一瞬の判断力が試されるレーシングドライバーの脳波を読み取った結果わかったこととは?
フォード・モーターのレーシング部門「フォード・パフォーマンス」は、ル・マン24時間レースや世界ラリー選手権、F1などにも出場してきたチームです。フォード・パフォーマンスは、レースという危険な環境で磨き上げられたレーシングドライバーの脳波を分析するヘルメット型の装置を開発し、レーシングドライバーの脳では運転中に何が起きているのかについての研究を行っています。
Ford The Psychology of Performance Experiment
https://www.unit9.com/project/ford-psychology-performance/
フォード・パフォーマンスはキングス・カレッジ・ロンドンの研究者らと協力して、ドライバーの脳波をスキャンできるヘルメットを開発し、レーシングドライバーの脳波と一般の人々の脳波を比較する実験を行いました。実験の様子や結果については、以下のムービーを見るとよくわかります。
Psychology of Performance - YouTube
フォード・パフォーマンスは各種レーシング競技に参加しています。
一瞬の判断力が勝敗や時には命にも関わるレーシング競技では、「ドライバーの集中力」が非常に重要です。
しかし、普段の生活で「自分が集中している」かどうかを細かく意識して評価したり、何かに集中するための努力をしたりしている人は、それほど多くありません。
2013年から2018年にかけて世界ラリー選手権(WRC)でチャンピオンに輝いたセバスチャン・オジェ氏は、プレッシャーがかかる困難な場面でこそ、ベストを尽くす場面だとコメント。
また、同じくレーシングドライバーのアンディ・プリオール氏は、レース中に「考えるのではなく、ただ行動した」という経験がプロのレーシングドライバーならあると述べました。
キングス・カレッジ・ロンドンの神経科学研究者であるエリアス・ミッチリアニティス氏は、「運転は非常に厳しい認知プロセスを必要とします」と述べ、レーシングドライバーたちは競技中に高い集中力を発揮していると考えています。
フォード・パフォーマンスも、レーシング競技で勝利するためには最速の車だけがあればいいわけではなく、ドライバーの技能や集中力も結果を大きく左右することを理解しています。
神経科学者のイエーツ・バックリー氏らの研究チームは、レーシングドライバーの集中力を測定するため、ヘルメットのように頭部へ装着可能な高品質の脳波スキャナーを開発。
VRのレースシミュレーターを、プロのレーシングドライバーと一般人の両方に運転してもらい、両者の脳波がどのように違うのかを分析しました。
すると、プロのレーシングドライバーたちは従事しているタスクに集中する力が一般人と比べて非常に高いことが判明。
レースの重要な場面で、常に最大の集中力を発揮するように脳を切り替えることが可能で……
一般人と比較して、高速で移動するレース中のパフォーマンスが40%も高かったそうです。
また、研究チームはシミュレーターをプレイする前に、一般人に対して呼吸法や瞑想、走行するトラックをキーワードで表して視覚化する作業など、精神を集中させるメソッドを試してもらう実験も行いました。
その結果、一般人のパフォーマンスは大幅に上昇したとのこと。
フォード・パフォーマンスはさらに「実際のレース中にドライバーの脳波をリアルタイムで計測できるヘルメット」の開発を進めています。
機械学習と組み合わせてドライバーのパフォーマンスを計測したり、GPSと組み合わせてコースのどこでより多くの集中力を必要としているのかを確かめたりと、さまざまな応用が期待されています。
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