700年前の石けんを自宅で簡単に作る方法
by pxhere
手や体を洗うために使う石けんの歴史は古く、さかのぼれば紀元前2200年頃のシュメール文明の粘土板にその製法が記されているとのこと。中世の風俗・文化を研究するサイトMedievalists.netが、およそ700年前の中世イギリスの文献に書かれていた「石けんの作り方」を公開しています。
How to make medieval soap - Medievalists.net
https://www.medievalists.net/2019/09/how-to-make-medieval-soap/
Mediavalists.netによると石けんのレシピは、14世紀後半に中英語で書かれた「トリニティ百科事典」に収録されていたものだとのこと。必要な材料は以下の通り。
・樫の木の灰、ふるいにかけてキレイにしておく
・羊の脂肪などの動物性脂肪、加熱してあらかじめ溶かしておく
・生石灰
・塩
・小麦粉
・水
・小さな鍋
・大きな鍋、容量は3ガロン(約11リットル)から4ガロン(約15リットル)
・丈夫なかき混ぜ棒
以下のレシピが百科事典に書かれていたもの。
1:まず、鍋に「樫の木の灰」を入れ、2ガロン(約7.5リットル)の熱湯を注ぎ、フタをして1日放置し、灰汁(あく)を作ります。
2:灰汁に2オンス(約57g)の生石灰と、さらに2ガロンの熱湯を加え、かき混ぜてからもう1日寝かせます。
3:できた灰汁を3クォート(約2.8リットル)ほど取り、小さい鍋に入れます。
4:小さい鍋を火にかけながら、溶かした羊の脂肪を0.5ポンド(約230g)ほど入れ、かき混ぜ棒でよく混ぜ合わせます。羊の脂肪が完全に灰汁へ溶けたら、塩を0.5オンス(約14g)加えて、さらによくかき混ぜます。
5:小麦粉を0.25オンス(約7g)に冷たい灰汁を少し混ぜ、麻の布でろ過して、でんぷんを分離します。そのでんぷんを小さい鍋に入れて、鍋の底が見えなくなるまでさらによく混ぜます。
6:鍋を火から下ろし、あらかじめ湿らせた型に入れて平らなテーブルに置き、乾燥させれば石けんの完成。
また、料理に関するムービーを公開するYouTubeチャンネル「Cooking with Dr. Chill」が、実際に木の灰から石けんを作る過程をムービーで公開しています。上記のレシピに忠実な製法ではありませんが、木の灰や動物性脂肪を使うなど、その製作過程はほぼ同じものです。
how to make soap from wood ashes (lye water and tallow/lard) - YouTube
バーベキューをした後に残った大量の木の灰
窓の網戸をふるい代わりに使って、灰を細かくキレイにしたものが以下。
この灰に大量の水を加え、よくかき混ぜてから放置します。
動物性脂肪のラードをあらかじめ溶かしておきます。
溶かしたラードに灰汁と塩を加えて……
鍋を弱火にかけながら、ゆっくり混ぜていきます。
粘度が上がり、ペースト状になります。
ペースト状の石けんを型に入れればOK。
中世に書かれた文献は、読み手が基本的な知識をもっていることを前提にざっくりと書かれたものがほとんどであるため、上記のレシピのように詳細に書かれていることはきわめて珍しいそうです。Medievalists.netによると、トリニティ百科事典は他にも革のなめし方や顔料の作り方、服の作り方や染め方など、数十種類にもわたるレシピを収録していて、中世の時代に生きた人々の生活を詳しく知るための貴重な資料となっているとのことでした。
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