サイエンス

人間の体には「切断されても再生するサンショウウオのような再生能力」が備わっていると判明

by Tawnyowl

サンショウウオをはじめとする一部の動物は、四肢などが切断されても再生する能力を持っています。研究者らは人間の関節にある軟骨に、サンショウウオのような再生能力が備わっていることを発見しました。

Analysis of “old” proteins unmasks dynamic gradient of cartilage turnover in human limbs | Science Advances
https://advances.sciencemag.org/content/5/10/eaax3203

Humans Have Salamander-Like Ability to Regrow Cartilage in Joints | Duke Health
https://corporate.dukehealth.org/news-listing/humans-have-salamander-ability-regrow-cartilage-joints


デューク大学の医学・整形外科教授を務めるVirginia Byers Kraus氏らの研究チームは、人間の軟骨が修復されるメカニズムについての研究を進めていました。Kraus氏や論文の筆頭著者であるMing-Feng Hsueh博士を含む研究チームは、アミノ酸に含まれる内部分子時計を利用して、タンパク質の年齢を特定する手法を考案したとのこと。

この手法は、「組織内で作られた新しいタンパク質はアミノ酸変換がほとんどない一方、古いタンパク質では多くのアミノ酸変換が見られること」を利用しています。研究チームはこの仕組みと高感度質量分析法を用いることで、コラーゲンを含む人間の軟骨がどれほど若く、あるいはどれほど古いかを特定しました。

その結果、軟骨の年齢は体のどこに位置しているのかに大きく左右されていることが判明。足首の軟骨は若く、膝関節の年齢は足首より古く、股関節になると膝関節よりもさらに古かったとのこと。人間における軟骨の再生能力が強力な部位は、サンショウウオなどの再生能力が強い部位とも対応しています。この発見により、股関節の損傷が回復に長い時間を要し、時には慢性的な関節炎に発展する一方で、足首の損傷が比較的早く回復する理由を説明できます。

by Taokinesis

さらに研究者は、軟骨の再生プロセスを調節するマイクロRNAと呼ばれる分子についても研究を行いました。マイクロRNAはサンショウウオ、ゼブラフィッシュ、トカゲといった四肢やひれの再生能力が高い動物において活発だとのこと。

人間におけるマイクロRNAは関節組織の修復に役立っており、他の動物と同様にマイクロRNAの活発さは部位によって大きく異なっていました。人間では腰よりも膝、膝よりも足首でマイクロRNAが活発であり、軟骨の深い層よりも浅い層でより活発なことが判明したと研究チームは述べています。

Hsueh氏は、「サンショウウオの四肢再生に見られる調節因子が、人間の関節組織を修復するコントローラーのように見えると知り、非常に興奮しました」「私たちはこの機能を『'inner salamander'capacity(内部サンショウウオ能力)』と呼んでいます」とコメントしました。

by StefanHoffmann

研究チームは今回の発見が、最も一般的な関節疾患である変形性関節症の治療につながる可能性があると指摘。変形性関節症は、刺激などにより軟骨の変性・磨耗が生じ、関節周囲を取り囲む滑膜の炎症が併発して変性を加速するというもの。マイクロRNAを関節炎の予防、遅延、治療に役立てられるかもしれないとのこと。

Kraus氏は、「この調節機能をブーストすることで、炎症を起こしている関節において軟骨を再生できると信じています。さらに、サンショウウオと比較して不足している調節因子を把握することで、将来的には負傷で失われた手足の一部や全体を再生できることさえあり得ます」と述べ、今回の発見が他の人体組織にも適用できる基本的なメカニズムかもしれないと主張しました。

by Juan Pablo Arenas

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in サイエンス,   生き物, Posted by log1h_ik

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