/amdzen-2rdrand-1gnulinux.html
2019年5月に、systemdのRDRANDに関するエラーに対応したパッチがコミットされました。このパッチはあくまでも応急処置といったところで、適用しても問題の根本的な修正はできませんが、ひとまずLinuxディストリビューションの起動はできるようになったとのこと。
AMDは2019年7月に、BIOSのアップデートをマザーボードに適用することで、RDRAND命令に関するマイクロコードの修正パッチが当てられると発表しました。しかし、マイクロコードの修正パッチを導入したBIOSアップデートを提供するのはAMDではなくマザーボードベンダーであり、どうしてもアップデートの公開まで時間がかかってしまいます。
RdRand issue looks like will be fixable by a BIOS update.
— Michael Larabel (@michaellarabel) July 8, 2019
ソルター氏はこのAMD Ryzen 3000シリーズの不具合に悩まされていたそうで、systemdの修正パッチを当てたり、Ubuntu 19.10に含まれているという「amd64-microcode」や「intel-microcode」パッケージを試してみたりしたものの、どうしても不具合を根本的に解決することはできなかったため、AMDの担当者に直接メールで連絡して解決策を仰ぎました。
ソルター氏がASRock製のマザーボード「Asrock Rack X470D4U」を使っていることをAMDの担当者に告げると、AMD経由でASRockに連絡がつながり、ASRockの担当者からマイクロコードを適切に修正したカスタムBIOSの提供を提案されたとのこと。しかし、ソルター氏は「自分だけがBIOSを受け取るわけにはいかない」と丁寧に断ったそうです。なお、AMDの担当者がソルター氏に伝えたところによると、ASRockのマイクロコード修正を反映したBIOSアップデートは2019年11月中旬までに公開される予定だとのこと。
ソルター氏によると、AMDは既に各マザーボードベンダーに修正内容を伝えており、マイクロコードの修正を含んだBIOSアップデートを用意しているメーカーも存在しているとのこと。しかし、全てのマザーボードベンダーがBIOSアップデートを行っているわけではありません。
by Fritzchens Fritz
ソルター氏は今回の不具合を「非常に深刻なバグ」だとしており、AMDは1、2週間で迅速に反応しているように見せかけながら、実際はマザーボードベンダーに修正を放り投げただけで、具体的な行動はほとんど見せていなかったと指摘。過去3カ月にわたって、AMDがこの問題についてあまり多くのことを語らなかったり、迅速に行動に移さなかったりしたことは問題だと批判しています。
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