サイエンス

幸せに慣れて鈍感になってしまう「快楽適応」を避けるためにすべきこと

by Sarah Jane

進学・就職・結婚など、人生で起こるさまざまな出来事によって大きな幸せを感じても、人は徐々にその幸せに慣れてしまうもの。そして「自分は幸せではない」と考え別の幸せを探し始め、終わりのない幸福の追求が行われることもあります。このような人の状態は心理学的にも認められるところであり、これまでの研究から「幸福に慣れる速度を遅めて、出来事から幸福を感じ続ける方法」も示されています。

Your Brain Is Wired to Suck the Joy Out of Good News
https://medium.com/s/thenewnew/your-brain-is-wired-to-suck-the-joy-out-of-good-news-f8b06aba1db8

これまでに行われた研究で、新婚のわくわくは2年で消えてしまうことや、新しい職についた時の喜びは1年で消えてしまうことが示されています。どんなに幸福を感じても人は次第に幸福に慣れてしまい、新たな変化を求めるものですが、心理学者はこの現象を「快楽適応」あるいは「ヘドニック・トレッドミル」と呼んでいます。トレッドミルはランニングマシンのことで、これはつまり、「人は常に幸福に向かって走るものの、決してゴールには到達しない」という状態を表しています。

よい出来事は人の内面にインパクトを与えますが、快楽適応はこのような過度な刺激を避けるための防御メカニズムだと考えられています。人を平常状態に戻すことから、「心理学的な免疫システム」と呼ばれることもあるとのこと。

しかし、快楽適応によって「間違った人と結婚してしまったのではないか」「私にとっていいキャリアではないのではないか」といった考えが生まれることも少なくなく、快楽適応は人にとっていい効果ばかりを生み出すものではありません。

by Vera Arsic

快楽適応のネガティブな側面を避けるためには、「トレッドミルの速度を遅くする」という方法が考えられます。これは2005年にKen Sheldon氏、Sonja Lyubomirsky氏、David Schkade氏という3人の研究者が発表した(PDFファイル)論文で示されたもの。他の研究者と協力し、幸福の低下速度を落とす「快楽適応モデル(HAP)」を開発したSheldon氏によると、幸福を持ち続けるカギは「感謝」と「変化」にあるとのこと。

起こった事を意識して味わい、感謝の気持ちを持つことによって、幸福の出どころに注意を向け、より幸福を長続きさせることが可能になるとSheldon氏は説明。旅行が好きな人であれば、「奥さんとこの旅行に来られて本当にうれしい。素晴らしい結婚ができたことに感謝している!」と思うことで、「今以上の幸福」を求める心や嫉妬心が育たないようにできるそうです。

幸福である最中に感謝の心を持つのは容易ですが、ネガティブな気持ちが生まれ始めた時には難しいもの。しかし、そんな時こそ感謝の心を持つことがより重要になるため、定期的に「感謝すべきであること」を思い出す必要があります。悪いことが良いことを上回っていると感じる時でも、「例え余分に働く必要があったとしても、昇進とともに給与が上がってうれしい」「例え高額な家のメンテナンス費が必要でも、うるさい主人から自由になれてうれしい」といったように、自分に言い聞かせることが重要になります。

by lechenie-narkomanii

また、感謝とは別のもう1つの方法として「変化」が挙げられています。これは、脳が1つのことに慣れてしまわないように、毎日、複数のポジティブな出来事を記憶していくというもの。人生の大きなイベントが過ぎ去った後は、「新しい職場の友人をランチに誘う」「家を再アレンジする」「近所を探索する」「新しいレストランを試す」など、そのイベントから伸びる枝葉のような小さなイベントに目を向けることが快楽適応に対抗する手段になります。「さまざまなことを経験すると、それらはより記憶に残るようになり、自分の人生を判断するときの要素として使われるようになります」とSheldon氏は述べています。

ただし、「感謝」や「変化」といった要素は、どんな時でも、誰に対しても有効なものではありません。上記2つの方法が効果をなさない場合はポンペウ・ファブラ大学の心理学者であるJordi Quoidbach氏が提唱する方法を試してみるのもアリ。Quoidbach氏は、「よいことがありすぎること」は人を鈍くさせるとして、「自分を幸せにすること」を断つことを主張しています。これはつまり、「常にチョコレートを手にしていれば、チョコレートはご褒美でなくなる」ことから、チョコレートを断つことで再びチョコレートに対して「ご褒美」という感覚を持つようにするわけです。

by pixel2013

また、カーネギーメロン大学のマーケティング准教授である Jeff Galak氏は、経験にセンチメンタルな価値を付けることが快楽適応の対策になると述べています。センチメント(感傷)は時を経るごとに安定していくので、新しいものを求める心を遠ざけることが可能とのこと。また、カリフォルニア大学アーバイン校の研究者たちは、ポジティブな経験を他人に話すことでも、その経験から感じる幸福を引き延ばすことができるとしています。

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in サイエンス, Posted by darkhorse_log

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