視力が悪くてもVRを楽しむためのMicrosoftのVR開発ツール「SeeingVR」とは?
by JESHOOTS.COM
バーチャルリアリティ(VR)の世界では、足をケガしていても広大なフィールドを駆け回れたり、背に翼を生やして空を飛ぶこともできたりと、現実の能力を延長した体験を味わうことができます。Microsoftが開発するSeeingVRは、視力に障害のある人が存分にVR世界を味わえるように感覚を延長するツールキットとして注目されています。
Advancing accessibility on the web, in virtual reality, and in the classroom - Microsoft Research
https://www.microsoft.com/en-us/research/blog/advancing-accessibility-on-the-web-in-virtual-reality-and-in-the-classroom/
Microsoft is making VR better for those with vision problems
https://www.engadget.com/2019/04/18/microsoft-seeing-vr/
VRはヘッドセットを頭からかぶることで、まるでゲームの世界に入ったような体験をすることができます。しかしながら、没入感のほとんどが視覚によって成り立つため、視力が低い人や視覚に障害のある人には満足に味わえないこともあります。ヘッドセットによっては眼鏡をかけたまま装着するのが難しいものもあり、「メガネがあるから大丈夫」というわけではありません。
Microsoftがこの視覚的な問題に対して開発しているSeeingVRは、Unity VRの開発者に向けたツールキットです。SeeingVRがどのようなものかは、以下のデモムービーを見るとよくわかります。
SeeingVR: A Set of Tools to Make Virtual Reality More Accessible to People with Low Vision - YouTube
サイバー感あふれるVR空間でも……
視力が低い人には、画像のように暗く、ぼやけてしか見ることができません。そのような状態を改善するために、視覚的な設定をカスタマイズできるのがSeeingVRです。
ひとくちに「視力が低い場合」と言っても、その問題と改善策は個人によって異なるため、SeeingVRでは14個のツールをカスタマイズできるアプローチを採用しています。VRゲームをあそんでいるとしばしば遭遇する「文字が小さすぎて読めない」問題を解決してくれる拡大レンズや……
手元に置いた小窓を使い、全体を見渡しつつ一部だけ拡大できる「遠近両用レンズ」。
ほかにもオブジェクトの境界線を強調してくれるツールや、オブジェクトを選択すると名称や説明文を読み上げてくれるツールなど、VRを楽しみにくい原因に合わせて対応するツールを組み合わせることができます。
視力に障害のあるテスター11人が、SeeingVRを用いて「メニュー選択」「オブジェクトの把握」などのタスクを行ったところ、全ての参加者がデフォルトのモードよりもスムーズにタスクをこなすことができたとのこと。
また、Microsoftの研究者は空間的音響を使用した「非視覚的なVR」を掲げ、全盲の人でもVR体験を可能となる未来を模索しているそうです。SeeingVRはUnity VRの開発者に向けてのみ公開されているものですが、Unityは最大のVR開発プラットフォームであるため、新しい技術として広く採用されていく可能性があるとengadgetは述べています。
by Alice Moore
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