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ゲーム配信プラットフォーム「Steam」の2018年を振り返るとこんな感じ


PCゲームのダウンロード販売プラットフォームとして高い人気を誇る「Steam」が、ユーザーやパートナー企業には見えない「2018年に行ってきた改革や変更点」を丸裸にするように、2018年に行ってきたプロジェクトを振り返っています。

Steam コミュニティ :: グループ :: Steamworks Development
https://steamcommunity.com/groups/steamworks/announcements/detail/1697194621363928453

2018年度のSteamのアクティブユーザー数などをまとめたデータが以下の画像。1日のアクティブユーザーは平均4700万人、月間アクティブユーザー数は9000万人、ピーク時の同時接続ユーザー数は1850万人、月ごとの新規購入者数(ゲームを購入してくれる新規ユーザーの数)は160万人です。


◆ストア
リリース当初はゲームの販売プラットフォーム兼ゲームを配信するサーバーでしかなかったSteamクライアントですが、2018年には当時の想像をはるかに超える課題に直面したとのこと。毎月9000万人ものユーザーが利用するSteamというプラットフォームは、さまざまな関心に応え、開発者の規模に関わらずそれぞれがユーザーを獲得するチャンスを得られるようなプラットフォームであるべきということで、Steamは2018年6月にコンテンツ規制を限りなくゼロにすることを発表。何かと規制されがちな「アダルトビジュアルノベル」などについても、「ユーザーがプレイする権利」や「開発者が作成する権利」はあるはずということで、規制せずにプラットフォーム上で配信することを決めています。

Steamがプラットフォーム側のコンテンツ規制を限りなくゼロに、「違法でない限り」あらゆるジャンルのゲームが配信可能に - GIGAZINE


コンテンツ規制を限りなくゼロにすることで生まれる弊害には、Steamの「近日登場」タブを改良したり、コンテンツフィルタリング用ツールを成人向けコンテンツに対応させたりすることで対応しています。他にも、Steam上にまん延する偽ゲームへの対応を変更することで、トロール開発者を排除する動きを加速させています。加えて、各ユーザーが信頼できる意見を元にして新しい視点でストアを見られるように、Steamキュレーターの機能を向上。

新しいゲームをユーザーに見せるための場として、「開発者&パブリッシャーホームページ」のベータ版を開設。開発者が新しいゲームをリリースした際には、ユーザーが通知を受け取れるようになっています。

開発者&パブリッシャーホームページ


他にもSteamストア内での動きを理解しやすくするためにゲームのナビゲーショントラフィックツールをアップデートしています。

コンテンツの増加に対応するだけでなく、ウィッシュリストを改善することでストアの使い勝手を向上させ、さらにストアページ上にライブストリームやGIFアニメーションを埋め込めるようにすることで、開発者がゲームをより良くみせられるように改善しています。

他にも、オーストラリアドルに対応したり、トルコリラの変動にも対応したりすることで、世界中のユーザーがより快適にSteamを利用できるような施策もとっています。2018年には決済サービス業者も複数追加されており、対応業者の数は100を超えています。また、日本とポーランドではSteamウォレットカードがスタートし、45カ国での現金払いに応じられるようになっています。2018年にはSteamクライアントがサポートする言語は26に増えています。

その結果が以下のグラフ。売上ベースでSteamユーザーの地域を分類すると以下のようになり、2012年のデータと比べると世界中のさまざまな地域で暮らすユーザーがSteamを利用するようになっていることがわかります。


◆Steamコミュニティ
2018年に追加されたSteamコミュニティの新機能の中で特に注目すべきなのが、Steamチャットの改造だそうです。Steamチャットの改善は最新のチャット機能に期待する機能を提供するために行われたもので、特筆すべき改善には「大幅に改善されたグループチャット」「柔軟性が増したフレンドリスト」「より深く細かくなったリッチプレゼンス」「プライベートネットワーク上のWebRTCを使用する、完全に書き直されたボイスチャットシステム」などが挙げられています。Steamチャットの新技術の多くは、Steamブロードキャストと組み合わさり、The InternationalとPAXでのArtifactでテストを実施した、SteamTVの初期バージョンとなっています。


多くの人が集まるオンラインコミュニティには、時として有害な論争へエスカレートする、という危険性があります。Steamコミュニティもその危険性をはらんでおり、プレイヤーに自由な対話の場を提供することで、議論が制御不能になるケースがあった模様。そこで、Steamはゲームの掲示板を健全に保ちつつ、ハラスメントの報告を管理し、報告のあったユーザーが生成したコンテンツに対応できるようにするためのモデレーションツールを構築し、フルタイムのモデレーションチームを設置したそうです。モデレーションチームは2018年9月の後半から稼働し、ユーザーから報告された11万3290件もの投稿に対応し、そのほとんどを1日以内に解決しています。2018年にSteamコミュニティ上に投稿された件数は3億以上ありますが、モデレーションチームは稼働から3カ月強で、問題が報告された33万2687件のものユーザー生成コンテンツを検証することに成功したそうです。

ゲーム中心のコミュニティは大規模なこともあり、時には一部のユーザーにとって不適切なコンテンツが存在するケースがあります。例えば、原作至上主義のファンが特定のゲームのキャラクターを「本物と見なせない」と感じたり、「職場での閲覧に適さない」ような露骨な表現のMODが存在するとします。このMODを違和感なくインストールするユーザーもいれば、スクリーンショットをゲームのコミュニティページで見たくないというユーザーもいるはず。そこで、SteamはGoogleの画像コンテンツ認識APIである「Vision API」やAmazonの画像認識サービスである「Amazon Rekognition」を利用し、不適切な画像を特定し、デフォルトでぼかしをかける機能を追加しています。なお、この機能はユーザー側でいつでもオフにできます。

他にも、ユーザーへのさらなるプライバシー設定管理機能の付与や、GDPRへの対応、フレンド追加の簡易化などが行われています。また、春の大掃除イベントや、サマーセール期間中のセール星人ゲーム、ウィンターセール期間中の居心地満点びっくり小屋、そして年に1度の「Steamアワード」などの、コミュニティ構築イベントも開催しています。

Steam アワード


◆プレイ環境の拡張
2018年8月には新バージョンのSteam Playを公開。Linuxユーザーのゲーム体験を大幅に改善するためのアップデートが行われており、Linux版がリリースされていないWindowsゲームでもLinux上で遊べるようになりました。なお、当初は24タイトルが互換性を持つベータ版として発表されましたが、コミュニティの協力によりゲームの動作確認テストが急速に進行し、3400以上のゲームがLinuxでも互換性があると報告されています。

Linuxユーザーのゲーム体験を高めるべくValveがWindowsゲームをLinuxで実行できるProton採用のSteam Playをリリース - GIGAZINE


Steamの運営元であるValveは、開発者側の負担を軽減しつつユーザーが好みのプラットフォーム上でゲームをプレイできるようにするため、Vulkanへの投資を継続し、サポート用のシェーダープリキャッシュを構築しています。

Steam上で最も頻繁に使用されているコントローラーを調査した結果が以下のグラフにまとめられています。調査によると、なんと3670万人ものプレイヤーがSteamでのゲームプレイ時にコントローラーを使用しているとのことで、これらのデータはSteam入力の開発に役立っており、Nintendo Switchのプロコン対応にも一役買っている模様。なお、Steamは300以上のデバイスに対応しており、対応デバイスはすべて追加の作業なしでサポートしています。


2018年はPCでのVR体験の改善および進化にも精力的に取り組んできたというSteam。2018年5月には新しいSteamVRを公開し、開発者に入力抽象化レイヤーを提供しました。同年6月には別の入力システムであるSteamVR スケルタル入力も発表。これによりVRコントローラはセンサーが可能な限りの正確さで、ユーザーの手の位置や動きを認識し、VRアプリケーションにアニメーションデータをストリームとして提供できるようになっています。開発者はこのデータを使用することで、ユーザーのアバターの手を動画化し、VR空間における手を使ったインタラクションを実現可能となります。さらに、11月にはSteamVRモーションスムージングが発表されました。これはより多くのPCに高品質なVR体験を提供するためのもので、フレームオチが始まると最後に配信した2つのフレームを元に、モーションとアニメーションを推定し、新しいフレームを外挿するという機能です。

SteamVRホームにも新しいSteamデスクトップパネルの呼び出し機能やコンテンツクリエイターが環境を作成する際に利用可能なアセットパックを含む、さまざまなアップグレードが行われています。

他にも、Steam リンクがAndroidとRaspberry Piに対応し、大型テレビやスマートフォン上でのゲームのストリーミングプレイの幅がより広がっています。

◆Steamworksの追加機能
PUBGのようなゲームにおける、持続的なアイテムを支援する技術であるSteamインベントリサービスアップグレードし、すべてのSteamゲームでユニークかつダイナミックなプロパティを備えたアイテムの保有が可能になりました。簡単な設定スクリプトを使うだけで、燃えている紫の帽子にヘッドショットを追跡させるようなことが実装可能になり、実装後の処理はすべてSteam側で処理されるとのこと。なお、2018年はSteamインベントリサービスがゲーム全体で38億ものアイテムを作成したそうです。

また、ValveがDoS攻撃の緩和から学んだことを、Steam上で提供されるマルチプレイヤーゲームに反映させることが可能となりました。また、複数のプラットフォームでゲームがリリースされることを考慮し、GameNetworkingSocketsライブラリをオープンソースとすることで、ValveはSteamに依存しない環境構築の手助けも行っています。ゲームのSteam版はValveのプライベートネットワークを利用するため、Dota 2やCS:GOといったゲームが同じDoS保護を受けることが可能になるわけです。これはゲームネットワークトラフィックをすべてリレーし、ゲームサーバーのIPアドレスとクライアントを匿名化することで、スクリプトキディから守ることにもつながるそうです。なお、2019年中には、非Steam版のゲームでもプライベートネットワークを使用できるようにする計画をValveは明かしています。

◆Steamの舞台裏
2018年は多くのインフラ整備を行ったというSteam。ストア検索、ユーザーレビュー、Steamワークショップを支えるSolrサーバーに重要なアップグレードを行っており、もし主要データセンターに隕石が落ちたとしても、Steamに障害が出ないように災害復旧計画にも継続して取り組んでいるとのこと。2018年は17億枚のトレーディングカードの付与、4億8800万回のトレード処理、2億4500万個の絵文字作成、および2億1800万個のスクリーンショットの掲載が支障なく行えるように、2.7ペタバイトのFASTソリッドステートストレージを備えた新たなSQLサーバーを配置したそうです。

Valveは2015年から独自のグローバルプライベートネットワークを構築・運営しています。このグローバルプライベートネットワークは21カ国・28都市にある2万8000を超える地域・ローカルネットワークと直接接続しており、この途方もないレベルのネットワークを実現すべき、Valveは世界中のインターネット基幹企業と提携しているそうです。このプライベートネットワーク上で、229以上の国々でのゲーム配信、ゲームプレイ、ボイスチャット、その他のデータを高速かつ低レイテンシーでユーザーに提供することが行われています。Valveのエッジネットワーク容量は12Tbpsで、前年比50%の率で増加しています。また、2018年には顧客に15エクサバイト(150億ギガバイト)ものデータを配信ています。なお、Steamのサービス開始年である2003年のインターネット全体のトラフィックは推定9.3エクサバイトでした。


また、Steamのウェブサイト全体をHTTPSに完全移行することで、ウェブサイト全体のセキュリティを向上させています。加えて、5月にはセキュリティ問題の緩和や迅速な対応を目指し、HackerOneと提携してバグ賞金プログラムを開始。2019年1月までに、Valveプラットフォームの安全と保護に協力したセキュリティ研究者に対して、47万1000ドル以上(約510万円)の報奨金が支払われています。

他にも、Steamサポートが顧客とゲーム開発者の両方から提出された4400万件を超えるサポートチケットに対応。サポートへの問い合わせに留まらず、2018年にValveのゲームレビューチームは4万6200件のレビューリクエストに対応し、1万1111個のゲーム(もしくはDLC)をプレイし、1万7448個のストアページをレビューしています。


Valveは過去12カ月間で約1万のパートナーへの支払いを実行しており、その中でSteamに新規参入したパートナーの数は2300だったそうです。また、ValveはSteamworks配信契約を変更して、Steam上で一定の収益に達したタイトルへはより多くの報酬を提供するように変更し、必要に応じてゲームの売上データを共有できることも明確にしています。

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なお、Steamは2019年の目標として「ストアでの発見しやすさの改善」「中国でのサービススタート」「Steamライブラリのアップデート」「Steamコミュニティのイベントシステムのアップグレード」「SteamTVの拡張」「Steamチャットのモバイルアプリリリース」「CS:GOのトラストマッチメイキングを支えるテクノロジーをアップグレードし、完全なSteam機能としてすべてのゲームで利用可能となる『Steamトラスト』のリリース」「Steam PCカフェプログラム」を挙げています。

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in ソフトウェア,   ゲーム, Posted by logu_ii

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