女性の乳首を規制から解放する「私たちの乳首」とは?
数百人の男女のヌードを撮影したり、1万8000人のヌードをムービー撮影したりしているのが、写真家のスペンサー・チュニックさん。同氏はFacebookおよびInstagramのオフィスの外で、乳首の解放を求める運動を行っています。
We The Nipple - National Coalition Against Censorship
https://ncac.org/we-the-nipple
Inside Spencer Tunick’s Nude Photo Shoot to Challenge Facebook Censorship - Artsy
https://www.artsy.net/article/artsy-editorial-inside-spencer-tunicks-massive-nude-photo-shoot-challenge-facebook-censorship
2019年6月2日、写真家のチュニックさん指導のもと、100人を超える「男性の乳首写真を印刷したもので生殖器や乳首を隠した人々」が舗装路の上に寝転がって、乳首の解放を訴える活動を行いました。女性たちが自分の生殖器や乳首を隠すのに使用している「男性の乳首写真」は、芸術家のアンドレス・セラーノやポール・ムピ・セプヤ、人気TV司会者のアンディ・コーエン、レッド・ホット・チリ・ペッパーズのドラマーであるチャド・スミスらが提供したものです。
この活動は「We The Nipple」(我ら乳首)と呼ばれており、「#wethenipple」というハッシュタグを使ってSNS上で拡散されています。
We The Nippleは検閲に対する国民連合であるNational Coalition Against Censorship(NCAC)とチュニックさんがコラボレーションしたことで生まれました。男性の乳首はさらしても問題ないのに、女性の乳首はFacebookやInstagramのコミュニティガイドライン上で公開が禁止されていることに対する抗議活動がWe The Nippleです。
同じような活動としては、「Free the Nipple」や……
「女性だけ乳首を隠すのはおかしい」ということで公衆の面前で乳首をさらす「Free the Nipple」 - GIGAZINE
「Genderless Nipples(男女の境界がない乳首)」というInstagramアカウントの存在が挙げられます。
「すべての乳首は皆平等」女性の乳首を規制から解放すべく、どのレベルの乳首ならバンされないのかチャレンジする「ジェンダーレス乳首」アカウントがInstagram上に登場 - GIGAZINE
We The Nippleではチュニックさんを含めた250以上のアーティスト・美術館・アート団体などが署名活動を始めています。
活動の中心人物であるチュニックさんは、世界中でヌードインスタレーションを行っているアーティストとして知られています。2000年にはアメリカの最高裁判所は、チュニックさんがニューヨークのウィリアムズバーグ橋の下で行ったヌード撮影に関する訴訟を棄却したため、この撮影が過去20年でニューヨーク市内で初めて行われたヌードインスタレーションとなりました。
そんなチュニックさん主導のWe The Nippleが6月2日にFacebookのオフィス前で行われたわけですが、チュニックさんは活動について「これは服を着た人たちの写真です。ただ、人々が身を包んだものが男性の乳首だっただけです」と語っています。活動ではあくまでもFacebookのコミュニティガイドラインに抵触しないように、男性の乳首が印刷された写真を使って生殖器や女性の乳首を隠しています。
FacebookおよびInstagramは絵画や彫刻といった芸術作品の中で表現されるヌードを許可していますが、写真だけは例外とされています。この方針はチュニックさんのような写真家にとっては特に難しいものであり、チュニックさんはこれらのSNS上に作品を投稿する際は細心の注意を払って乳首や生殖器が写り込まないようにしているそうです。もしもコミュニティガイドラインに違反してしまった場合、該当画像もしくはアカウントそのものが何の警告もなく削除されてしまうため、裸の写真を取り扱う芸術家たちはアカウントを作り直してフォローを1から集め直すなどの必要があります。
We The Nippleに参加した人のツイート
Proud to have taken part in Spencer Tunick’s #wethenipple protest against censorship & misogyny early this morning. Social media must remedy their rules. They suppress art & freedom & beauty. pic.twitter.com/xO8ULxVN60
— Ullie Emigh (@ullieemigh) 2019年6月2日
NCACは、FacebookおよびInstagramのコミュニティガイドラインについて「全世界に対してFacebookユーザーの信念を押しつけ、芸術的表現を妨げ、ジェンダー差別を強制するようなものだ」と指摘。加えて、ユーザー自身がヌードコンテンツを細かく制御できるように、FacebookおよびInstagramがフィルターシステムを導入することを求めています。
参加者の多くはSNSによる検閲のためだけに活動しているわけではなく、女性やトランスジェンダーなどが社会にどのように扱われているかなどの、より幅広い文化的な問題に取り組むためにWe The Nippleの活動に参加しています。女性参加者の1人であるドーン・ロバートソンさんは、「この問題は女性の体についての哲学的な問題であり、ヌードとセクシャリティを恥じるということです」と語っています。
また、自身の裸の写真をアートとして公開している写真家のサバンナ・スピリットさんもWe The Nippleの活動に参加しています。ロバートソンさんは女性の権利を主張するため、スピリットさんは芸術作品として裸の写真をSNS上に投稿するため、これまで度々何の説明もなしにアカウントを削除されてきたそうです。そのため、スピリットさんは裸の写真をオンライン上に投稿することに未だに不安を感じていると述べました。
6月2日に行われたWe The Nippleの活動を受けて、Facebookは活動に対し何らかのコメントを行うと述べましたが、その日の晩の時点でWe The Nippleのハッシュタグを付けて投稿された写真がInstagram上から500枚以上削除されました。その後、夜遅くにはハッシュタグを付けられた画像はすべて制限され、翌日の午後に再び閲覧可能となったそうです。
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