ヤギの顔から痛みを感じているかどうかを判別するAIが登場
フロリダ大学の研究チームが、AIを使ってヤギの痛みを検出する手法を開発したと発表しました。結石に苦しむヤギから手術後のヤギまで、さまざまな状態のヤギの表情を分析し、痛みの有無を判別することに成功したとのことです。
Automated acute pain prediction in domestic goats using deep learning-based models on video-recordings | Scientific Reports
https://www.nature.com/articles/s41598-024-78494-0
Scientists train AI to detect pain—in goats
https://phys.org/news/2024-11-scientists-ai-pain-goats.html
これまで、マウスやラット、ウシ、ヒツジ、ブタ、ウサギ、フェレットなど、様々な動物で表情に基づく痛みのスケールが開発されてきました。また、オランウータンやチンパンジー、ウマ、イヌ、ネコなどでは、人間の顔面動作符号化システム(FACS)のような表情分類システムが開発されています。
しかし、これらの評価システムには、手動での注釈付けが必要であり、時間と費用がかかるという課題がありました。また、評価者の広範囲にわたる訓練と認証が必要で、主観的な判断が入る余地もありました。特にヤギについては、研究開始時点で若い健康なオスの去勢手術に限定された痛みスケールしか存在せず、より広範な状況で使用できる評価システムが必要とされていたとのこと。
研究チームは痛みを感じているヤギ20頭と、痛みを感じていないヤギ20頭の映像を収集し、そこから抽出した画像を使用してモデルを訓練しました。痛みの評価には「UNESP-Botucatu Goat Acute Pain Scale (UGASP)」というスケールを使用し、スコアが3以上の場合を「痛みあり」と分類しました。対象となった山羊は様々な品種、年齢、性別で、痛みの原因は膀胱結石や外科手術後などにありました。
研究では、VGG-16という事前学習済みの畳み込みニューラルネットワークをベースに、サポートベクターマシン分類器を組み合わせたモデルを開発。映像からの画像抽出は1秒あたり1フレームと3フレームの2パターンで試験を行いました。その結果、検証方法によって精度は異なりましたが、単一のホールドアウト検証と5分割交差検証では約80%の精度を達成し、より厳密な個体別10分割交差検証でも60%以上の精度を示しました。
この研究は、動物の痛みの客観的な評価手法の開発に貢献するだけでなく、将来的には言語によるコミュニケーションが困難な小児や非言語的な患者の痛みの評価にも応用できる可能性があります。
また、農業分野においても、家畜の痛みを適切に管理することで、動物福祉の向上と生産性の改善につながることが期待されています。研究チームは、より多くのデータを収集し、さらなる研究を進めることで、獣医療における実用的な痛み評価システムの開発を今後の課題としました。
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