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復旧率95.2%を誇るデータ復旧のプロに「RAID障害に関する疑問」を根掘り葉掘り聞きまくってきた


複数のHDDを組み合わせ、仮想的にひとつのドライブのように運用できるようにするのが「RAID(レイド)」です。企業などでは大規模なデータ共有を行うためのファイルサーバーなどにRAIDが活用されており、GIGAZINE編集部でも独自運用のサーバーでRAIDを使用しています。しかし、GIGAZINEでは過去に複数回にわたってRAIDで不具合発生した経験があり、つい先日も新しく構築しようとしたRAIDでエラーが発生。幸いデータ移行前の段階だったため実害はなかったものの、もしもエラー発生がデータ移行後だった場合、サーバー内のデータがすべて飛んでしまっていたかもしれません。そんな可能性もあることに戦々恐々としていたところ、データ復旧業界で11年連続国内No.1の売上シェアを誇り、データ復旧率(データ復旧件数/データ復旧ご依頼件数:2017年12月~2018年11月までの各月復旧率の最高値)は驚異の95.2%という国内屈指の技術力を誇るデジタルデータリカバリーさんから、「社内RAIDやサーバーは長期休暇明けに障害が発生しやすい」という話が飛んできました。そこでこれ幸いとばかりに、データ復旧のプロにRAIDとRAID障害について、気になっていた疑問点をぶつけまくってきました。

データ復旧.com【デジタルデータリカバリー】|復旧率95.2%のデータ復旧サービス
https://www.ino-inc.com/


というわけで、さっそく東京・銀座にあるデジタルデータリカバリーの東京本社へやってきました。


6階の総合受付にはプライバシーマーク登録証などが飾られています。


早速インタビューといきたいところですが、最初は東京本社にあるデータ復旧を実際に行っている現場の様子を見学させてもらえることに。


データ復旧はオフィスビルの一角で行われており、中に入るには金属探知機を使った入念な検査が行われます。


なぜここまで厳重なセキュリティが敷かれているのかというと、お客様から預かった大切なデータを外部に持ち出しできないようにするためだそうです。このほか、オフィスには無数の監視カメラも設置されていました。


中に入って最初に目に飛び込んでくるのは、入出庫エリア。ここではお客様から送られてくるHDDの入荷作業や、データ復旧が完了したHDDの出荷作業が行われています。


ただ荷造りや荷解きをするだけでなく、送られてきた機器から記憶媒体を取り外す作業なども合わせて行われており、見学時はiMacからストレージを取り外す作業が行われていました。


入出庫エリアでHDDには……


バーコードが貼り付けられます。こうすることで各HDDが復旧作業のどの段階にいるのかを管理し、紛失・持ち出しなどを防ぐわけです。


ここはHDDの論理障害を復旧するためのエリア。バイナリエディタを使用してデータの破損箇所を分析し、破損しているセクターあるいはバイト単位で、破損した値を正常なものに修復していく作業が行われています。


壁に取り付けられているモニターの緑色部分は、HDDのデータが正常に読み込まれていることを表しているそうです。赤色部分が破損箇所を表しているとのことで、データ復旧の進捗が誰でも視覚的に確認できるようになっているというわけ。


さらに、防塵服・静電気防止服の着用が義務づけられた、手術室同等の設備を備えたクリーンルームも完備。ここではHDDの物理障害を修復するために、磁気ヘッドやモーターなどの部品交換作業が行われます。


というわけで、見学が終わったら早速インタビュー開始。今回お話を伺ったのは、デジタルデータリカバリーでエンジニアグループのグループ長を務める井瀧 義也さんです。


GIGAZINE(以下、「G」):
それでは、本日はよろしくお願いします。さっそくなんですが取材の前に聞いた話では、「RAIDの故障が長期休暇明けに発生しがち」とのことですが、そんなに長期休暇明けに壊れるものなのでしょうか?

エンジニアグループグループ長 井瀧 義也(以下、「井瀧」):
長期休暇明けにはよく壊れますね。壊れるというか、データ復旧の問い合わせが多くなります。

G:
なぜ問い合わせ件数が増えるのでしょうか。

井瀧:
長期休暇に合わせて一度システムをシャットダウンしてしまう会社があり、休みの間はずっと放置されていて、休み明けにつけようと思ったらつかないというケースが多いですね。

G:
なぜ一度シャットダウンしたものが期間をおいて電源をオンにしても起動しない、ということが起きてしまうのでしょうか?

井瀧:
おそらくオンにはできていて、起動はしているのですが立ちあがってこないということが多いのでしょう。

G:
なぜそのようなことになるのでしょうか?主に今までの経験上、こんなことがあった、という事例を交えながら教えていただけると。

井瀧:
そもそもHDDが経年劣化で壊れる手前だったのだと思います。サーバーやRAIDは基本的にずっと稼働しているので壊れる寸前であることに気づかないことが多いのですが、一度シャットダウンしてしまうと、次に起動した際にうまくいかず故障に気づくという。ずっと起動していればそのままなのですけども。

G:
ということは、HDDの中心にある軸というか、モーターの部分が壊れているというイメージなんでしょうか。


井瀧:
それもあると思いますし、そもそも不良セクターが多くて、再度読み込もうとしたときにそこが引っかかって読み込めないというケースもあると思います。RAIDやサーバーといっても基本的に頻繁に使用するデータは限られていて、そのデータのところしか読みに行かないので、起動しっぱなしでも不良セクターに引っかかることはそこまでないんです。

G:
なるほど!

井瀧:
あとは、RAIDの場合は書き込みも読み込みも複数のHDDに分散しているので、一度電源を落とすと、「じゃあどのディスクを読みにいこう」と、最初のRAIDコントローラーから判断しに行くこととなります。例えば「ディスク1」「ディスク2」「ディスク3」「ディスク4」があって、障害発生前は「ディスク2が既に壊れていたのでディスク1、ディスク3、ディスク4だけを読み込んでいた」とします。そんな時に、RAIDを一度シャットダウンして再起動すると、壊れているディスク2も読み込もうとしてしまい、そこでクラッシュしてしまうケースもあると思います。我々はあくまで壊れた後のものしか見ていないので仮説ですが。


G:
今の話に出てきたRAIDコントローラーについてですが、GIGAZINEでも自社のサーバーを持っていて、先ほどの話と同じように一度電源を再起動したらぶっ壊れたということが確かにありました。RAIDコントローラーの電源をオフにしてからもう一度オンにしたら起動しなかったり、書き込みに失敗したり、なぜあのようなことが起きてしまうのでしょうか。

井瀧:
RAIDコントローラー自体はログや「どこが壊れています」という情報を蓄積しているので、本来は正常に動いていれば次に起動したときにちゃんとそれを元の通りに起動してくれるはずなんです。つまり、そういった障害が起こる場合はそもそものRAIDコントローラー自体が壊れているぐらいしかないと思います。

G:
なるほど。最も意味不明なのが、RAIDコントローラーはそれ自体が1枚しかないからシングルポイントで壊れやすいというのは理解できるのですが、最近はソフトウェアRAIDが多いじゃないですか。ソフトウェアRAIDの場合、ソフトウェアが壊れてもソフトウェアを修理したら何とかなるんじゃないかと思ってしまうのですが、そういうわけではないということなのでしょうか。

井瀧:
弊社ではあまりしないですが、ソフトウェアRAIDでもRAIDを修復することはできます。大体その場合、HDDの中にRAID情報が全部書き込まれているので、そこが破損していることが多いです。そこのRAID情報の値をバイナリエディタを使って少しずつ書き換えて組み直しますね。


G:
なるほど。あと、RAIDでも1とか5とか6とか10とかいろいろなRAIDレベルがあるじゃないですか。実際に修理する時に「このRAIDレベルは修理しにくいです」といったことは実はあったりするのでしょうか。

井瀧:
修理のしにくさで言うと、RAID-Zとかですかね。

G:
RAID-Zというのは……?

井瀧:
ファイルシステム自体がZFSというものなんです。RAID 1とかRAID 2とかの数字がついているものは、正直結構簡単に直せます。ディスク単位でデータが分散されているものなので。ただし、RAID-ZやDroboのRAIDなどは……。

G:
やはりそれぞれのメーカーが独自に作ったRAID規格はヤバイ、というようなイメージなのでしょうか。

井瀧:
ああいったものは市販でも復旧ツールがないので、復旧会社などが独自に開発しているツールを使わないと直せないです。

G:
逆にああいったものでも持ち込まれれば修理は可能でしょうか。

井瀧:
はい、できます。RAID-ZのファイルシステムであるZFSの何がどうなっているかというと、ディスクで分散されているわけではなくて、ツリー状というか、横に分散しているのではなくあちこちに分散しているんです。これがZFSなどのファイルシステムの中でデータを分散するというやり方で、例えば本来数字がついているRAIDに関しては「ディスク1、ディスク2、ディスク3、ディスク4……」という風に、データもその順番で並んでいるのですが、ZFSなどに関しては、「次のデータはディスク1にある、その次のデータはディスク4にある」という感じになっています。実際にRAIDを組んだ後に、さらに分散されているというのがこのファイルシステムの特殊な部分ですね。

G:
聞いていると、確かにすごく特殊ですね。

井瀧:
だから復旧が難しいわけです。ディスクを順番に並べてくっつければいいというものではないので。


G:
なるほど、そんな感じなんですね。あと、デジタルデータソリューションさんのページで、井瀧さんが登場するページは今回インタビューするにあたって、全て読んできたのですが、その中で井瀧さんが「今は復旧ができないと業界で言われている障害も、復旧の可能性を見出せば、その方法を試す事ができます。 必要であれば、アフリカだろうがアラスカだろうが、行かせてくれる。そんな会社です」と語られているのですが、この「今は復旧ができないと業界で言われている障害」とはどういったものになるのでしょうか。例えば火事で完全に燃え尽きて灰になったなら、復旧は無理だというのはわかるのですが。

井瀧:
物理的な部分だと今もずっとありますね。

G:
現在だと、どれくらいのものが「それはひどく見えるけど、諦めなくてもいいよ」というギリギリのラインになるのでしょうか。

井瀧:
傷がついているとそもそもヘッドが読みにいかないので物理復旧するのが難しかったり、HDDの種類によっては傷が少しでもついていたらもう復旧できないとされていたりもするのですが、今は大体のものが基本的に復旧可能です。最近ならヘリウムHDDが難しいですね。容量が大きくて、中に空気ではなくヘリウムが入っているものの場合、開けると空気が入れ替わってしまうのでヘリウムを入れ直さないといけなくなります。今のところそれほど案件自体がまだ入ってきておらず、研究しながらやっている段階ですが、難しいといえばそれぐらいですかね。

HDD内にヘリウム充填で容量が40%増加、HDD業界に構造的転換が到来か - GIGAZINE


G:
あと、読んでいて「そんなことがあるのか」と思ったのが、同じページで井瀧さんが前職で通信系のセールスエンジニアをやっていたと書いてあって、「お客様先に伺って、メンテナンスをしたり、新規案件を受注したりする仕事です。中にはやはりデータ障害が発生したお客様の代わりにデータ復旧業者に連絡をする、という仕事もありました」と書いてあるのですが、データ障害が発生してデータ復旧会社に連絡、というと要するに今みたいな「RAIDが起動しない」といった事態でしょうか。

井瀧:
そういう感じですね。

G:
前職の時は「これはデータ復旧会社を呼ばないといけない」というのを、どのあたりでどうやって判断していたのでしょうか。

井瀧:
当時はそこで直せる限り修理を頑張り、起動しなければデータ復旧会社に依頼するという流れでした。

G:
実際に今、データ復旧会社に電話をする方からされる方になり、かつての自分が経験したような案件を担当することもあるかと思います。そういった案件を見た時に「もっと早く連絡してよ!」といったこともやはりあるのでしょうか。

井瀧:
ありますね(笑)、そういった案件ばかりです。

G:
「もっと早く連絡してよ!」と思うボーダーラインは、現場にいる人、それこそかつての井瀧さんのような人には判断のつかないケースがあると思うのですが、どのあたりで見切らなければいけないのでしょうか。

井瀧:
最初の段階ですね。

G:
最初の段階?!

井瀧:
「自分で何かしようとする前にまず電話して欲しい」というのが本音です。ただ、そうはいかないのもわかります。お客様がすぐ目の前で見ている中で「何とか直さなきゃ」という気持ちになるのは仕方がないことだと思うので。ただし、それで障害が悪化してしまうと復旧の可能性が下がってしまうので、初めの段階でデジタルデータリカバリーに電話して欲しいですね。

G:
実際に悪化するパターンとしては、「こんなことをすると悪化する」ということはありますか。

井瀧:
何をやったら、というわけではなくて運みたいなものだと思います。媒体の経年劣化であればどれだけ使い古していたか。3、4年ぐらい使っているPCの場合はあまり無理をしない方がいいだとかですね。あとは、お客様がいろいろとやられた後に呼ばれた、というケースもあるかと思います。

G:
お客様がやられた、というのは具体的に何をやったものがあるのでしょうか。

井瀧:
自分で修理しようとするとかですね。

G:
開けようとしてみるとかでしょうか。

井瀧:
それは極端ですけどね。

G:
ソフトをインストールして復元しようとするとかですかね。

井瀧:
そうですね。あとはデータの上書きを何度も行ってしまうなどです。

G:
今までに見た中で、あまりにも「やってしまっているな」と感じる依頼はありましたか。

井瀧:
ありますね。「あー……」と思うことはあります。(笑)


G:
データ復旧.comのページ内に「RAID障害発生時にやってはいけない4つのPOINT」がまとめられているのですが、その筆頭に「リビルド・データの再構築」と書いてあって、そこに「リビルドは高い確率で失敗します!」とあるのですが、リビルド・データの再構築で失敗する時というと、どういう時に失敗してしまうのでしょうか。

井瀧:
リビルド・データの再構築が途中で止まった時は大体失敗です。止まる理由は不良セクターだったり、HDDが正常に動いていなかったり、無理やり動いていたものだったりです。リビルドするとそのHDDを無理やり動かすことになるので、途中でHDD単体だけが悪化して止まるわけです。そうすると、他の正常なディスク自体も途中で止まったところまでしか再構築されないので、それ以降のデータはズレた状態で残ってしまいます。

G:
なるほど。

井瀧:
その状態でHDDを取り外して全部持って来られても、再構築できたところまではいいんですが、それ以降はズレが発生したままで、前と後ろで整合性が取れなくなってしまうんです。


G:
そういうことなんですね。「RAID障害発生時にやってはいけない4つのPOINT」の2つ目に、「HDDの順番の入れ替え・交換」が挙げられていて、「自動的にリビルドがかかります」と書いてあるのですが、これはどういうことでしょうか。

井瀧:
これは全部が全部ではないのですが、先ほどのRAIDコントローラーの問題と同じく、上から「ディスク1、ディスク2、ディスク3、ディスク4」のHDDが入っていて、「1番のディスクにはこういう型番のHDDが挿さっている」「2番のディスクにはこういう型番のHDDが挿さっている」といった情報が全てRAIDコントローラーに記録されています。ただ、HDDを入れ替えてしまうと、RAIDコントローラーやNASだったらファームウェアが「1番には元々Western DigitalのHDDが入っていたのに今はSeagateのHDDが入っている。新しいHDDが挿入されたな」と認識してしまい、初期化が始まるんです。

G:
なるほど、そういう意味なんですね。3番目の「HDDを取り外し、単体で電源をON!」には、HDDを取り外した状態で単体の電源を入れると、「誤ってフォーマットしてしまう可能性大」とあるのですが、これは一体どういう状況なんでしょうか。

井瀧:
これをやる人はあまりいないと思いますが、複数入っているはずのHDDを1つだけで起動させるということです。

G:
1個だけ挿して「ちゃんと認識できるかな?」というイメージですかね。

井瀧:
多分そうなのでしょうね。最近はそこまで見ませんが、以前は確かにフォーマットしてしまう人もいました。HDD4本組みのRAIDで1本1本抜き出して単体でPCにつないで認識できるかを確かめようとするお客様は今もおられます。PCで「フォーマットしますか?」とエラーが出てしまうので、そこで「はい」と答えてしまうとフォーマットしてしまいます。「フォーマットしますか?」に「いいえ」と答えてHDDを確かめてもらえればいいのですが……。

G:
一番最後のポイントには「RAIDカードの交換を行う」と書いてあって、「データ構成がバラバラになる可能性大!」とあるのですが、こんな人は実際にいるのでしょうか。

井瀧:
いますいます。これは本当に文字通りなのですが、RAIDカードが問題だと気づいて、単純に新しい基板に取り換えればデータが見えるようになると考えるパターンです。

G:
皆さん、割とアグレッシブなことをするんですね。今まで見た中で、「なぜこのお客さまはこんなことをしてしまったんだろう……」という思い出深いエピソードはありますか。

井瀧:
なんでしょうね……。でも、本当にここに書いてあるようなことぐらいだと思います。

G:
ここに書いてあるようなことは実際に起きているということですよね。

井瀧:
起きてますね。

G:
要するに、「こんなことをせずに、すぐに持って来てください」という話なんですよね。

井瀧:
捨てちゃった場合はどうしようもないのですが、間に入っているネットワーク業者や通信系の業者に回収されただとか、メーカーさんに壊れたと思って返却してしまったというケースもあります。HPさんなどでよくあるのですが、HDDを交換したら古い方のHDDを回収しないといけないという決まりがあるんです。でも、あれは期限を設けて、例えば「1か月以内に返します」とちゃんと約束を守れば、新しいHDDをどうこうしている間も古いHDDを取っておくことができるんです。それをちゃんと案内されずに、「わかりました、すぐに返します」となると大変なことになります。

G:
ということは、メーカー製のRAIDは初期対応が重要という感じなのですね。

井瀧:
重要ですね。うちが関与する前の話なので。


G:
こういう風に持って来てもらえれば復旧率が上がるし、料金も比較的に安く済むということはありますか。問題の切り分け方法としては、どういう順番で対応すればいいのでしょうか。

井瀧:
一番理想的なのは「壊れたらデータ復旧業者に電話する」です。これが一番データを復旧できる確率が高いです。

G:
実際にそういったお客さんもいるわけですよね。

井瀧:
もちろんいます。何をすればいいかわからないという人の場合、すぐにデータが直ります。

G:
下手な知識がない分、どうすればいいかわからなくてすぐに電話するので、結果的に直りやすいと。

井瀧:
そしてその方がやはり安価で済みます。この分野に詳しい方や、勉強されてきた方がやって直ればいいのですが、直らなかった場合は大変なことになるケースが多いです。

G:
ああでもないこうでもないと試していくうちにデータが壊れてしまったみたいな感じでしょうか。

井瀧:
やっていることは間違いではなくて、それで直るようにできているはずなのですが、中身のもっと深いところが壊れているとそれだけでうまくいかないこともあり、より悪化してしまいます。

G:
最近、GIGAZINEでもRAIDでNASを構築していて、すごく大容量のものを組んでだんだん不安になってきているのですが、昔はHDDの容量が2~4TBぐらいだったものが、今は14TBだとかすごい容量になっているじゃないですか。でも、HDDの大きさ自体はほとんど変わっていないですよね。

井瀧:
中の密度が変わっていますね。

G:
そういった大容量のHDDはやっぱり直しにくいのでしょうか。

井瀧:
8TBまでは内部が普通の空気なんですが、14TBなどになると中がヘリウムになります。そういったものはやはり直しにくいです。ただし、ヘリウムを注入して安定してディスクが回転するようになれば、壊れにくくなります。その代わり、ディスクとディスクの間が狭くなるので、壊れた場合はより厄介なことになりますね。

G:
実際、ヘリウムの14TBみたいなHDDも修理に持ち込まれることはありますか。

井瀧:
件数は少ないですがあります。ただ、壊れるのはだいたい3年前のHDDとかなので、実際に内部がヘリウムのHDDがデータ復旧案件で入ってくるのは、これから2~3年後くらいになると思います。

G:
HDD故障率のメーカー・モデル別統計データを見ていると「このメーカーのこの型番のこのファームウェアはダメだよね」ということがあるように思えるのですが、なぜそういったことが起こるのでしょうか。

井瀧:
僕個人の見解ですが、企業間買収が起きたりしてHDDを作る人が変わったりすると、その直後に発売されるHDDが故障しがちだったりするように思います。

G:
そういった要因も考えられるんですね。HDDのファームウェアがおかしいと言っているケースが結構あるんですが、HDDのファームウェアというのは何なんでしょうか。

井瀧:
ファームウェアというのは、部品をどう動かすかをプログラムしたもので、ものによってはディスクの内側や外側に書かれています。そのプログラム自体がファームウェアなので、「その作りが悪い」イコール「ファームウェアがおかしい」ということですね。

G:
本当に文字どおりプログラムが悪いんですね。

井瀧:
プログラムの初期不良ではないですが、「誤作動が起きやすいプログラムに設計されてしまっている」といった感じです。

G:
そうなると、原因は「メーカー」という話なのでしょうか。

井瀧:
そうです。実際、ディスクだけでなくPCBにもプログラムが書かれているケースもあって、メーカーさんにしかわからないようなプログラムが書かれていることもあります。それが細かすぎて、何か障害が起きた時に「本当はこういう動作をしなきゃいけない」というプログラムが、違う風に動いてしまったりだとか……原因はいろいろあると思います。

G:
本当にいろいろということですね。先ほど実際にフロアでいろいろ修理をしている光景を見せてもらったのですが、クリーンルームで通常のHDDの修理風景を見ていたのですが、もっと上の容量のヘリウムが入っているHDDの場合は、クリーンルームとはいえ普通の空気なので作業はできないですよね。


井瀧:
いえ、復旧の観点で言えば、ヘリウムが抜けてもそこまで影響がないです。1年、2年、長期間使い続けるには影響しますが、当社は80%の案件が48時間以内に完了できますので、その時間内でデータを取ることができれば問題はありません。

G:
文字通りヘリウムを補充するイメージなんですね。

井瀧:
これはまだどこの会社もやり方がちゃんと決まっていないのではと思います。

G:
なるほど。あと、GIGAZINEでもRAIDを組むためにSynologyなどのいろいろなモデルを見ていたのですが、HDDではなくSSDで組むものだとか、キャッシュとしてSSDを手前に置くだとかそういうものが増えているのですが、SSDとHDDを組み合わせたものは、実際に持ち込まれた事例などから信頼度はどのようなものと感じていますか。

井瀧:
データ保存にはあまり適していないですね。スピード面では速くなるのですが。

G:
パフォーマンスはいいということですね。

井瀧:
どことは言えないですが、オンラインゲームの会社さんなどはストレージのサーバーにほとんどSSDを使っているんですよ。そこは、ゲームなのでスピードがないといけないという理由からSSDを採用しているらしいのですが、あまりにもアクセスが多いと基本的にデータの読み書きが制限を越えてクラッシュしてしまうんです。SSDには読み書きの制限が存在しますが、その制限の倍以上になってしまっていたりするわけです。いずれクラッシュするので、データの移行やメンテナンスを定期的に行い、データを新しいSSDに移動しながら運用していかないといけないことになります。HDDはその分、速度は少し遅くなりますが、データは安定するという感じです。

G:
そういったイメージなのですね。あと、おそらく多くの企業から「RAIDが壊れた」だとか「NASが壊れた」といった問い合わせがあると思うのですが、今までで最大級の案件はどんな案件だったのでしょうか。

井瀧:
大きい案件は病院が多いですね。大きい病院のシステム、サーバーなどではHDDの本数が90本を超えることもあります。過去の膨大な量のレントゲン写真などは高画質な写真なので、1枚1枚の容量がとても大きいんです。それなりのサーバーを立てなければいけなくなるのですが、その全データがなくなってしまったというケースなどですね。

G:
それはHDDを90本全部ここに持って来られたのですか。

井瀧:
持って来られましたね。それ以外でも60本組だとか40本組といった案件も多いです。ただ、90本でRAIDを1つ組んでいるわけではなくて、中で分散されているので、分散されたRAIDをまた組み合わせているという感じでした。

G:
そういう場合は、RAIDシステムのハードごと持ってくるのか、それとも中のHDDを抜いて持ってくるのでしょうか。

井瀧:
丸ごとだと物理的に入らないので、HDDだけ持って来られます。HDDのクローンを取って、コンパクトにしてからデータを吸い出しました。お客様のHDDはこれと同じくらいのサイズで、これの2TBとかだったかな。それが90本。作業をする時は最初にクローンを取って、クローンはディスクじゃなくてもイメージに取ってしまえばスペースとしてはゼロなので。


G:
なるほど。先ほどのオフィス見学の際に見たのですが、スマートフォンの中のデータの復旧も行われているのですね。スマートフォンの場合はHDDではないですよね。


井瀧:
スマートフォンの場合はHDDではなくメモリですね。

G:
ああいったもののデータ復旧というと、どういう人が依頼してくるのかよくわからないのですが、どういった事情で依頼してくるのでしょうか。

井瀧:
データを削除してしまっただとか、水没などもあります。夏になると多いと思うのですが、海に落としてしまったなどですね。

G:
そういった場合もデータを復旧できるものなのですか。

井瀧:
できます。あとは浮気の調査など……。

G:
そういうケースもあるんですね。

井瀧:
ありますし、あとは遺品系ですね。子どもさんや親御さんのスマートフォンを持って来て、中から写真だけでもいいから取り出したい、という案件です。

G:
警察からの依頼も多いようですね。具体的にどのような内容を依頼されるのでしょうか。

井瀧:
事件性があるものですね。警察もツールや設備をいろいろ持ってはいるのですが、それでダメだったものなどが依頼として来ます。

G:
「これは警察案件です」みたいなものが突然やってくるイメージなんですかね。「警察案件が来ました」と言われるとなんだか恐ろしいですね。

井瀧:
いろいろありますよ。半分に折られているだとか。

G:
スマートフォンが半分に折れ曲がっていても元に戻るものなんですか。

井瀧:
折れている部分次第ですね。データが保存されているところは決まっているので、そことズレていれば。その辺りの破損具合は見てみないとわからないですが。

G:
それでも救える可能性があると。それじゃあ見られたくないデータがあったら、バキッと折るだけじゃなくて、粉々に砕かないとヤバイということですね。

井瀧:
粉砕すればさすがに無理ですね。

G:
TVドラマなどでよくあるような、スマートフォンを踏みつけてバキッと折る程度ではデータ復旧されてしまう可能性があるということですね。

井瀧:
そうですね。

G:
それにしても、元々いろいろな会社で営業に行く仕事から、どうしてデータ復旧をやろうと決断したんですか。

井瀧:
元々通信系の会社で働いていて、そこも楽しかったのですが、やはりひとつのことを突き詰めていきたいという思いもあって。データ復旧関連の依頼もあり、「データ復旧の方向に進んでみよう」とシフトした感じですかね。

G:
この会社に入って最初からバリバリ復旧の作業をこなせたわけではないですよね。

井瀧:
最初は全然で、RAIDを組むだとかRAIDを直すといったところまではできませんでした。なので、最初は勉強しかしていなかったですね。


G:
公式ページに「世界中の最先端技術を集結」と書かれていたのですが、具体的にどのようなことを行っているのでしょうか。

井瀧:
研修や交流会があるので、データ復旧の技術を学びにいきます。世界的に見てデータ復旧に強いのはロシアや中国、イスラエルですね。

G:
なぜその3国がデータ復旧に強いのでしょうか。

井瀧:
歴史的に見ると、ロシアや中国は「直す」だとか「まねる」といった、既存のものを分析・解析することが得意なんですよ。そういった人が多いので、そこと手を組み、データ復旧の技術を学ぶというのがあります。

G:
どこまで言えるのかはわからないですが、最近勉強会的なことをして「そうだったんだ」と、新たな学びになったことなどはありますか。

井瀧:
直近ではNAND系ですかね、USBとかSSDの修理などです。あとはiPhoneやスマートフォンの修理をどうやってしようか、というのもありました。僕はRAID専門なのでそちらの方面には関与していないのですが、「あそこからデータを取り出せるんだ」という気付きを得たりなどはあります。あまり詳しくは言えませんが。

G:
最後に聞きたいのですが、RAID-Zがヤバイというのと、それぞれのメーカー独自のRAIDがヤバそうということは先ほどのお話でわかったのですが、RAIDレベルについて、データ復旧を依頼する場合に「この辺りのレベルだと直しやすい」といったことはありますか。

井瀧:
RAIDレベルはあまり関係ないですね。

G:
パフォーマンス重視か容量重視かでどのRAIDにするかを選んで、壊れる時は壊れると。

井瀧:
そうですね。

G:
別にどれかが壊れやすいということもなければ、復旧しやすいわけでもないという感じなんですね。

井瀧:
結局バックアップがちゃんと取れているかどうかと、RAID 5だったら、ちゃんとアラートが出た時に対応したかどうかなどですかね。同じ時に作られたHDDがだいたい一緒に入っていると思うので、壊れて赤ランプがついているのにずっと放置していると、他のディスクにも影響が出て壊れていくことがあります。RAIDレベルがどうこうということはあまりないですかね。ディスクが2本壊れても大丈夫なので、運用しやすいのはRAID 6とかだと思いますが、直す側からしたら別にどのレベルでも同じです。

G:
とにかく一刻も早く持って来てもらった方がいいという感じですね。

井瀧:
その1個のディスクにどれだけ障害が出ているか、というだけなので。

G:
なるほど、そういうことなんですね。今日はありがとうございました。

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