Apple Watchユーザー40万人が参加した医療アプリの大規模調査の結果をスタンフォード大学が報告
by LWYang
スタンフォード大学医学部の研究チームは、2018年からAppleと共同で進めていた心臓研究のプロジェクト「Apple Heart Study」の調査結果をアメリカの学会で発表しました。およそ40万人のApple Watchユーザーが参加したこの研究プロジェクトでは、Apple Watchの心拍数計測機能による不整脈検出が心房細動の早期発見や医療研究にどれだけ役立てられたのかが調査されました。
Stanford Medicine announces results of unprecedented Apple Heart Study - Apple
https://www.apple.com/newsroom/2019/03/stanford-medicine-announces-results-of-unprecedented-apple-heart-study/
Apple Heart Study demonstrates ability of wearable technology to detect atrial fibrillation | News Center | Stanford Medicine
http://med.stanford.edu/news/all-news/2019/03/apple-heart-study-demonstrates-ability-of-wearable-technology.html
Apple Heart Health Study Shows Watch Detects Atrial Fibrillation
https://www.menshealth.com/health/a26839633/apple-heart-health-study/
心房細動とは、心臓の心房が何らかの原因で1分間に300回以上不規則にけいれんしてしまう状態のこと。心房細動が起こると心臓は規則正しい収縮ができず、全身に十分な血液を送り出せなくなる恐れがあります。心房細動を止めるには抗不整脈薬の投薬や電気ショック、アブレーション治療などの方法がとられます。
Appleは2017年12月に、スタンフォード大学医学部と提携して「Apple Heart Study」というプロジェクトをスタートしました。このプロジェクトは、Apple Watchで計測した心拍数とリズムを専用アプリで分析し、Apple Watchの装着者が不整脈になっていないかを調査するというもの。さらに、プロジェクトに参加する医師による遠隔の医療相談やモニタリング用の心電図パッチなど、綿密なサポートと追跡調査によって、Apple Watchによる心拍スクリーニングが医療的に有効かどうかが検証されました。
Appleがスタンフォード大学と協力して不規則な心臓のリズムをApple Watchで識別する取り組みを発表、心房細動を通知するアプリ「Apple Heart Study」も登場 - GIGAZINE
そして、およそ50カ月にわたる調査の予備的な結果が、2019年3月16日に開催されたAmerican College of Cardiology(アメリカ心臓病学会)の会議で報告されました。
Thank you to the team at @StanfordMed, the researchers and participants who made this groundbreaking study possible. https://t.co/RSLOMTU1uN
— Tim Cook (@tim_cook) 2019年3月16日
Apple Heart Studyの結果によると、40万人を超える参加者のうち0.5%がApple Watchから不整脈の通知を受けていました。Appleのヘルス部門担当ヴァイスプレジデントを務めるSumbul Desai博士によると、40歳未満の参加者のうち、通知を受けた人はわずか0.16%だったとのこと。一方で、65歳以上の参加者のおよそ3%は通知を受けていました。不整脈通知を受けた参加者のうち57%がそのデータを医者に提供し、適切な医療アドバイスを受けたそうです。「この調査結果は、年を取るにつれて心房細動が起きやすくなるという医師の認識を追跡するものです」とDesai博士は述べています。
また、Desai博士はユーザーに不整脈の通知が表示される前に、Apple Watchが不整脈を5回検出していると解説しました。これはApple Heart Studyのアルゴリズムによるもので、不必要な警告を避け、より正確に健康状態を把握するためにあえて設計された仕組みだとのこと。Desai博士は「Apple Watchの心拍数モニタ機能は、装着者の主治医と連携して使っていくことを原則としていて、診断や正式な検査の代わりになるものではありません」とコメントしています。
by hine
ただし、心臓専門医の中には、この情報が実際にどれほど有用であるかについて疑問を抱く人もいます。コロンビア大学メディカルセンターの心臓専門医であるクリストファー・ケリー氏は、心拍数チェックによる不整脈の早期発見が心房細動を防ぐという臨床データはないと指摘し、不整脈を早期発見したとしても心房細動の治療まで進むとは限らないと説明しています。
一方で、ケリー氏はApple Watchによる心拍検出技術は正しい方向への一歩だと主張しています。不整脈が心房細動を必ず引き起こすとは限りませんが、少なくともそのリスクを抱える患者に対して医師が治療方針を判断する手がかりにはなります。「スクリーニング検査は、それ単体で何かの病気を早期発見するものではなく、より早期治療を受けるための兆候を検出するものです。時代が進めば、この技術を最もうまく応用できる方法が考え出されるでしょう」とケリー氏。
by El Payo
Desai博士は「医師として、私たちは個人の治療に役立つような患者の健康情報を提供する方法を模索してきました。将来的にはApple Watchがさらに多くのユーザーを支援しながら、さらなる医療研究のために医療界と協力することに興奮しています」と述べました。
なお、Appleは引き続き医療メーカーのジョンソン・エンド・ジョンソンと協力しながら、Apple Watch Series 4に搭載されたECG(心電図)機能も組み合わせた新しいプログラムが医療現場での診断をよりスムーズにできるかを調査する長期研究プロジェクトを進めているとのことです。
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