揚げ物に使った植物油は結腸がんや炎症性腸疾患を悪化させることが判明

by Emilian Robert Vicol

「油をたっぷり使った揚げ物は体によくない」ということは、多くの人が感じているはず。マサチューセッツ大学アマースト校の研究チームはマウスを使った実験により、揚げ物に使われた植物油を摂取することで、炎症性腸疾患(IBD)や結腸がんを悪化させることを突き止めました。

Thermally processed oil exaggerates colonic inflammation and colitis-associated colon tumorigenesis in mice | Cancer Prevention Research
https://cancerpreventionresearch.aacrjournals.org/content/early/2019/08/21/1940-6207.CAPR-19-0226

Study Shows Frying Oil Consumption Worsened Colon Cancer and Colitis in Mice | Office of News & Media Relations | UMass Amherst
https://www.umass.edu/newsoffice/article/study-shows-frying-oil-consumption

たっぷりの油で調理された揚げ物は世界中に住む人々に愛されていますが、揚げ物は健康に悪影響を与えるともいわれています。その一方で、揚げ物がどのように健康に影響を与えるのかを調べた実験は少ないそうで、既存の研究は主に「健康な人」を対象にしたものがほとんどだとのこと。

そこでマサチューセッツ大学アマースト校でフードサイエンスを研究し、博士課程に在籍するJianan Zhang氏らの研究チームは、マウスに揚げ油を摂取させる実験を行いました。実験では大学の食堂で使われている一般的な商業フライヤーで、人間が揚げ物の際によく使うキャノーラ油を華氏325度(摂氏約163度)まで過熱したものをサンプルとして使用。「キャノーラ油はアメリカでも揚げ物に広く使われています」と、Jianan Zhang氏は述べています。

研究チームはマウスを2つのグループに分け、片方のグループには通常の粉末食に「通常の油」と「過熱した揚げ油」を混ぜたものを食べさせました。もう一方のグループに対しては粉末食に通常の油のみを混ぜたものを食べさせて、研究チームは2つのグループにどのような健康上の違いが出るのかを調査しました。

by Valeria Boltneva

実験の結果、揚げ油を混ぜられた食事を摂取したグループのマウスは、もともと炎症性腸疾患や結腸がんを患っていた場合、状態が対照群のグループと比較して悪化することが判明。炎症はよりひどくなり、腫瘍の成長が促進されたそうで、「揚げ油を食べたグループでは、腫瘍の大きさが2倍になりました」と、研究チームの一員であるGuodong Zhang准教授はコメントしています。

さらに、腸内細菌や脂質および多糖により構成されるリポ多糖が腸内から血液中に侵入し、全身を循環して体組織で炎症を引き起こすといった影響もみられたとのこと。

この研究以前から、揚げ油が健康に害を及ぼすという指摘自体はされていました。その原因は、植物油に含まれる多価不飽和脂肪酸が過熱時に酸化し、極性化合物となって炎症を促進するからだといわれています。研究チームはこの点を検証するため、加熱後の揚げ油から極性化合物を分離して、通常の油と極性化合物を混ぜて他の実験と同様にマウスへ与えました。すると、マウスの健康状態は揚げ油を摂取させた時と非常に類似した結果を見せたとのことで、揚げ油内の極性化合物が炎症効果を媒介したことが示唆されたそうです。

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Guodong Zhang准教授は「揚げ油が結腸がんを引き起こすということを言っているのではありません」と強調しており、あくまでも今回の結果は、既に特定の症状を患っている人が揚げ油を摂取することで病状が進行するリスクを示唆していると述べています。Jianan Zhang氏は、「結腸がんを患っている、または炎症性腸疾患を起こしやすい人にとって、揚げ物を控えることはおそらくいい考えです」と述べ、揚げ油が健康に及ぼす影響をよりよく理解することが、食事ガイドラインの改善などにつながると主張しました。