岩井俊二監督が櫻木優平監督&梶裕貴さんと作品を語った「あした世界が終わるとしても」スペシャルトークショーレポート
映画「あした世界が終わるとしても」の櫻木優平監督は、2015年に公開された岩井俊二監督の「花とアリス殺人事件」で3DCGアニメーションパートを手がけた経験があります。その縁から2人が一緒に登壇するスペシャルトークショーが開催されました。しかも、櫻木監督、岩井監督だけではなく、「あした世界が終わるとしても」の主人公・狭間真役を演じ、岩井監督作品が好きだという声優の梶裕貴さんも登場し、45分にわたって様々なトークを繰り広げました。
映画『あした世界が終わるとしても』
https://ashitasekaiga.jp/
スペシャルトークショーが行われた新宿ピカデリーでは、1階エントランスで「あした世界が終わるとしても」のパネル展が行われていました。
キャラクターの設定と世界の関係がわかりやすくまとめられています。
壁面には各キャラクターごとのパネルも。
スペシャルトークショー司会の松澤千晶さんと、登壇した岩井監督、櫻木監督、梶さん。櫻木監督、梶さんともに岩井監督ファンであることから、楽屋は「岩井俊二ファン感謝祭」状態だったそうです。
トークショーの中で、岩井監督は「真とジン」「琴莉とコトコ」のように「もう1人の自分」の声を別の人が演じていたことに一番ビックリしたと告白。「実写だと絶対にできません、アニメならではだね」と語りました。
岩井監督は2015年に公開された「花とアリス殺人事件」で、役者の姿を撮影して、それをアニメーションに落とし込む「ロトスコープ」を採用。CGで携わった櫻木監督はこのときに「人のノイズがあってこそ」ということを学び、本作ではそのノイズを得るためにモーションキャプチャーを使ったことを明かしました。
せっかく岩井監督が訪れたということでステージで質問の機会を得られた梶さんは「6時間ぐらいかかりますよ?」と笑いを誘った上で、岩井監督がどのように役者を選んでいるのかというキャスティングについて質問しました。岩井監督は悩んだ上で、一例として「なにがどうと説明するのは難しいですが、何かが特別にいいんです」と表現。それは「きれい」や「声がいい」ということではなく、多くの人が抱える「自分のここが嫌だなぁ」と思う部分をちゃんと愛せている人だったりすると解説してくれました。
櫻木監督は、岩井監督の描く女性が魅力的で特にセリフのチョイスなどに驚かされる部分があることから「なにか情報収集をしたりするのですか?」と質問。これに岩井監督は「かわいいものとして見ておらず、変なモノだと思って見ているかも」「街で変わった人を見かけたら『ネタになる、ラッキー』と思う」と答えました。
岩井監督の作品には「演技とは思えないほどの自然な動き・表情」があると言われることがありますが、トークショーで岩井監督はこの点に言及。「演技をさせている」わけではなく、自分がどこか「振付師」であり、編集をしていても「ちゃんと振りが付いていないと使えないことがある」ため、現場へ「振りを付けにいっているようなもの」で、その結果が最終的に自然に見えているということかも、と語りました。
最後に、かつて「花とアリス殺人事件」のときに「すごいCGクリエイターがいる」と紹介されて出会った櫻木監督について、岩井監督は「たくさん素晴らしい映画を作ってくれると思う」と太鼓判を押した上で「僕も何か手伝いますので呼んでください」と呼びかけていました。
「監督」と近くで仕事をするのは岩井監督のもとが初で、様々なことを学んだという櫻木監督が送り出した「あした世界が終わるとしても」はまだまだ公開中です。「花とアリス殺人事件」のころは苦労したという正面から横への回り込みや、CGでは難しいという日常のなにげない芝居など、ぜひ注目して見てみてください。
映画『あした世界が終わるとしても』予告編(主題歌Ver.) - YouTube
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