生き物

自閉症のハツカネズミを遺伝子変異によって作り出すことに成功

By mikefranklin

アメリカのマサチューセッツ工科大学の研究者が、自閉症のマウスを生み出すことに成功したそうです。

自閉症とは、社会性や他人とのコミュニケーションに困難が生じる発達障害の一種で、先天性の脳機能障害とされていますが、そのメカニズムにはまだ不明な部分も多いそうです。今回の研究は、脳のシナプスに関わる遺伝子を変異させることで、人為的に自閉症のマウスを作り出すことに成功したというもので、自閉症の仕組みの理解や治療法の研究に大きく貢献するものとなるそうです。


自閉症マウスに関する詳細は以下から。Re-creating autism, in mice

マサチューセッツ工科大学の研究者が、ある単一の遺伝子を変異させることによって、強迫、反復的行動、社会的相互関係の回避など、人間で言う自閉症に近い特徴を持つハツカネズミを作り出すことに成功しました。

今回変異させた遺伝子は、人間における自閉症にも関与しており、脳細胞間の通信に干渉して自閉症的行動を生み出していると見られるとのこと。Nature誌のオンライン版に報告された発表の統括著者であるGuoping Feng教授は、MITのマクガバン脳研究所メンバーで、脳と認知科学に関する研究を行っており、この発見は自閉症治療に関する薬の開発に、新たな筋道を与えるものとなる可能性があると語っています。

アメリカでは子どもの110人に1人がなんらかの自閉症スペクトラムを抱えており、これらの障害には、社会的関係の回避と反復的行動に加え、言語における障害も含まれています。自閉症に有効な薬は現在のところ開発されていませんが、この新しい発見が、自閉症に苦しむ患者を救うことにつながるかも知れないとのこと。

Feng教授は、「私たちは今、自閉症的行動の原因がはっきりと分かっている確固たるモデル(自閉症マウス)を手に入れました。私たちはここから自閉症的行動を引き起こす神経回路を見つけ出すことができるようになり、それは治療すべき新たな部位の発見につながっていくはずです」と語っています。

研究者にとっては、自閉症に関する新薬を、人間の患者に使用する前の段階でマウスに対して実験することができるようにもなるとのこと。

自閉症マウスを作り出すことに成功したFeng教授。


過去の研究の結果から、自閉症患者は健常者と比べて、数百もの遺伝子について、より頻繁に変異が見られることが分かっていましたが、個々の患者では実際に変異があるのは少数の遺伝子であったりすることから、有効な治療法の発見は困難だったそうです。

この研究でFeng教授が注目したのは、「Shank3」という遺伝子。

Shank3は自閉症に関係のある遺伝子として知られており、Shank3が作り出すタンパク質は、脳細胞同士の通信をつなぐ役割を果たすシナプスに多く存在しています。Feng教授は、シナプスを構成するタンパク質が、自閉症や強迫性障害などに関与しているのではないかと考え、数年前からShank3に関する研究を進めていたそうです。

Feng教授がShank3をターゲットに選んだ理由は、Shank3によって構成されるタンパク質が、脳の中の「線条体」と呼ばれる部分に多く集まっていたからとのこと。

線条体は、脳において「意志決定」や「行動の感情的側面」に関与する部分。線条体の異常は自閉症などの脳障害と関係があるとされており、Feng教授は、遺伝子の変異によって生じた不完全なシナプスが障害の原因になっているのではないかという仮説を立てました。

今回の研究で生まれたマウスは、このShank3が変異したもの。Feng教授は「彼ら(Shank3が変異したマウスたち)は、他のマウスたちとの対話に興味を持たない」と語っています。

モントリオール大学の医学部で教鞭をとるGuy Rouleau教授は、自閉症のマウスは研究者たちにとって、自閉症をより深く知る機会と、新しい治療法を開発するチャンスを与えてくれたと評価し、「障害の生理学の分野で、より深い探求のための良きモデルとなるだろう」と、客観的な立場から語っています。

実際の自閉症患者において、Shank3の変異を持つ患者の割合はごくわずかですが、Feng教授は、他の多くの場合でも、Shank3とは別のシナプスにおけるタンパク質の混乱が原因となっているだろうと述べています。Feng教授は現在、他の遺伝子の変異が人間の患者において自閉症に関与するかどうかを研究しているとのこと。

この研究の結果によっては、それぞれの患者がどの遺伝子の変異によって自閉症が引き起こされているかに関わらず、シナプスの機能を修復することによって自閉症を治療することが可能になるだろうと、Feng教授は語ります。

また、Feng教授は今回のNature誌で発表された研究について、研究の一部は彼が以前所属していたデューク大学において行われたもので、筆頭著者のJoao PecaやChristopher Lascola教授を含むデューク大学での同僚達もこの研究の執筆者として加わっていると述べています。

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in 生き物, Posted by darkhorse_log

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