瞑想が子どもたちの成績を向上させてストレスも軽減させることが可能と判明
by Pezibear
瞑想(マインドフルネス)は近年、仕事のパフォーマンスを向上させたりストレスを軽減させたりする効果があるとして、世界中の人々に注目されています。マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究チームは、「マインドフルネスが子どもたちの成績を向上させ、ストレスを軽減することができる」という研究結果を発表しました。
Two studies reveal benefits of mindfulness for middle school students | MIT News
http://news.mit.edu/2019/mindfulness-mental-health-benefits-students-0826
Mindfulness training reduces stress and amygdala reactivity to fearful faces in middle-school children. - PsycNET
https://psycnet.apa.org/record/2019-50083-001
Greater Mindfulness is Associated With Better Academic Achievement in Middle School - Caballero - 2019 - Mind, Brain, and Education - Wiley Online Library
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/mbe.12200
MITで脳科学・認知科学教授を務めるジョン・ガブリエリ氏は、「マインドフルネスとは外部の事柄や自身の思考に気をとられるのではなく、『今』に注意を向ける能力です。目の前の教師や宿題に集中できるのならば、学習の助けとなるはずです」と述べています。
研究チームはアメリカの6年生(日本における小学校6年生)に在籍する100人の生徒たちを2グループに分け、マインドフルネスの効果を確かめる実験を行いました。一方のグループでは8週間にわたって毎日マインドフルネスのトレーニングを行い、もう一方のグループではマインドフルネスのトレーニングを行いませんでした。マインドフルネスのトレーニングは生徒たちが自身の呼吸に注意を向け、過去や未来ではなく現在に意識を向けるように設計されていました。
マインドフルネスのトレーニングを行ったグループでは、生徒たちが自身のストレスが低下したことを報告した一方、トレーニングを行わなかったグループではストレスの低下が報告されませんでした。また、マインドフルネストレーニングを行った生徒たちは、悲しみや怒りといったネガティブな感情が少なくなったことも報告したとのこと。
by Ibraim Leonardo
研究に参加した生徒たちのうち40人は実験の前後に、情動反応の処理を担う扁桃体の活動を測定する実験にも参加しました。この実験では、生徒たちがさまざまな感情を表現している人の顔写真を見て、その写真を見た時に扁桃体の活動がどれほど活発になるかを観察しました。
実験の開始時に高いストレスレベルを報告した生徒たちは、「恐怖」を表現する顔を見た時に扁桃体の活動が活発になったとのこと。このように、ストレスを多く経験する人々は、有害な事象に対して強い否定的な反応を示すということが知られているそうで、「ネガティブな物事に対する扁桃体の強い反応は、子どもの時期における高いうつ病のリスクと関連している証拠があります」とガブリエリ氏は指摘しています。
そして、マインドフルネストレーニングを行った子どもたちは実験前のストレスレベルが低下し、これに伴って恐怖を表現する顔に対する扁桃体の活動も弱まったそうです。研究チームはこの結果から、マインドフルネスがストレスに関連する気分障害の予防または緩和に役立つと考えています。ウィスコンシン大学で心理学と精神医学の教授を務めるリチャード・デイヴィッドソン氏は、「この研究はマインドフルネストレーニングが子どもたちの行動面および神経面に利点をもたらすことを実証した、最初の厳密な研究の一つです」と述べました。
by Pixabay
また、研究チームは実際にマインドフルネストレーニングを行った研究のほか、アンケートによって子どもたちのマインドフルネス傾向を評価、分析した調査も行っています。まず研究チームは、アメリカの5年生(日本における小学校5年生)から8年生(日本における中学3年生)に在籍する2000人以上を対象に、Mindful Attention Awareness Scale(マインドフルネス注意認識尺度)に基づくアンケートを実施。「行動を起こしている最中にどれほど集中しているか」といった質問から、研究チームは生徒たちがどれほどマインドフルネス的な性質を持っているかを評価しました。
研究チームはこの結果と生徒たちの学業成績、州全体で標準化されたテストの点数、出席率、停学処分を受けた回数などを比較しました。すると、よりマインドフルネス的な傾向を示した生徒ほど学業などのスコアが高く、欠席や停学処分の回数が低いことが判明。「マインドフルネス的傾向の強い子どもたちが学校で上手くやれる可能性が高いかどうかについて、定量的な意味で調査したものはこれまでありませんでした」とガブリエリ氏は述べ、この研究はマインドフルネス的性質と学校生活における関連を示す最初のものだと主張しています。
ガブリエリ氏は、「マインドフルネストレーニングを教室で行う毎日のカリキュラムに組み込むことは、有益である可能性が高いと思います」と述べています。一方で、マインドフルネストレーニングは長期的に継続することに意味があるため、マインドフルネスからメリットを得るには、日々のトレーニングが重要になるとの見解を示しました。
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