サイエンス

ラットは車の運転をマスター可能で「運転するとリラックスする」と判明


ラットに小型の車の運転を学習させるという実験が行われました。実験の結果、ラットは車の運転を見事にマスターし、さらに野生のラットは実験室のラットよりも学習に優れていることや、車の運転を学習することでストレスが軽減されることが判明しました。

Enriched Environment Exposure Accelerates Rodent Driving Skills - ScienceDirect
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0166432819311763

Kelly Lambert - Newsroom - University of Richmond
https://news.richmond.edu/experts/media-kits/driving-rats-kelly-lambert/lambert.html

Scientists have trained rats to drive tiny cars to collect food | New Scientist
https://www.newscientist.com/article/2220721-scientists-have-trained-rats-to-drive-tiny-cars-to-collect-food/

Rats trained to drive tiny cars find it relaxing, scientists report
https://phys.org/news/2019-10-rats-tiny-cars-scientists.html

実験を行ったのは、アメリカのリッチモンド大学に所属するケリー・ランバートさん率いる研究チームです。ランバートさんは、経験や挑戦を通して脳にどのような変化が生じるのかという「神経可塑性」について興味を抱いていていました。

そんなランバートさんが今回取り組んだ実験は、「実験室のような閉鎖された環境で育ったラット」と「自然に近い環境で育ったラット」に課題を与えて、その結果を比較するという実験です。ランバートさんは、自然に近い環境で育ったラットは周囲の環境から学ぶことが多く脳が成長しており、それゆえ課題を上手にこなせると考えました。

By CreativeNature_nl

今回ラットに与えられた課題は、「車の運転」です。ラットには透明なプラスチック製容器に車輪がついた特製の車が与えられました。このラット用の車は、底部にアルミニウム製のペダルが3つ備わっており、それぞれのペダルを踏むことで直進・右旋回・左旋回が可能という仕組みです。車の側面は透明なので、ラットは運転中も自由に外を見渡すことができます。


学習意欲を持たせるため、車を運転してスペース内に設置されたゴールにたどり着くと、ラットにはケロッグのフルーツループというシリアルが「報酬」として与えられます。

ラットが車の運転を訓練する様子を観察したムービーが以下から見られます。

Video: Rats learn how to drive tiny cars in order to collect food - YouTube


初期の実験では、車で移動可能なスペースはかなり狭め。画面奥側の白黒のブロックチェックの壁がゴールです。スタート地点に置かれた車に乗り込んだラットがペダルを踏むと、車が動き出します。


車は左右にふらつきながらも直進して……


ゴール地点の壁に掛けられたシリアルの前で止まりました。このようにして、ラットはシリアルを求めて車を運転することを学習します。


ラットの運転の習熟度に合わせて運転可能な空間を広げていきます。4平方メートルのスペースで、なおかつスタート時の車の向きがゴールに対して90度傾いていても……


ラットは車をゴールのほうへ向くように、スタート地点で車を旋回させました。


そのまま直進。


しかし、車はややゴールから外れた壁に衝突してしまいます。


ラットはシリアルのほうを目視で確認して、車をシリアルのほうに旋回させて……


見事にシリアルをゲットしました。


以降は同様の実験が繰り返されています。ゴールに背を向けた状態のスタートからその場で旋回して、切り返しせずにまっすぐゴールに向かうことができたラットもいました。


研究チームがオス10匹・メス7匹の合計17匹のラットを用いて数カ月にわたる実験を繰り返したところ、自然に近い環境で育ったラットは実験室で育ったラットに比べてはるかに上手に運転できるようになったとのこと。自然に近い環境で育ったラットが優秀であることはランバートさんの予想通りの結果でしたが、「自然に近い環境で育ったラットははるかに優れており、その優れかたの度合いに驚かされました」とランバートさんは語っています。

また、報酬であるシリアルを除去してもラットが運転を続けるかどうかを調査したところ、報酬がなくなってもラットは運転を好んで継続することも判明。実験に使われたラットの排せつ物を調べたところ、運転後のラットの排せつ物にはストレスを抑制する働きがあるデヒドロエピアンドロステロンが多く含まれていることがわかりました。

研究チームが対照実験として「ラットが乗った車を人間が遠隔操作でシリアルにまで動かす」という実験を行ってラットの排せつ物を調べたところ、デヒドロエピアンドロステロンのレベルはラット自身が運転したあとよりも低かったとのこと。ランバートさんは「自ら運転したときのほうが、ラットは新しいスキルをマスターするときに人間が感じる自己効力感のような満足感を感じ、ストレスが軽減されるのかもしれません」と語っています。

By Ricky Kharawala

ランバートさんはラットが車の運転を見事にマスターしたことに対して、「ラットは人間が思っているよりも賢く、ラットを使用する実験はより複雑なものに変化していく可能性があります」と述べました。また、今回の実験の結果に対して、「仕事が精神的な負担を和らげる効果もあるということを示すものです」と語っています。

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in サイエンス,   生き物, Posted by darkhorse_log

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