5つの電波望遠鏡で測定したパルサーのデータを利用したパルサー時計「パルクロン」
by Seth Macey
オランダにある欧州宇宙機関技術センター(ESA)で、パルサー時計「パルクロン(PulChron)」の運用が始まりました。
ESA sets clock by distant spinning stars / Navigation / Our Activities / ESA
https://www.esa.int/Our_Activities/Navigation/ESA_sets_clock_by_distant_spinning_stars
パルサー時計は、中性子星から放出されている無線パルスを使用して時間の経過を測定する時計。原子時計や光格子時計と比べると短期的な安定性に欠けますが、原子時計が可使時間を超過するような数十年単位だと競争相手になり得ます。
by ESA/XMM-Newton/ L. Oskinova/M. Guerrero; CTIO/R. Gruendl/Y.H. Chu
プロジェクトを監督するナビゲージョン・エンジニアのステファノ・ビンダ氏によれば、「パルクロン」は衛星航法システムの時間測定、特に「ガリレオ・システム・タイム」の監視と生成のためにパルサーをもとにした時間スケールの有効性を実証することを目標としているとのこと。
「パルクロン」ではオランダのウェスターボルク合成電波望遠鏡、ドイツのエフェルスベルク電波望遠鏡、イギリスのラヴェル望遠鏡、フランスのナンシー電波望遠鏡、イタリアのサルディニア電波望遠鏡という5つの100m級電波望遠鏡で18のパルサーを測定。ガリレオの時間&測地検証機関(TGVF)にある活性水素メーザー原子時計の出力を操縦するために使うことで、短中期的な安定性と長期的な信頼性を両立しています。
by ESA
ESAに隣接したUTC(協定世界時)研究所では、3つの活性水素メーザー原子時計と3つのセシウム原子時計を利用して、パルクロンの正確性を10億分の1秒までを監視しています。それによると、UTCからパルサー時間への緩やかな移行は、1日に「200兆分の1」秒だと予想されています。
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