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「産業用ロボットを導入している企業」と「しない企業」の圧倒的な差をグラフで可視化するとこうなる

By Alex Knight

産業用ロボット」は組み立て作業などを行う機械装置のことで、我々が普段目にする製品の多くは産業用ロボットが製造の一部を担ったものです。産業用ロボットは近年目覚ましく進歩を遂げている一方で、産業用ロボットを導入していない企業もあります。「ロボットは人の仕事を奪ってしまう」という可能性が指摘されていますが、産業用ロボットを導入することで、「労働者数は増加し、業績は好調になり、生産性も高くなる」という研究が発表されています

Robots and firms | VOX, CEPR Policy Portal
https://voxeu.org/article/robots-and-firms

産業用ロボットの登場以来、「産業用ロボットが製造業にどのような影響を与えたのか?」という研究は数多く発表されてきました。一例では、1993年から2007年までの14年間における17カ国の産業に関する調査(Graetz, G and G Michaels,“Robots at work”)によって、産業ロボットは経済全体の生産率の約15%に寄与していることが示されています。

しかし、そのような研究は「すべての企業が同じくらいの産業用ロボットを導入している」という前提に立った国家単位での調査がほとんどだったとのこと。この問題に対し、ドイツ・バイロイト大学のマイケル・コッホ経済学部助教授率いる研究チームは、「『産業用ロボットを導入した企業』と『していない企業』ではどんな差が出るのか」に関する調査を行いました。

By saoirse2010

研究の元となったデータを提供したのは、スペインが行っている同国の製造業約1900社に関する年次調査ESEEです。研究チームによると、スペインはヨーロッパの中でも労働者1人あたりの産業用ロボットの比率が最も高い国の1つで、ESEEは各企業の生産ラインにおける産業用ロボットの使用率などのデータを含むことから、今回の研究に適していると考えられました。

ESEEのデータから、「産業用ロボットを導入している企業」と「導入していない企業」について年ごとの労働者数の変化を示したものが以下のグラフです。◆で表されたプロットをつないだグラフは1998年以前に産業用ロボットを導入した企業の労働者数を平均化したもので、●で表されたプロットをつないだグラフは全期間にわたって産業用ロボットを導入しなかった企業の労働者数を平均化したものです。導入済み企業の労働者数は1998年以降順調に増加していますが、反対に未導入企業は1998年以降労働者数は減少してきていることがわかります。


さらに、導入済み企業と未導入企業について、技術進歩や生産の効率性を示す「全要素生産性」の差を示したものが以下のグラフ。今回の研究における全要素生産性とは、産業用ロボットの導入による「直接的な効率化」と「間接的な効率化」の2つだと定義されています。直接的な効率化とは、産業用ロボットよって実際の生産ラインがどれだけ効率化したかを意味しており、間接的な効率化とは、産業用ロボットの導入によって生じた労働者の配置転換などによる効率化のことを意味しています。1990年から2015年にかけて産業用ロボット未導入企業でも全要素生産性が100ポイントから200ポイントに向上していますが、導入済み企業は100ポイントから300ポイントに増加しており、産業用ロボットを導入すると企業の全要素生産性が倍近く伸びることになります。その差の中でも、直接的な効率化による影響は約70ポイント弱、間接的な効率化は30ポイント弱を示しており、産業用ロボットの製造現場への影響は単なる生産ラインの効率化だけにとどまらないことがわかります。


研究チームによると、産業用ロボットを導入した企業は5年以内に20%から25%もの産出量の増加がみられたとのこと。さらに「ロボットが仕事を奪うのでは?」という一般的な懸念に反して、産業用ロボットを導入すると総雇用が約10%増加することも判明しました。

また、高いスキルを要求するような製造業は産業用ロボットの導入を行わないということや、そのような企業では産業用ロボットの効果が低いこと、輸出業はその他の業種よりも産業用ロボットの導入率が高いことなども判明しているそうです。

By Besjunior

この研究の結論として、「産業用ロボットを導入した企業はその業績が好調で労働者も増加である一方、導入していない企業はその生産高はマイナスで、ハイテク企業に太刀打ちできずに雇用状況も悪化する」と記されています。

また、今回の研究の中で、日本での同様の研究として経済産業研究所の森川正之副所長による「人工知能・ロボットと雇用:個人サーベイによる分析」も紹介されていました。

RIETI - 人工知能・ロボットと雇用:個人サーベイによる分析

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in ハードウェア, Posted by darkhorse_log

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