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Googleが絶海の孤島に最新テクノロジーの海底ケーブルを設置する理由とは?

by David Stanley

イギリスの海外領土セントヘレナの政府は2019年7月19日に、Googleが主導する海底ケーブル敷設プロジェクトEquianoを招致するとの公式発表を行いました。これにより、人口約4500人の島は毎秒数テラビットの超高速インターネットに接続されることとなります。

St Helena South Atlantic Earth Station Project
https://www.earthstation.sh/

Google’s New Subsea Cable to Land on St Helena | Subsea World News
https://subseaworldnews.com/2019/07/22/googles-new-subsea-cable-to-land-on-st-helena/

Google’s Equiano Cable Will Extend to the Remote Island of Saint Helena, Flooding It With Data - IEEE Spectrum
https://spectrum.ieee.org/tech-talk/telecom/internet/googles-equiano-cable-will-extend-to-the-remote-island-of-saint-helena-flooding-it-with-data

南大西洋に位置するセントヘレナ島はイギリスの海外領土のひとつで、人口はおよそ4500人ほど。ナポレオン・ボナパルトの幽閉地に選ばれただけあってアクセスは悪く、島内にあるセントヘレナ空港は「世界で最も使えない空港」などと呼ばれることもあります。

通信網も発達しておらず、島民は毎秒50メガビットの衛星回線を共有してインターネットを利用しています。通信コンサルタントのクリスチャン・ファン・デル・ロップ氏はセントヘレナ島の通信環境について「まるでダイヤルアップ回線レベルで、Skypeはおろか小さな画像ファイルひとつ読み込むのにも途方もない時間がかかります」と述べています。

そんなセントヘレナ島に新しく敷設されることになったのが、Googleが主導する海底ケーブル敷設プロジェクトEquianoの海底ケーブルです。著名な解放奴隷オラウダ・イクイアーノの名前を冠したこの計画は、ポルトガルから南アフリカまでを従来の20倍の伝送容量を持つ海底ケーブルでつなぐというもの。セントヘレナ政府によると、資金は欧州開発基金により賄われるとのことです。


Equianoケーブルは伝送容量に優れるだけでなく、海底ケーブル向けの新技術である空間分割多重化(SDM)技術を採用し、容量の追加や再配分を比較的容易かつ低コストで行うことができるという特徴があります。


いくらEquianoケーブルが費用対効果に優れていても、人口5000人に満たない島に最高毎秒数テラビットの海底ケーブルを敷設するのは過剰だとの指摘があります。それでも、Equianoケーブルがセントヘレナ島に延長されたのは、海底ケーブル網の冗長化が急がれているためだと見られています。

2018年4月には、海底ケーブルの損傷を原因とした大規模なネットワーク障害が発生しており、アフリカ西側諸国10カ国が3日間もインターネット通信から断絶される事態となりました。

丸3日インターネット接続できなくなるレベルの大規模ネットワーク障害が発生、そこから見える問題点とは? - GIGAZINE


また、具体的な計画は発表されていないものの、将来的にはセントヘレナ島を経由して南太平洋を横断する海底ケーブル網が整備される「ミッドアトランティック・ケーブルハブ」構想があるといわれています。


セントヘレナ島への設置が予定されている海底ケーブルはEquianoケーブルが初めてではなく、2018年3月にはアメリカと南アフリカを結ぶ海底ケーブルSouth Atlantic Express(SAex)の設置が決定されていました。SAexは先行きがやや不透明になっているという情報もあるものの、EquianoケーブルとSAexが接続されれば、セントヘレナ島はインターネットがほとんど届かない絶海の孤島から一転して、アメリカ・ヨーロッパ・南米・アフリカを結ぶ通信網の一大拠点になると期待されています。


セントヘレナ島の経済発展委員会で委員長を務めるローソン・ヘンリー議員は、「これは歴史的な瞬間です。子どもたちが学校の教室でストリーム配信の映像教材を見たり、島の病院が遠隔医療サービスを提供したり、自宅でさまざまなデジタルコンテンツを楽しめることを想像してみてください」と話し、セントヘレナ島の住民が高速なインターネット通信の恩恵を受けられることを喜びました。

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in メモ, Posted by log1l_ks

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