ハードウェア

通信手段が限られる地方に安価で広範囲のメッシュネットワークを構築する「LibreRouter」


都会ではどこにいっても公衆Wi-Fiや携帯電話の電波が飛び交っていて、屋外でもネット環境はかなり充実しています。しかし、都会から遠く離れた地方には通信環境の整備が行き届かず、町にある通信手段はわずかなインターネット回線やモバイルキャリアのアンテナのみという状況もあります。「LibreRouter」はそんな通信環境に恵まれない地方に安価でシンプルなメッシュネットワークを構築して、通信環境を改善しようというプロジェクトです。

librerouter.org/
https://librerouter.org/


LibreRouter: Powering community networks with free and open hardware | APNIC Blog
https://blog.apnic.net/2018/12/18/librerouter-powering-community-networks-with-free-and-open-hardware/


例えばコミュニティにWi-Fiルータが1つしかなかった場合、Wi-Fiの電波が届く範囲にいなければインターネットに接続することは不可能です。もちろん「コミュニティのすぐそばに携帯電話用の通信アンテナ塔を新しく立てる」「インターネット回線をさらに延伸させる」などの解決法もありますが、かなりコストがかかってしまい、小さなコミュニティには現実的な方法ではありません。

そこで、LibreRouterと呼ばれるメッシュ対応ルーターとオープンソースで開発されたソフトウェア群を利用してメッシュネットワークを構成すれば、わざわざ回線を新しく引き直す必要もなくインフラストラクチャの偏りを解消でき、コミュニティ全体がインターネットを利用することができるようになります。


ハードウェアとしてのLibreRouterは「メッシュネットワークを可能にするアプローチ」「速度に影響を与えずに拡張できる効率性」「壊れにくさ」「手頃な価格」という目標が設定され、開発されました。長距離のポイント・ツー・ポイントを可能とするようなメッシュネットワーキング用の5GHz Wi-Fiとローカルアクセス用の2.4GHz Wi-Fiが可能で、128MBのDDR RAM・32MBフラッシュメモリ・拡張用のミニPCIeポートが搭載されています。


「壊れたら部品を取り換えればいい」という考えのもと、LibreRouterはとてもシンプルに設計されています。LiberRouterのメンバーであるNicolas Pace氏は「メーカーのニーズではなく、実際に使用するコミュニティのニーズに合わせてルータをデザインする必要がありました」と語っています。


LibreRouterを運用するには、OpenWRTをベースに開発されたソフトウェアを使用します。例えば、メッシュネットワークを作成するには「LibreMesh」というソフトウェアを使用します。このソフトには、IPアドレスの割り当てとメッシュDNS設定の自動化を含むメッシュネットワーク設定を簡素化する目的があります。これらのソフトウェアはオープンソースとして開発されているので、システムの導入が安価に抑えられるばかりでなく、コミュニティのニーズに合わせて誰でもカスタマイズができるのが大きな利点です。

LibreMeshによって形成されたネットワークは、「LimeApp」と呼ばれるソフトウェアで監視・管理が可能です。さらに、LibreMeshを搭載したネットワークを相互接続できるVPN(バーチャル プライベート ネットワーク)である「LibreNet6」も用意されています。

LibreRouterは記事作成時点ではまだプロトタイプの段階とのことですが、屋外での5GHz Wi-Fiを用いたテストではうまくいっているとのことで、アルゼンチン・メキシコ・カナダ・スペインのコミュニティネットワークで使用されているそうです。また、アンケート調査によると、タイ・シンガポール・インドのコミュニティネットワークからも関心が集まっているとのことで、LibreRouterのプロジェクトチームは今後2年間で2500台以上の需要が生まれることを期待しています。

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in ハードウェア, Posted by log1i_yk

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