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「幸福」よりも重要なのは困難に負けない「回復力」であるとする考え方

by Alan Levine

「幸福」という言葉は頻繁にメディアに登場し、名門イェール大学の講義としても扱われる大きな関心を集めると同時に、ビジネスとしても発展しています。しかし、幸福よりも重要なのは「困難を克服する力」や「扱いづらい感情を扱う力」といった「レジリエンス(回復力)」であるとする考え方が主張されるようになってきています。

Resilience is the new happiness — Quartz
https://qz.com/1289236/resilience-is-the-new-happiness/

心理学でいうレジリエンス(回復力)とは脆弱(ぜいじゃく)性の対になる概念であり、「精神的回復力」「抵抗力」「耐久力」とも記される、自発的治癒力のこと。Microsoftを初めとする企業の重役のコンサルタントを務める心理学者のAnna Rowley氏は、コンサルティングにおいて「幸福(happiness)」という言葉を避け、「回復(resilience)」という言葉を使うようにしているといいます。「幸福」という言葉は「成功とは何か」という考えに混乱を生み出しますが、「回復」はテクノロジーに変化をもたらし、経済を成長させる重要なスキルとなるとRowley氏は考えています。「心地よさ」はいいことではあるものの、戦力にはなりません。しかし、困難を乗り越えたり苦境から回復する力は、「心地よさ」を得られる機会を増やします。「回復」は非常に実用的なのです。


喜びは不快や苦痛と相対関係にあるものであり、人間は常に幸福ではいられません。自分が成功していない時であれば、自分自身を救えるように、人はまず強さや耐える心を学ぶ必要があります。

回復する力は生まれ持った「才能」のたぐいではなく、後天的に身につけることが可能。メリーランド州のシルバースプリンでは、5年生の子どもたちが「Resilience Builder Program(回復力育成プログラム)」というプログラムに参加するようになっていて、心理学者のもとで子どもたちはストレス・マネージメントやヨガや芝居、物語を話すことによって情緒的な問題を解決する方法などを学んでいきます。心理学者のMary Alvord氏は「子どもたちが『自分には物事を変える力がある』と知ることが重要なのです。私たちは人生の全てをコントロールできるわけではありませんが、多くの側面をコントロールすることができるのですから」と語っています。

by Hamish Darby

同様に、子どもたちに回復力を身につけさせるワークショップを開くBetty Nieves氏は、感情の扱い方を子どもたちに教えると共に、「マインドフルな時間」を持たせることの重要性を説いています。マインドフルな時間とは、子どもたちが立ち止まり、内省し、感情をシェアするための時間のこと。マインドフルな時間を過ごすことで、子どもたちは困難な感情から離れやすく、そしてすべきことに集中しやすくなるそうです。

回復力を身につけることは大人にとっても重要です。ウィスコンシン大学マディソン校Center for Healthy Mindsの研究者らが発表した研究によると、2週間ほど「慈悲の瞑想」を続けた人は苦しみに対面した時の回復力が大きくなるとのこと。苦しみがあった時に自分を哀れむのではなく、物事を批判的に見ずに、慈悲の気持ちで対応することが回復力につながるそうです。

Training compassion ‘muscle’ may boost brain’s resilience to others’ suffering
https://news.wisc.edu/training-compassion-muscle-may-boost-brains-resilience-to-others-suffering/

ここで行われた感謝の瞑想は、毎日30分、自分自身や他人の苦しみについて視覚的に想像し、自分が争っている人について考えるというもの。このとき、瞑想を行っている人は争っている相手に対して自分が抱いている感情をジャッジせず、ただ感情を受け止め、同時に相手の幸福を願います。2週間後に被験者は「ニュートラルな写真」と死につつある子どもやヤケドの被害者といった「苦しみの写真」の両方を見せられ、脳スキャンが行われました。すると比較グループに比べて慈悲の瞑想を行ったグループは苦しみの写真を見せられている間の扁桃核・島皮質・眼窩前頭皮質の活動が少なく、ただ穏やかになっただけでなく写真に写っているものに対して同情的であったことが示されました。比較グループは苦しんでいる人の写真に対して「本当に苦しんでるの?演技でしょ?」というような見方をする傾向があったとのこと。

by Natalia Figueredo

研究者らは、「共感・同情する心は筋肉のようなもので、発達させることができます。そして同情する心によって人々は回復力を身につけることができ、より大きな課題を乗り越えることができるようになります」という考えを示しています。医師や弁護士など、人を助ける職業についている人にとって、この能力は非常に重要だといえます。

また、リーダーシップ・コーチ・プログラムを運営するJesse Sostrin氏は、回復力が問題解決能力や体、精神、イノベーションなど、多くの物事に影響をもたらすことを主張。人生に困難はつきものであり、失敗しない人はいません。人を助ける職業につく人だけではなく、誰にとっても回復力は重要だというわけです。

アフガニスタンで両足を失い義足を使うHari Budha Magar氏は、2019年にエレベストへの登山を予定しています。両足を失った後は何をすればいいかわからなくなったと語るMagar氏ですが、2018年現在は「私の才能は足ではなく心にある」「そこまで多くを失ったわけではない」と語るまでになっています。「手すりや車いすに頼る必要があるし、バスルームの扉は大きくしなければなりませんでした」「でも予想する方法でうまくいかなければ、別の方法を見つければいいんです」と語るMagar氏のあり方こそが、「回復力」の現れと言えます。

Good morning from Breckenridge, Colorado, USA PhotoCredit:#garyhumphery #HariBudhaMagar #ConqueringDreams pic.twitter.com/llQWPUrKVh

— Hari Budha Magar (@Hari_BudhaMagar)

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in メモ, Posted by darkhorse_log

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