サイエンス

「他人のためにお金を使うこと」は血圧を下げ運動や食事と同じくらい健康にインパクトを与える

by Daria Shevtsova

これまでに行われてきた研究で、自分のためではなく他人のためにお金を使うことは、その人の血圧を下げるのに加え、幸福感を増加させると示されています。また、他人を支援することは長寿にも関連しているとのことで良いことづくめなわけですが、「人を支援する」方法には注意も必要だと心理学と哲学の専門家であるFrank Martela氏が解説しています。

Exercise, Eat Well, Help Others: Altruism's Surprisingly Strong Health Impact - Scientific American Blog Network
https://blogs.scientificamerican.com/observations/exercise-eat-well-help-others-altruisms-surprisingly-strong-health-impact/

カナダのブリティッシュコロンビア大学が行った研究では、高血圧を患う高齢被験者に毎週40ドルを3週間連続で渡し、1つのグループには「お金を自分自身のために使ってください」と、もう1つのグループには「お金を誰か他人のために使ってください」と伝えました。

3週間後、研究者が被験者の血圧を測定したところ、他人のためにお金を使った人は、自分のためにお金を使った人に比べて血圧が著しく減少していることが判明しました。この時の血圧減少のインパクトは、健康的な食事を行ったり、頻繁にエクササイズを行った時のそれと同様だったとのこと。

また、2003年に行われた別の研究では、「社会的サポートを与えること」と「社会的サポートを受け取ること」が高齢の被験者に与える影響が比較されました。研究者は「社会的サポートを受け取ること」が本人たちにいい影響を与えると仮説を立てていたのですが、実験が行われたところ、その後5年の死亡率によい影響を与え、寿命が長くするのは「社会的サポートを与えること」であると判明。友人・親類・隣人に手段的支援を送っている人は、配偶者に感情的支援を送っている人と共に、研究終了時まで生きながらえている確率が高かったそうです。この傾向は、健康やメンタルヘルス、性格、結婚の有無といった要素を考慮しても変わりませんでした。

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この他にも、定期的なボランティアが寿命に影響を与えるとする研究結果も発表されています。デトロイト在住の846人を対象に行った2013年の研究で、ストレスが大きな出来事が発生した場合、その前年に他人をサポート支援していた人の死亡率は、前年に誰かを支援しなかった人に比べて低いということが示されているため、「他人を助けること」はその人をストレスから守ってくれるのだと考えられています。愛する人の死を迎えるのは辛いことですが、配偶者の死の前に積極的なサポートを行った人は、寿命が長くなる傾向も報告されています。

さらに、学生を被験者とした研究で、「同義語を当てる」というゲームを被験者にプレイしてもらう際に、一方のグループにだけ「正解すると国連の飢餓撲滅のためのプログラムに寄付が行われる」と告げたところ、該当グループの被験者はゲーム体験をよりポジティブなものに感じ「意味のある経験だった」と答えたとのこと。他人を助けることは寿命という部分だけでなく、「幸福感」にもよい影響を与えるといえます。冒頭と同じく「他人もしくは自分のためにお金を使うこと」の影響を比較した研究で、他人のためにお金を使うと幸福感が増すと示されたこともあります。脳神経科学の研究では、チャリティに寄付を行うと脳の報酬系が活性化すると報告されました。

by Oleg Magni

ただし、他人の幸福に集中しすぎると自分のニーズがなおざりになってしまいがちだという点には注意すべき。家族や社会問題に献身的になるあまり、自分の幸福を犠牲にしてしまうというケースも少なくありません。他人を支援するという行為は自分で意志決定し、戦略的に行う必要があると社会的寄付行為の専門家であるAdam Grant氏は述べています。人が助けを求めた時に「相手が誰であっても」「助けさせられる」のではなく、「いつ」「どのように」助けるのかを自分で決定することが大切とのこと。求められる支援に対して「ノー」といえるようになることで、他人を助けることについての自発的なモチベーションが生まれ、自分の関心があることについて支援が行えるようになるとのことです。

「自己犠牲」か「自己中心」かという偽の二分論で考えるのではなく、バランスを見つけることが大切です。「個人主義と利己心の時代において、このバランスを見つけることとはすなわち、自分の周囲の人々を支援するよい方法をたえず探し続けることにあります」とMartela氏は述べました。

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