生理痛は女性の生産性をどれほど奪っているのか?
by Kinga Cichewicz
月経の時期に痛みや貧血、気分の低下といった症状を経験する女性も多いはず。月経はどれほど女性の生産性を奪っているのか?ということを調べた新たな研究では、月経が女性一人あたり1年間に9日分もの生産性を奪っていることが示されました。
Productivity loss due to menstruation-related symptoms: a nationwide cross-sectional survey among 32 748 women | BMJ Open
https://bmjopen.bmj.com/content/current
Study Finally Shows How Disruptive Period Pain Really Is, And We Need to Talk About It
https://www.sciencealert.com/period-pain-is-probably-causing-days-of-lost-productivity-each-year
研究者は、オランダで暮らす15~45歳の女性3万2748人を対象に、月経による不調で女性がどのくらい仕事や学校生活に影響を受けているのかを測定しました。この結果、月経を理由に学校や仕事を休む女性は14%に満たず、80%が体調不良でも仕事や勉強を行い続けており、その結果として生産力を落としてしまっていることが判明したとのこと。
by Antor Paul Follow
世界規模で行われた調査から、25歳以下の女性の71%が月経時に痛みを感じていることが示されています。特に若い女性は痛みを感じることが多く、月経の前から月経開始後数日間に痛みがあるのが一般的です。痛みの程度には個人差があり、「あまり感じない」という人がいれば「動けない」というほどに深刻な症状を呈する人も少なくありません。調査では若年の女性の5人に1人(20%)が生理痛で学校や大学を休み、5人に2人(41%)が授業での集中力やパフォーマンスが月経に影響されるということが示されました。
研究者によると、特に大学入学前の女子学生たちは、体調不良によって成績が落ちるリスクにさらされているとのこと。また、生理痛のある女子学生たちは社会活動や学校活動、スポーツ活動といった機会を月経症状のために逃しがちであるとも研究者は述べています。青年期における社会的相互作用やスポーツ活動への参加は健康にとって重要であるため、これは懸念事項であるとみられています。
生理痛は、痛みの原因がホルモンにある「機能性月経困難症」と、子宮や卵巣に異常にある「器質性月経困難症」にわかれます。このうち、身体的な原因がないにも関わらず痛みが発生する機能性月経困難症は生理活性物質であるプロスタグランジンの変化によって引き起こされることも多いとのこと。
身体的に原因がない痛みだというとから、痛みの伴う月経症状を「正常なもの」だと考え、「健康上の問題」と認識していない女性も多くいます。月経について話し合うことがタブーと見なされる社会的背景や教育の欠如もあって、ほとんどの若年女性は医療機関に行くことなくセルフケアで痛みに対処しようとします。しかし、「軽い痛み」を越え、日常活動を妨げるほどの痛みを感じている場合は医師への相談をすべきだと研究者は呼びかけました。
by VanveenJF
痛みに対処するための方法は人によって異なり、全ての人に効果を発揮する完璧な方法は存在しません。イブプロフェンのような非ステロイド系抗炎症剤や経口避妊薬は機能性月経困難症に効果を発揮する可能性がありますが、副作用があるため医師への相談が必須です。一方で、解熱鎮痛薬であるアセトアミノフェンは生理痛の時に用いられることがあるものの、特に効果的ではないそうです。また、「熱」や「定期的な運動」が痛みを和らげることも研究で示されているため、ヨガなどの運動によって体を温めることも効果的だと研究者は述べています。
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