宇宙の謎の一つ「高速電波バースト」で新たな発見、過去で最も低い周波数を記録して謎が深まる
By 禁书 网
まだ解明されていない未知の天文現象の一つ「高速電波バースト(FRB)」は、1000分の1秒程度という短さの強い電磁パルスが宇宙のどこかから飛んでくるという現象です。2007年に初めて観測された高速電波バーストはその出どころが謎に包まれたままの天体イベントなのですが、その謎をさらに深める観測データが得られたことが発表されました。
ATel #11901: First detection of fast radio bursts between 400 and 800 MHz by CHIME/FRB
http://www.astronomerstelegram.org/?read=11901
Astronomers Have Detected an Intense And Mysteriously Low Frequency Radio Signal Coming From Space
https://www.sciencealert.com/astronomers-have-detected-an-intense-and-mysteriously-low-frequency-radio-signal-coming-from-space
この電波は、カナダのドミニオン電波天文台に設置された観測装置「CHIME電波望遠鏡(the Canadian Hydrogen Intensity Mapping Experiment)」によって受信されたものです。CHIMEは4つの反射装置と、それぞれの焦点に電波センサーを並べた電波望遠鏡で、400〜800MHzの周波数域の電波を1ミリ秒ごとに観測することが可能。リアルタイムで約200平方度の領域で高速電波バーストの観測を行うことができる高性能な観測装置です。
CHIME Telescope
https://chime-experiment.ca/location
今回観測された高速電波バーストは、命名の原則に従ってその日付から「FRB 180725A」と呼ばれています。その電波の様子を示すグラフが以下のもの。中央部にある黄緑色の部分が電波を示すもので、約2ミリ秒の間に700MHzよりも低い周波数域の電波が受信されていたことがわかります。通常、高速電波バーストはもっと高い周波数の電波であるのですが、FRB 180725Aは700MHz以下に集中し、特に580MHzあたりに顕著なピークがあることが大きな特徴であるとのことです。
高速電波バーストは2007年に初めて観測された現象で、これまでに約40回の受信が確認されています。その詳細は謎に包まれていますが、遠い宇宙から地球にまで届く電波を放出するだけのエネルギーは膨大なものであると考えられており、太陽の5億倍に相当するエネルギーが一瞬で放出されたものとも考えられています。いったいどのような仕組みで電波が放出されているのかも全く明らかになっていませんが、その起源は中性子星の活動であることが濃厚となっているほか、ブラックホールの誕生や伴星を伴うパルサー、爆縮を起こしたパルサー、「ブリッツァー」と呼ばれるタイプの天体などが起源の候補として考えられています。また、宇宙人による巨大宇宙船がエンジンを始動させた時に発された電磁波であるとするハーバード大学の研究者による仮説も飛び出しています。
今回の観測結果は、まだ他の科学者によるピアレビュー(査読)が行われる前の段階であるという点には留意が必要。とはいえ、また一つ宇宙の謎が深まるという意味において、興味深いできごとであるといえそうです。
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