サイエンス

ノーベル賞の功績を上司に奪われた科学者、時をへて賞金3億円の科学賞を受賞するも「賞金は寄付」


X線を発生する天体「パルサー」を大学院生の時に発見するも、その業績が認められ1974年度ノーベル物理学賞を受賞したのは上司だったというジョスリン・ベル・バーネル氏が、数十年の時をへて賞金約3億円の科学賞を受賞することになりました。バーネル氏は、この賞金を女性や少数民族といったマイノリティの学生のために使うとしています。

Breakthrough Prize – Special Breakthrough Prize In Fundamental Physics Awarded To Jocelyn Bell Burnell For Discovery Of Pulsars
https://breakthroughprize.org/News/45

Bell Burnell: Physics star gives away £2.3m prize - BBC News
https://www.bbc.com/news/science-environment-45425872

British astrophysicist overlooked by Nobels wins $3m award for pulsar work | Science | The Guardian
https://www.theguardian.com/science/2018/sep/06/jocelyn-bell-burnell-british-astrophysicist-overlooked-by-nobels-3m-award-pulsars

In 1974, They Gave The Nobel To Her Supervisor. Now She's Won A $3 Million Prize : NPR
https://www.npr.org/2018/09/06/645257118/in-1974-they-gave-the-nobel-to-her-supervisor-now-shes-won-a-3-million-prize

Scientist Robbed of Nobel in 1974 Finally Wins $3 Million Physics Prize — And Gives It Away
https://www.livescience.com/63515-jocelyn-bell-burnell-breakthrough-prize.html

天体物理学者のバーネル氏は、ケンブリッジ大学の大学院生時代にアントニー・ヒューイッシュ氏のもとでパルサーを発見しました。5人の研究者の共著で論文が提出され、ヒューイッシュ氏の名前の次にバーネル氏の名前が記されましたが、1974年に「パルサーの発見における決定的役割」が認められノーベル賞を受賞したのは、バーネル氏の上司であるヒューイッシュ氏でした。ヒューイッシュ氏はバーネル氏と共に電波望遠鏡を構築しましたが、パルサーを発見したのはバーネル氏だったため、バーネル氏が共同受賞者とならなかったのは当時も大きな議論を巻き起こしました。特に、ヒューイッシュ氏の同僚であったフレッド・ホイル氏は、大きく非難したといいます。



このバーネル氏の功績が、2018年11月、認められることとなります。2012年にGoogleの創設者であるセルゲイ・ブリン氏やマーク・ザッカーバーグ氏らが優れた科学の功績に対して贈られる「ブレイクスルー賞」を創設しましたが、バーベル氏が2018年の基礎物理学ブレイクスルー賞を受賞することが決まりました。1974年当時、ノーベル委員会は受賞者に対して当時の額で賞金12万4000ドル(現在の価値換算で約6800万円)を贈っており、ヒューイッシュ氏は同年にノーベル物理学賞を受賞したマーティン・ライル氏と賞金を分け合いましたが、バーネル氏は賞金を受け取りませんでした。しかし、ブレイクスルー賞の受賞により、バーネル氏は300万ドル(約3億3000万円)を受け取ることになります。


BBCの取材に対し、バーネル氏は「自分自身のためのお金は必要ありません」と語っており、物理学界に存在する「見えないバイアス」に反対するために賞金を使いたいと述べました。具体的には、科学に関心を持つ女性や少数民族のための奨学金を創設したいと考えているそうです。

大学院生の当時、バーネル氏は、自分の達成を内面的に肯定できず自分を詐欺師のように感じてしまう「インポスター症候群」だったいいます。しかし、だからこそ注意深く、徹底した作業を行うことができたとのことで、「パルサーの発見は、私がマイノリティの博士号学生だったから起こった」とバーネル氏は述べています。

なお、1974年のノーベル賞の際にホイル氏は異議を唱えたものの、バーネル氏は当時、不満の声を挙げなかったといいます。The Guardianに対しバーネル氏は「ノーベル賞を受賞しなかったことで、その後は非常にうまくいったと感じています。ノーベル賞を受賞したら1週間はすばらしい時間が過ごせますが、その後は誰からも何ももらえません。でもノーベル賞を受賞できなかったことで、他の賞がもらえて、みんながほとんど毎年パーティーを開いてくれました。そっちの方がずっと楽しかったです」と語りました。

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in サイエンス, Posted by darkhorse_log

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