トラウマについて話すべき5つの理由とは?
by Lucas Dutra
悲惨な経験によって心に植えつけられてしまったトラウマは、長い期間にわたって人間の心を苦しめます。心理学者のエレン・ヘンドリクセン氏は、そんなトラウマについて勇気を持って人に話すことが、回復への手助けになるかもしれないと主張し、トラウマについて話すべき5つの理由について述べています。
5 Reasons to Talk About Trauma
https://www.quickanddirtytips.com/health-fitness/mental-health/5-reasons-to-talk-about-trauma
多くの人々はトラウマ的な出来事に見舞われたとしても口をつぐみ、他人に話そうとしません。トラウマは屈辱的で恐ろしいイベントであり、自分は二度と立ち直ることができないばかりか、自分以外の誰もこの気持ちをわかってくれないという気分にさせます。また、あまりにも恐ろしく衝撃的な出来事について、どのように言葉にしたらいいのかわからないという人も少なくありません。
しかし、トラウマを抱え込んでしまった人が自然治癒に失敗すれば、結果としてPTSDを発症してしまうこともあります。ヘンドリクセン氏は、人々がトラウマを処理する方法にはそれぞれ違いがあるため自身が人に指示する立場にないとしながらも、トラウマについて人に話すことで心の苦しみが緩和される5つの理由があると述べています。
by Inzmam Khan
◆1:サポートを得られる
ニュースを見れば戦争や性犯罪、児童虐待、家庭内暴力、銃乱射事件、自然災害など、あらゆるタイプのトラウマの原因になり得るケースが起きていることがわかります。かつて、トラウマの原因となるのは「人間が通常経験しないような出来事」だと思われていましたが、1995年の研究によるとアメリカに住む男性の61%、女性の51%が少なくとも1度はトラウマ的イベントを経験していると判明しました。トラウマは非常に珍しい出来事ではなく、多くの人々が経験する一般的な出来事といえるかもしれません。
従って、ヘンドリクセン氏はトラウマを抱える多くの人々は、自分と同じような経験をした「生存者のグループ」と接触することが回復への手がかりとなると述べています。トラウマは人間を孤立させて衰弱させてしまいますが、同じような経験を共有する人々のグループと接触することで人間は帰属意識を回復し、孤立から抜け出すことができます。
by Christina Morillo
◆2:自分に起きた出来事を理解する
トラウマとは言葉というよりも耳をつんざく轟音(ごうおん)のようなものであり、トラウマを処理することは本質的にトラウマを理解することだとヘンドリクセン氏は指摘。
従って、トラウマを理解するには言葉になっていない出来事を言葉にしていくことが重要であり、信頼できる家族や友人、セラピストに対してトラウマについて話すことは、トラウマを処理する絶好の機会となります。また、必ずしも口で声に出す必要があるわけではないそうで、ペンを持って紙に自分の考えやトラウマを書き出すことも、トラウマを理解する方法の一つだとのこと。
by Victoria Borodinova
◆3:自分がトラウマ以上の存在だと自覚する
多くの場合、トラウマは人生における決定的な出来事となります。戦争や犯罪、事故といったトラウマの原因となる出来事の前と後では、人生が大きく違ったものとなってしまうものです。たとえば、慢性的な疾患に苦しむ患者が自身の病気について専門家レベルで詳しくなってしまうように、トラウマが自身のアイデンティティを超越してしまった場合、人生がトラウマによって定義されてしまいます。
一方で、人間が自身のトラウマをアイデンティティの一部として統合できたなら、トラウマが人間にいい影響を与えることすらあるとのこと。トラウマについて語ることで今ある自分自身にトラウマが影響している事実を認めつつ、トラウマに飲み込まれないで自分のアイデンティティを見いだすことが重要です。
by Oleksandr Pidvalnyi
◆4:現実感を取り戻す
トラウマはあまりに衝撃的な出来事であるために、人々が持つ現実世界への認識をひっくり返してしまいます。何もかもが自分のせいであり、誰一人として信用できないと感じられ、本当の自分自身をさらけ出すことに恐怖を覚えます。
しかし、勇気を出してトラウマについて話してみることにより、この恐怖が誤っていたものだと気づくことができると、ヘンドリクセン氏は主張します。トラウマによって得た新たな人生観について話してみることで、相手がその間違いを打ち消してくれるとのこと。
by rawpixel.com
◆5:トラウマに意味を見いだす
トラウマを経験した人は、トラウマによって人生における重要なものを発見するかもしれないそうです。乳がんの宣告を受けた253人の患者についての研究では、宣告時に大きなストレスを受けた人々の多くは6カ月後に精神的成長を達成したことがわかりました。乳がんの宣告というトラウマが、人間が小さなストレスにとらわれるのをやめ、人生にとって何が重要なのかを再評価することにつながったというわけ。
トラウマによって目的意識がはっきりしたり、家族やコミュニティとのつながりが重要であると気づいたり、精神的な快復力を身につけたりした人々は、トラウマによって成長したといえます。大きなトラウマは人間をストレスから逃避させる働きを持ちますが、トラウマについて理解して対処することで、人生をより有意義なものにできるかもしれないとヘンドリクセン氏は考えています。
by Vladimir Kudinov
もちろん、無理にトラウマを言葉にして処理しようと焦ることは禁物であり、心の準備ができていないのに無理矢理トラウマについて話させることは、PTSDの発症にもつながりかねません。ヘンドリクセン氏は、「長旅と同じように自分のペースで進み、孤独にならないようにしましょう。トラウマについて話さない多くの理由も考えられますが、トラウマについて話した方がいい理由はもっと多く見つかります」と述べました。
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