生き物

都会の樹木は田舎の樹木よりも成長が早いが死ぬのも早いことが明らかに


二酸化炭素排出量の増加は地球温暖化の原因とされていますが、植物は光合成を行うことで二酸化炭素を吸収することができます。都市部を緑化して樹木に二酸化炭素を吸収させる試みは多くの地域で行われていますが、都会に植えられた樹木は田舎の樹木よりも成長が早い反面、死ぬのも早いことが明らかになりました。

Live fast, die young: Accelerated growth, mortality, and turnover in street trees
https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0215846

Urban trees grow fast and die young | Cosmos
https://cosmosmagazine.com/biology/urban-trees-grow-fast-and-die-young

地球温暖化や住環境向上に努める多くの都市が、緑化プログラムを立案して都市部に街路樹を植えるなどの活動を行っています。しかし、ボストン大学の環境科学者であるイアン・スミス氏が率いる研究チームは、「街路樹を植えることは広く支持されていますが、炭素循環における都市植生の役割は不確実なままです」と述べています。


樹木は多くの二酸化炭素を吸収してくれますが、苗木の段階から多くの二酸化炭素を吸収できるわけではありません。現実には植えたり育てたりするプロセスの中で多くの二酸化炭素が排出されており、樹木を植えたことで排出された二酸化炭素排出量をトータルの二酸化炭素吸収量が上回るには、およそ26年~33年ほどかかるとのこと。

スミス氏が率いる研究チームは、都市部の街路樹が環境改善にどれほど役立っているのかを調べるため、ボストンにある街路樹を数えて大きさを測定し、2005年から2006年にかけて行われた調査結果と照らし合わせて成長度合いや死亡率を調べました。また、都市部のボストンにある樹木との比較対象として、マサチューセッツ州郊外にある植林地で25年間にわたって収集されたデータを用いました。


調査の結果、都会の樹木は郊外にある樹木よりもはるかに成長が早く、ボストンの街路樹は郊外の樹木よりも約4倍のスピードで成長していたとのこと。この理由について研究チームは「1本の木に当たる光が多いこと」「周囲に別の木が少なくスペースが広いこと」「二酸化炭素量が多いこと」「肥料となる窒素が多いこと」「ヒートアイランド現象により暖かいこと」などが考えられるとしています。

樹木が大きければ大きいほど多くの二酸化炭素を吸収することができるため、1本あたりの二酸化炭素吸収量でいえば郊外や田舎にある樹木よりも、都会の街路樹の方が早く大量の二酸化炭素を吸収できるようになるそうです。

しかし、都会の中で樹木が大きく成長することにはリスクが伴うとのこと。樹木が大きくなるにつれて根元のスペースが窮屈になり、時に過剰な刈り込みが行われ、道路や建物にとって危険になったり開発で邪魔になったりすれば撤去されてしまいます。都会にある街路樹の死亡率は郊外の樹木の2倍近くになるそうで、若くて大きな木が最も死の危険にさらされていると研究チームは主張しています。

by Jacob Morch

街路樹の急成長は二酸化炭素吸収においてメリットですが、研究チームは「今のところ、樹木が急成長する利点は街路樹の死亡率の高さによって十分に生かされていません」と指摘。大きく成長した街路樹の死亡率を下げるための施策は、新たに街路樹を植える試みに注力するよりも、結果的に多くの二酸化炭素を吸収することにつながるだろうと研究チームは述べました。

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in サイエンス,   生き物, Posted by log1h_ik

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