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Android 10 Qで「戻る」ボタンが不要になる「ジェスチャーナビゲーション」はどのように実装されたのか?

by Daniel Sancho

Googleは2019年8月7日に、Androidの次期バージョンである「Android 10 Q」の最終ベータ版となるベータ6を公開しました。Android 10 Qではベータ3から「ジェスチャーナビゲーション」と呼ばれる新しい操作方法が追加されていて、これまでAndroidで下部に配置されていたボタンではなく、画面上をスワイプしたり長押ししたりすることで操作が可能になりました。そんなジェスチャーナビゲーションについて、Androidの開発スタッフが開発についてこれまでの統計を公式ブログで公開しています。

Android Developers Blog: Gesture Navigation: A Backstory
https://android-developers.googleblog.com/2019/08/gesture-navigation-backstory.html


Android 10 Qでは、従来の3ボタン・2ボタンによる操作に加えて、ジェスチャーナビゲーションによる操作を選択することができます。ジェスチャーナビゲーションでは、画面の右端・左端からスワイプすると「戻る」、下から上にスワイプすると「ホーム画面」を表示することが可能です。開発スタッフは以下の3点がジェスチャーナビゲーションの利点だとしています。

・より早く、より自然で、人間工学に基づいてスマートフォンを操作できる。
・ソフトウェアボタンよりも意識的な操作が可能で、スマートフォンをつかむだけで起動できる。
・ボタンが置かれているバーを極力描画しなくて済むので、コンテンツの表示量が増え、アプリへの没入感を高める。

しかし、開発スタッフはジェスチャーナビゲーションについて以下のような問題点も挙げています。

・すべてのユーザーでジェスチャーナビゲーションが機能するとは限らない。
・ジェスチャーナビゲーションは習得が難しく、調整が必要になる場合がある。
・ジェスチャーはアプリのナビゲーションパターンに干渉する可能性がある。

そして何よりも、Androidを搭載するスマートフォンごとにジェスチャーが異なってしまうと断片化の問題が大きくなることがわかりました。そこで、GoogleはSamsung・Xiaomi・HMD Global・OPPO・OnePlus・LG・Motorolaなどのパートナーと協力して、今後のジェスチャーナビゲーションを標準化したとのこと。つまり、Android 10 Q搭載端末からは多くのスマートフォンでジェスチャーの操作内容が統一される予定となります。

以下の画像は、スマートフォンの画面上における親指の到達可能性を示したもの。左は左手の親指が、右は右手の親指が快適に動く領域を示しています。片手だけで電話を持った状態でも親指は画面端をタップ可能で、利き手側の下隅を中心とした半円上が高いアクセシビリティをみせているのがわかります。


ただし、必ずしもジェスチャーナビゲーションが正解だとはいえません。例えば、これまでの使用統計を分析したところ、ユーザーの約3~7%ほどはナビゲーションドロワーをスワイプ操作で開いていたことがわかったそうです。ナビゲーションドロワーを開くスワイプ操作は「戻る」とかぶってしまうため、3~7%のユーザーはハンバーガーメニューをタップしてナビゲーションドロワーを開く操作に慣れる必要があります。

開発スタッフは「新しいジェスチャーナビゲーションを適用することで、ユーザーの動作を変更させることは目標ではありません」と述べ、ナビゲーションドロワーを開くジェスチャーと「戻る」のジェスチャーを区別できるような方法をいくつか試したとのこと。

by Mozilla in Europe

テストを通じてナビゲーションドロワーを開くジェスチャーと「戻る」のジェスチャーを適応して区別し、さらにテストをおよそ3日行った結果、大多数のユーザーがこの2つのジェスチャーを区別することができたと判明。また、最終的にユーザーの多くがジェスチャーナビゲーションから従来の3ボタンに戻ることを望まなかったそうです。

開発スタッフによると、追加の調査によって、ユーザーが新しいシステムナビゲーションに慣れるまでにおよそ1~3日の調整フェイズがあることがわかったとのこと。そのフェイズの間では、ユーザーによる「戻る」操作の平均数は、3ボタンによるものとジェスチャーナビゲーションでほぼ同じだったとのこと。

さまざまなナビゲーションモードでのユーザー評価の比較を表したグラフが以下。青いグラフが人間工学的評価、オレンジ色のグラフが片手使用での評価を表したもので、高いほどよい評価といえます。片手の使用でのユーザー評価は、3ボタンやシングルボタン操作と比較しても、Android 10 Qのジェスチャーナビゲーションが最も高かったとのこと。ただし、人間工学的な評価では3ボタンやシングルボタンの方がジェスチャーナビゲーションよりも勝っています。


また、各ナビゲーションモードで、「ホーム」(水色)と「戻る」(紺色)の表示タスクを完了するために必要な平均時間をまとめたものが以下のグラフで、短いほど良い結果となります。Android 10 Qのジェスチャーナビゲーションは、どちらのタスクにおいても完了に必要な平均時間が最も短くなっています。


これらのデータから、Android 10 Qのジェスチャーナビゲーションでは他のどのナビゲーションモデルよりも素早く「ホーム」と「戻る」に関連するタスクを実行できることがわかったとのこと。ただし、ジェスチャーナビゲーションを使うことで、オーバービューや「最近使ったアプリ」へのアクセス頻度が下がったそうです。


Androidの開発スタッフは「ジェスチャーナビゲーションを使用して、Androidのユーザーエクスペリエンスを向上させ、標準化することを目指しています。現時点でのモデルはほとんどのユーザーにとって最適なモデルですが、一部ジェスチャーは既存のアプリのジェスチャーと競合してしまうため、ユーザーのアプリ操作を開発者が調整する必要があります。私たちはAndroid開発者に対する責任を真摯に受け止め、サポートしたいと考えています」とコメント。具体的なサポート方法についてはブログで解説していくとのことでした。

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in モバイル,   ソフトウェア, Posted by log1i_yk

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