自閉症スペクトラム患者がうつになるリスクはウェルビーイングを高めて低減できる

by AbsolutVision

自閉症スペクトラム障害(ASD)を持つ人は大人になったときにメンタルヘルスに問題を抱えやすいといわれています。うつや不安といったメンタルヘルスのネガティブな側面とASDの関係はこれまでに研究されてきたものの、ウェルビーイングなどポジティブな側面との関係はまだ研究が行われていない、ということで、新たに研究者が12カ月にわたるフォローアップ調査を実施しました。

Predictors of mental health and well‐being in employed adults with autism spectrum disorder at 12‐month follow‐up
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1002/aur.2064

Positive well-being associated with lower risk of depression in people with autism
https://www.news-medical.net/news/20190124/Positive-well-being-associated-with-lower-risk-of-depression-in-people-with-autism.aspx

スウェーデンのカロリンスカ研究所は2016年に、ASD患者の死亡傾向を調査した結果、ASDを持つ成人が若くして死亡する主要な原因は「自殺」であると示しました。

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ASD患者とメンタルヘルスの関係は注目される分野であり、上記に続き、ユニバーシティ・オブ・ユタ・ヘルスのAnne Kirby博士は1998年から2017年までの20年間のデータから、ASD患者と非ASD患者の自殺傾向を調査しました。Autism Researchで発表された最新研究では、ASD患者における自殺の累積発生率は非ASD患者のそれよりも有意に高かったと示されています。一方で、リスクが高いといっても自殺はまれであり、「ASD患者は自殺のリスクにさらされているわけではないが、このリスクについてより理解するために研究を続けている」とKirby博士は述べています。また、別の研究ではASD患者が適切なメンタルヘルスのサポートを受けられていないことも指摘されています。

そんな中、オーストラリアにあるラ・トローブ大学オルガ・テニスン自閉症研究所のDarren Hedley氏らは、「ASD患者とポジティブなメンタルヘルスの関係にも注目すべきだ」と考え、これまでに行われてきた研究とは別の視点で研究を行いました。

Autism Researchに掲載されたこの研究は、ASDを持つ18～57歳の新規入職者36人を対象に、12カ月のフォローアップ調査を行ったもの。36人の被験者のうち32人は男性で4人は女性、被験者は全員援助付き雇用プログラムに参加していました。

12カ月にわたって被験者の日常生活のスキル、仕事に対する満足度、うつ、不安、ウェルビーイングの状態が調べられたところ、まず職に対する満足度がわずかに減少し、日常生活のスキルが上昇したことが示されました。そして回帰分析の結果、ポジティブな意味でのウェルビーイングが、その後のうつのリスクと関係していることが示されたとのこと。一方で、不安が将来のうつのリスクを予測する傾向は見られなかったそうです。

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このことから、ポジティブな意味でのウェルビーイングはASD患者のうつを緩和できる可能性があると研究者はみており、職場におけるウェルビーイングやメンタルヘルスに焦点を当てたプログラムの重要性が示されたといえます。

研究を行ったHedley氏は「これまでの研究ではうつや不安と行ったメンタルヘルスのネガティブな側面に集中する傾向がありましたが、私たちは、成人の自閉症者を対象とした研究では見逃されがちな、『ウェルビーイング』というよりポジティブな面を見ることも研究において重要だと考えました。成人の自閉症者を対象とした研究がもっと行われる必要があり、特に、メンタルヘルスの健康や、全体的なより良い結果を予測するのかという理解が重要です」と述べました。