1000年前のヴァイキングが愛した伝説のボードゲーム「ネファタフル」とは?
「Hnefatafl(ネファタフル)」は、9世紀~11世紀にかけて西ヨーロッパ沿海部を侵略したヴァイキングが日常的に遊んでいたというボードゲームです。かつてはヨーロッパ全土で遊ばれていましたが、やがてゲームそのものが忘れ去られてしまい、伝説上の存在となっていました。近年の研究では、ネファタフルはヴァイキングにとって娯楽であっただけではなく、文化的・宗教的にも重要な存在だったのではと考えられています。
The Board Game at the Heart of Viking Culture | Atlas Obscura
https://www.atlasobscura.com/articles/what-is-hnefatafl-viking-board-game
ネファタフルは紀元前5世紀頃にスカンジナビアで生まれ、ヴァイキングの侵略や公益に伴ってヨーロッパ全体へ広く普及しました。11世紀初頭のヴァイキングを描いた幸村誠の漫画「ヴィンランド・サガ」にもネファタフルが登場しています。
ヴィンランド・サガの15巻読んでると、見たことあるようなゲームが!調べてみると、Hnefataflっていう伝統ゲームで、5世紀から遊ばれているバイキングのゲームらしい pic.twitter.com/oE0wxQ9nLK
— 戦闘員ディー@たけのこ攻防 (@DEE_worldslayer) 2014年10月25日
ネファタフルは、チェスや将棋のように互いのプレイヤーの駒配置が対称ではなく、王を抱える「中央側」と中央に攻め入る「周辺側」に分かれて対戦する非対称型のゲームです。中央側は王を盤の四隅から脱出させられれば勝利、周辺側ははさみ将棋の要領で王を捕獲すれば勝利となります。ネファタフルは地域によってボードの大きさやルールに違いがあり、バリエーションもさまざまだったと考えられています。文献によると、ネファタフルはウェールズ地方では16世紀、ラップランドでは18世紀までプレイされていたようですが、16世紀頃から急激に普及したチェスの人気に押され、やがて人びとの記憶から忘れ去られてしまいます。
by Jedudedek
19世紀に入ると、中世アイスランドの文献を参考にしながら北欧神話の研究が盛んに行われるようになりました。中世アイスランドの文献には「Tafl」という言葉がしばしば登場していたのですが、「Tafl」が「板」や「机」を指し示すゲルマン語派の言葉と解釈され、チェスを暗に示した言葉だと長い間考えられていました。この誤解は北欧神話の翻訳にも大きな影響を与えていて、当時出版された北欧神話の本には英雄たちがチェスを使って戦略を練っている様子が描かれていました。チェスの起源は紀元前の古代インドにあるといわれていため、北欧神話に登場していても不思議はないと考えられていたことも「Tafl=チェス」という誤解が続いた理由の1つといえます。
by Belig
しかし20世紀に入り、Taflのルールが判明するにつれて、Taflがチェスと全く違うボードゲームである可能性が浮上しました。さらに、1913年にチェスの歴史を研究していた歴史学者のH・J・R・マレー氏が「Tablut」というゲームに関する記述を昔のゲーム作家のメモから発見しました。以下の画像はマレー氏がメモから発見したTablutのボードのスケッチですが、ネファタフルによく似たデザインになっています。このメモから、マレー氏は「北欧神話にたびたび登場したTaflのルールと比較すると、TablutはこのTaflとほぼ同じゲームである可能性が高い」という仮説を唱えました。マレー氏が仮説を発表したのを皮切りに、ウェールズ・アイルランド・イングランド・北ドイツでネファタフル系のゲームの記録が発見されました。
2005年、考古学者のマーティン・ルントクヴィスト氏とハワード・ウィリアムズ氏は、スウェーデン南部にあるヴァイキングの墓から、琥珀(こはく)製のネファタフルの駒やボードなど23点を発掘しました。このネファタフルは埋葬品として墓に納められた可能性が高く、ヴァイキングが死後の幸福を祈ってネファタフルを埋葬したと考えられています。ネファタフルはほとんどが男性の墓で発見されていることから、歴史家のヘレン・ホイッタカー氏は、戦術ボードゲームが男性戦士のイデオロギーと関連付けて認識されていたと論じています。
by Christer Åhlin/Swedish History Museum
さらに2017年、9世紀頃のヴァイキング集落遺跡の発掘調査で、剣・斧・槍などの武器や馬、そしてネファルタルの駒と共に埋葬された遺骨が発見されました。この遺骨のDNAを鑑定したところ、埋葬されていたのは女性だったことが判明。このことから、戦略的決定を下しながら指揮をとるヴァイキング戦士の長は男性だけではなく女性も務めていたという新しい事実がわかりました。
考古学者のマーク・ホール氏は「ヴァイキングは戦いの合間を縫って、日常的にネファタフルに興じていました。ネファタフルで勝つためには戦略的思考や戦闘能力が必要と考えられていて、その戦績がヴァイキング戦士の地位につながっていました。ネファタフルが埋葬されたのは、その戦士の能力を評価する意味合いや、死後の世界でもゲームができるようにという思いがこめられています」と語っています。
なお、以下のサイトでは、CPU相手にネファタフルを実際にプレイすることができます。
Hnefatafl
・関連記事
紀元前から現代まで続く「ボードゲーム」の歴史、爆発的人気の理由とは? - GIGAZINE
世界中でいまだにプレイされる世界最古のRPG「ダンジョンズ&ドラゴンズ」 - GIGAZINE
世界的人気のボードゲーム「モノポリー」はどうやって生まれたのか? - GIGAZINE
「コウノトリが赤ちゃんを運んでくる」というイメージはどこから来たのか? - GIGAZINE
1000年以上前のヴァイキングの宝に約1億6000万円の値がつけられる - GIGAZINE
・関連コンテンツ
in ゲーム, Posted by log1i_yk
You can read the machine translated English article What is the legendary board game 'Nefata….