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「愚かな人は自分を高く評価する」法則発見者が語る「自信満々のバカを脱却する方法」

By NomadSoul1

「能力の低い人物は自分の能力を高く評価する」というダニング=クルーガー効果の産みの親の1人であるデイヴィッド・ダニング教授が、「我々は皆、自信のある馬鹿だ」と題して、人間が生来持つ「誤解・過信・バイアス」について語っています。

We Are All Confident Idiots - Pacific Standard
https://psmag.com/social-justice/confident-idiots-92793

アメリカの著名コメディアンであるジミー・キンメルの冠番組「ジミー・キンメル・ライブ!」には、一般人に対して「2014年発表の『GODZILLA ゴジラ』は1954年に東京で発生した『巨大トカゲ災害』の被害者を傷つける作品だと思いますか?」といった「ウソを含んだ質問」を行うコーナーがあります。質問された人は、質問内容にウソが含まれているにも関わらず、質問内容が全くの事実であり、さらにその事実を自分がよく知っていると回答することがあるそうです。

By Redrecords ©️

「ジミー・キンメル・ライブ!」はTV番組なので、多数の回答の中から最も面白い回答を選んで放映しているわけで、すべての回答者がウソの事実を知ったかぶりしているわけではありません。しかし、長年の研究により「自分の知らない物事に対して、よく知っているかのように振る舞う」ことは極端な事例ではないことが明らかになっています。研究によると、「成績の低い大学生」や「免許証を更新しに来る高齢者」などは、自分自身の能力を過大評価することがわかっています。

なぜ無能な人は「自分最高」と思うのかをムービーでわかりやすく解説 - GIGAZINE


2008年頃に生じたサブプライム住宅ローン危機に端を発する世界金融危機時に必要性が叫ばれ、アメリカ合衆国財務省が実施した「アメリカ人の経済的無知に関する調査」もダニング=クルーガー効果を裏付けています。調査時点から2年以内に破産した経験を持つ被験者800人に対する調査によると、お金やお金の流れに関する知識や判断力について被験者は平均して下位37%に位置していました。しかし、被験者の23%が「自分は最高レベルの知識を持っている」と自己評価しました。これは、2年以内に破産を経験していない対照群が「最高レベルの知識を持っている」と回答する割合(13%)に比べるとかなり高い数値です。

人間は生まれつき直観を持っていますが、直観による誤解はときに致命的な事故を引き起こし、自分の能力に対する過信につながります。行動経済学者のSendhil Mullainathanの研究によると、インドでは「乳児が下痢を起こすのは水を多く与えてしまっているからだ」という誤解がしばしばみられると判明しています。現実には、下痢を起こしている乳児は脱水症状の危険があるため、清潔な水を飲ませる必要があります。「水を多く与えているから、水を多く排せつする」というのは直観にかなっているように思えますが、このような誤解は早急に正す必要があるわけです。

By sianstock

しかし、誤解を正すための教育によって、「生来持っている誤解に自信を吹き込んでしまう」というケースもみられます。1つの例が、進化論に対する誤解です。幼い子どもに「トラが存在する理由」を尋ねると、子どもはしばしば「動物園にいるために生まれた」と回答します。この種の誤解は幼い子どもだけではありません。「なぜチーターは速く走れるのか?」と大人に対して質問すると、「獲物を多く捕らえられるように、速く走れるように進化した」と回答する人がいます。しかし、進化論を前提とした正答は、「より速く走ることができたチーターはより長生きして子孫を多く残すため、種は速くなる方向に進化する」というもので、進化論における進化はあくまで個体差と自然淘汰が生み出すものであって、各個体の選択や欲求により生まれるものではありません。

2014年にTony YatesとEdmund Marekがアメリカ・オクラホマ州の高校生536人に前述する進化論を講義して、「進化論の誤解を解く」という実験を行いました。被験者には授業前と授業後にクイズ形式のテストを受けてもらい、進化論に対する理解度が授業によって向上したのかを調査しました。

Is Oklahoma really OK? A regional study of the prevalence of biological evolution-related misconceptions held by introductory biology teachers - Semantic Scholar
https://www.semanticscholar.org/paper/Is-Oklahoma-really-OK-A-regional-study-of-the-of-by-Yates-Marek/62b0096658fafac9c9a8e377a0cc6c027e90728c


講義の結果、学生は「自分が進化論を理解している」と回答する割合が上昇したそうですが、問題は、それが必ずしも結果に結びつかなかったという事実です。一例を挙げると、「進化は有機体の特性をその生存期間中に変化させることはできない」という設問の答えは「正しい」ですが、「正しい」と回答した学生は講義の前後では17%から20%に上昇した一方で、「間違い」と回答した学生も16%から19%に上昇しました。結局、講義により「わからない」と回答した学生の数が減っただけであり、学生たちが理解を深めたとはいえないわけです。

もう1つの例が、「教習所で緊急時におけるドライビングテクニックを実地で教える授業を行うと、事故率が増える」というものです。例えば、雪道でのスリップに対処できるように訓練を行うと、受講者は「これで雪道でも大丈夫」という自信を持ちます。しかし、教えられた雪道でのドライビングテクニックは年を経るごとに失われていくのに対して、「雪道でも大丈夫」だという受講者の自信だけはいつまで経っても変わらないため、運転能力を過大評価しているドライバーは非常に多くなってしまいます。

「無能な人だけが自分を過大評価する」は間違い、本当は平均的な人でも自分を過大評価する - GIGAZINE

by Val Vesa

こういった問題に対処する最良の方法だと考えられているのが、「教師が生徒と対話を重ねながら、誤解と真実の間に存在するギャップをともに乗り越えていく」という、古代ギリシアを代表する哲学者ソクラテスが残した方法です。先述の進化論における例では、「チーターが『獲物を多く捕らえられるため、速く走れるように進化した』というのが正しいならば、チーターは『速く走れたほうが獲物が多く捕らえられる』と自覚して、速く走るという能力を子孫に残そうとしたのだろうか?」と疑問を提起しながら対話を重ねると、生徒を正しい思考に導くことができます。

各個人が持つ「信念」を利用して、説得力を高める方法も発見されています。Geoffrey CohenとDavid Shermanの調査によると、アメリカの一般的な保守層は、リベラル層に比べて「環境保護政策を支持しない」という傾向があります。しかし、保守層は思考や行動、現実などに「純潔・純度」に強い関心を持つ傾向があります。すなわち、保守層に「環境を保護しましょう」と訴えるよりも、「純度の高い地球を保持するために、環境破壊を抑えましょう」と訴えるほうが訴求力がはるかに強いわけです。同様にして、リベラル派に軍事費の増加を支持させたい場合には、「軍隊における昇進基準は平等だ」「軍隊に入隊することによって貧困を脱する人もいる」と説得すると効果が高まります。

The Psychology of Change: Self-Affirmation and Social Psychological Intervention | Annual Review of Psychology
https://www.annualreviews.org/doi/abs/10.1146/annurev-psych-010213-115137


しかし、本当の問題は「どうすれば自分の無知と誤信を自認することができるのか?」ということです。グループで仕事をしている際に行動経済学者が推奨する方法は、グループの中に「批判者」を置くという作戦です。批判者はグループの会議に疑問を提起して、批判をするという役割を担当します。批判によって、グループの参加者はいらだち、不快になる可能性が高まりますが、この方法によって通常よりも正しい意思決定ができることがわかっています。

自分ひとりでできる方法は、「自分自身の心の中に批判者を持つ」ことです。「自分がこういう結論を出しがちだが、もしかしたらその結論は間違っているかもしれない」「もしこの結論が間違っているとしたら、どう間違っているだろう?」と自問することです。心理学者のCharles Lordは「逆のことを考えろ」と唱えました。もし自分の決断が間違っていた場合の未来を想像して、その結論に至るまでの可能性について考えるというのも方法の1つです。そして最後に重要なのは、「他人に助言を求める」ということです。他人もまた何かに誤解を抱いているかもしれませんが、議論はしばしば思い違いを取り除いてくれます。

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in メモ, Posted by darkhorse_log

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