「ボーイング737 MAX 8」が起こした2度の墜落事故の関連性が衛星追跡データにより示される
by Gusti Fikri Izzudin Noor
5カ月の間に墜落事故が2度発生した「ボーイング737 MAX 8」の飛行停止を世界各国が決断する中でも、連邦航空局は「システム的なパフォーマンスの問題はない」という姿勢を続けていましたが、現地時間の2019年3月13日に突然航空会社に対してボーイング737 MAX 8の運行停止を命じました。連邦航空局によると、航空機の追跡・監視システムを提供するAireonによって新たに分析されたデータが2件の事故が関連している可能性を示していたとのこと。
FAA Acting Head Dan Elwell On Boeing Decision : NPR
https://www.npr.org/2019/03/14/703298739/faa-acting-head-dan-elwell-on-boeing-decision
737 MAX crashes “linked” by satellite track data, FAA says | Ars Technica
https://arstechnica.com/information-technology/2019/03/faa-acting-chief-says-satellite-data-provided-link-between-boeing-crashes/
Aireon satellite data convinced FAA to ground Boeing 737 Max — Quartz
https://qz.com/1573521/aireon-satellite-data-convinced-faa-to-ground-boeing-737-max/
2018年10月29日(月)に発生したライオン・エア610便墜落事故と2019年3月10日(日)に発生したエチオピア航空302便墜落事故の間につながりがある可能性は、専門家によって事故後すぐに指摘されました。
2つの事故の類似点については以下の記事を読むとよくわかります。簡単にいうと、いずれも「ボーイング737 MAX 8」が使われており、事故は離陸時に、そして1日の最初のフライトで発生していました。
「ボーイング737 MAX 8」で5カ月の間に2度発生した墜落事故の類似点 - GIGAZINE
連邦航空局のDan Ewell氏によれば、遠隔操作を行うフライトテレメトリーシステムから新たに見つかった衛星データが、運行停止という判断の決め手になったそうです。
Aireonが分析したデータは、Automatic Dependent Surveillance(ADS/自動従事監視)システムから得られたもののこと。ADSのうちADS-Broadcast(ADS-B)と呼ばれるものは人工衛星(GPS)を利用して航空機の位置・高度・速度といった情報のモニタリングを秒単位で可能にするもので、精度の高い位置情報を提供します。地上の航空管制官は収集した情報から、航空機に周囲がどうなっているのかという全体像をリアルタイムで把握することが可能です。
ADSシステムは2001年にアメリカに導入され、2014年に起きたマレーシア航空370便墜落事故の後には全世界的に取り入れられるようになりました。ヨーロッパでは2017年以降に極超短波の「ADS-B」と呼ばれるシステムの搭載を多くの航空会社に義務づけており、アメリカでも2020年までにはほぼ全ての航空機にADS-Bが導入される見込みです。
連邦航空局は運行停止を命じる際に、「航空機の残骸から得られた新たな情報は、離陸後すぐの飛行機の設定について懸念を投げかけるものでした。航空機の飛行経路を衛星ベースでトラッキングするシステムから得られたデータと合わせて考えると、ET302とJT610の間にはいくつかの類似点があり、『2つの事故は原因を同じくする』と考えて調査を行うことが問題の理解と解決のために必要です」と述べています。
ただし、調査はまだ完了しておらず、2件の墜落事故の関連は確実ではありません。エチオピア航空302便の事故を目撃した人は「事故前に航空機から煙が出ているのを見た」と述べていますが、一方で飛行機のADS-B経由で伝達された302便の瞬間的な上昇・降下率は、610便のパターンと類似していることもわかっています。またボーイング737は1990年代にラダーの問題が複数報告されていたこととの関連性も示唆されています。
ボーイング737 MAX 8に関しては、パイロットから苦情があがっていたことも報じられています。
2度の墜落事故が起きたボーイング737 MAX 8についてパイロットから苦情が寄せられていたことが判明 - GIGAZINE
なお、連邦航空局の決断に続き、日本の国土交通省航空局もボーイング737 MAX 8の日本国内乗り入れを停止すると発表しました。
日本も737 MAX運航停止 国交省、FAA決定受け
https://www.aviationwire.jp/archives/168198
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