サイエンス

星からの信号を頼りに宇宙船の現在位置を知る「宇宙版GPS」の研究開発が進む


自動車のナビやスマートフォンの地図アプリなどのGPS機能は、人工衛星から送られてくる電波を使って自分の位置を知ることができます。これと同じような仕組みで、規則的な電波を発している天体「パルサー」からの信号を頼りに、広大な宇宙空間でも宇宙船の居場所を正確に把握できるシステム「Galactic Positioning System」の研究開発が進められています。

NASA's Got a Plan for a 'Galactic Positioning System' to Save Astronauts Lost in Space
https://www.space.com/40325-galactic-positioning-system-nasa.html

地球の上で自分の居場所を知ること以上に、宇宙で宇宙船が自機の位置を把握できることは重要です。特に、地球から遠く離れた星を目指す宇宙船や、何らかの原因で地球からの電波を受信できなくなってしまった宇宙船でも、自分だけで今の位置を知ることができるようになれば、目的地を正確に目指したり、地球からの誘導なしでも地球へと帰還したりすることが可能になります。

その実現を目指してNASAが研究開発を進めているGalactic Positioning Systemは、現在までに1600個が見つかっているパルサーの中から複数の電波を観測・解析することで、三角測量により自機が宇宙のどのあたりにいるのかを割り出すためのシステムです。パルサーは数ミリ秒から数秒という周期でパルス状の可視光線・電波・X線を放っている天体で、その周期が極めて正確に保たれていることが知られています。


NASAはこのパルサーからの信号をX線望遠鏡「NICER(Neutron star Interior Composition Explorer)」で観測して位置を割り出す「SEXTANT(Station Explorer for X-Ray Timing and Navigation)」プログラムを進めています。


実際にNICERを国際宇宙ステーション(ISS)に装着して行われた2017年11月の実験では、時速約28万kmという高速で移動するISSの位置をわずか7kmという精度で特定することに成功しています。これを言い換えると、時速約2万7600km・秒速7.6kmで飛ぶISSにとって7kmはわずか0.9秒で通り過ぎてしまう距離となり、いかに宇宙版GPSの精度が高いかが感じられるはず。NASAでは今後、さらに精度を高めて「1km」をターゲットにすることを目指しているとのこと。


位置特定の際には、ミリ秒周期で電波を発している4つのパルサーが用いられます。そのうち3つは位置測定用に用いられ、残る1つを使ってNICER内部の時計のキャリブレーションを行うことで、他の3つのパルサーを適切に観測していることを確認するようになっているとのこと。

NASAの科学者、Zaven Arzoumanian氏によるとこのシステムで正確な位置を割り出すことができるようになると、今後の惑星探査の際に従来とは比べものにならないほど正確な宇宙船の操作が可能になります。従来の技術では不可能だった、遠く離れた恒星の周りを公転する惑星の、さらにその月(衛星)を周回する軌道に探査機を送りこむという、まさに「針の穴に糸を通す」ような操縦が可能になるとのこと。

また、宇宙船が自ら位置を把握できるようになることで、宇宙飛行士を必要としない「ロボット宇宙船」が地球からの援助なしに正確に目的地へと向かうことも可能になるとのこと。原理としては単純といえる「宇宙GPS」または「深宇宙GPS」ですが、技術開発によりようやく広大な宇宙でも実用化が視野に入る段階へと到達したようです。

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in ハードウェア,   サイエンス, Posted by darkhorse_log

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