「車を持つこと」が貧富の差を拡大しているとする10の不公平な事柄
by Andreas Komodromos
大都市における道路の渋滞はアメリカでも問題となっており、シンガポールのERPのような有料道路を作ったりなど、課税によって渋滞を減らす取り組みであるロードプライシング(道路課金)に注目が集まっています。しかし一方で、お金を払えば道路が使える有料道路は「高所得者を優遇している」という批判があります。そんな中、都市問題に対するシンクタンクであるCity Observatoryは、アメリカの自動車事情において、ロードプライシングよりも不公平な事柄を10個挙げて、ロードプライシングをむしろ推進するべきという主張をしていました。
Ten things more inequitable than road pricing | City Observatory
http://cityobservatory.org/ten-things-more-inequitable-that-road-pricing/
◆01:車の年間基本登録料は走行距離や車種によらず一律である
州によって価格や期間が変わりますが、アメリカでは1年か2年に1度、車種などに応じた「基本登録料」を支払って所有している車を「車両登録」する必要があります。この基本登録料は、車の走行距離や所有者の年収、車の価格によらず、車の種類や生産年によって一律となっています。走行距離が長ければ長いほど排気ガスは増加し、道路を補修する必要がでるはずですが、基本登録料は一定であるため、実質的には「走れば走るほど基本登録料はお得」という状態です。
By Matheus Bertelli
◆02:無料道路はバスの利用を非効率にしている
バスの利用者は交通渋滞の犠牲者といえます。車と比較すると、バスは遅く、魅力的な移動手段とはいえません。ロードプライシングを活用して渋滞を減らす取り組みを行うと、バスを利用するような低所得の人々の利益にも繋がります。
by dimetris
◆03:道路の近隣住民はよそから来た車による汚染の処理費用を支払わされている
最も高額なインフラの1つとして、暴風雨に対処するために都市に張り巡らされた雨水管などの大規模な雨水システムが挙げられます。多くの雨水は道路を経由するため、油漏れ、タイヤの残留物、沈殿した大気汚染物質など、雨水管に流れる有害物質の大部分は自動車からのものです。この有害物質を処理するために下水道料金と水道料金が費やされており、そういった料金を支払うのは道路の近辺の住民です。しかし、道路を利用する車の大半は市外から来ています。
By Erdenebayar
◆04:自動車保険は低所得の人ほど高額になる
アメリカでは全ての州において、自動車の所有者または運転者は賠償責任保険に加入することを事実上義務づけられており、実質的には「税金」であるといえます。自動車保険は都市部に住む人と、低所得の人ほど高額になる傾向があり、「逆」累進課税的な性質を持っています。
by jACK TWO
◆05:低所得の人はガソリン税の負担が大きくなる
現代でもほとんどの車はガソリンで稼働しますが、納税者は所得によらず、消費したガソリンの量に応じてガソリン税を支払います。これは逆進税になっており、低所得の人の生活費におけるガソリン税の割合は、高所得の人よりもはるかに大きくなっています。
By Skitterphoto
◆06:電気自動車の新車購入時における税額控除がある
アメリカでは電気自動車を新車で購入するときには、税金控除を受けられます。さらに、州によっては追加の控除を受けることも可能です。4万6000ドル(約510万円)のテスラを購入すると7500ドル(約83万円)の税額控除を受けられますが、低所得の人は新車で電気自動車を購入することはほとんどなく、こういった控除を利用できません。
By Blomst
◆07:有料駐車場の値段は人や車に寄らず一定である
都市部で車を利用すると、月極駐車場やコインパーキングなどの有料駐車場を利用する必要があるといえます。しかし有料駐車場の料金は車種や利用者の所得によらず、ガソリン税と同様に逆進税として機能しており、低所得者ほど負担は大きくなります。
By Bilderandi
◆08:「無料」とはいえない無料駐車場
店舗や会社、住宅のために「無料」駐車場を用意することは費用がかかるため、建築価格と住宅価格を押し上げてしまいます。無料駐車場の代金のしわ寄せは車を持たない人にまで押し寄せるため、車を持たない人は無料駐車場を利用する人に対して助成金を支払っていると言えます。つまり、車を持たない低所得の人々が車を持っている高所得の人々に対して助成金を払っているのが現状です。
By Jose Espinal
◆09:自動車には固定資産税の免除がある
住宅などの不動産とは異なり、アメリカの多くの州において、自動車は固定資産税を免除されています。例えばオレゴン州では、自動車にかかる州税と固定資産税は完全に免除されており、2年ごとに9億8900万ドル(約1100億円)の税金が免除されている計算になります。そして、この固定資産税の免除を受けられる人は車を所有している人、つまりは高所得者ということです。
By MichaelGaida
◆10:環境に優しく、安全で、渋滞を引き起こさない交通手段に対する不当な課税
オレゴン州ポートランドにて、カーシェアリングの1種として、電動スクーターの共同利用サービスが試験的に開始されました。
by Portland Bureau of Transportation
この試験的なサービスに対して市は電動スクーター1台あたり1日1ドル(約112円)の税金を課しました。クリーンで渋滞を抑えられ、道路の負担も少ないスクーターに1日1ドルが課せられるのであれば、自動車に対して1日あたり10ドル(約1100円)か20ドル(約2200円)の税金を課すべきですが、市は自動車に対してはそのような税金を課していません。
有料道路などのロードプライシングを行うことは、バスを効率化し、ロードプライシングで得た税金をその他の交通手段に賄うことができ、むしろ低所得の人々のためになる政策が可能であると主張されています。
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