1500億時間相当の心拍データを分析してわかった健康との関連とは?
by Designecologist
世界中で使われる健康管理デバイス「Fitbit」はこれまでに数千万人から1500億時間に相当する心拍データを集めており、そのデータを年齢・性別・国籍・体重・運動レベルなどと分析することで、Fitbitの研究者たちは心拍が健康とどのように関係しているのかを明らかにしようとしています。作家でコラムニストのデイビッド・ポーグさんが、これまでに集められた膨大なデータから判明した「心拍と健康との関係」についてつづっています。
Fitbit heart data reveals its secrets [Video]
https://finance.yahoo.com/news/exclusive-fitbits-150-billion-hours-heart-data-reveals-secrets-human-health-133124215.html
これまでに行われた科学研究から、安静時心拍数(RHR)は、早期の死を予測する手がかりになるということが示されています。RHRが80の人は、RHRが50以下の人と比べて心疾患になる確率が2倍に上るとのこと。また、RHRが90以上になると、その確率は3倍に膨れあがるそうです。糖尿病との関連性も確認されており、中国の研究では心拍数が毎分10拍増加するごとに後に糖尿病を発症するリスクが23%高くなることが示されています。
RHRは「低いほどいい」といわれており、一般的には1分あたり60~100拍ほどですが、運動によって低くすることが可能。ただし、運動以外にも、年齢・性別・感情状態・ストレス・食事・水分レベルなどの影響を受けます。
ということで、まず、男女別でRHRと年齢の関係を図示するとこう。縦軸がBPM(1分間の脈数)で横軸が年齢を表しており、基本的に男性に比べて女性のBPMが高めであることがわかります。
FitbitのデータサイエンスディレクターであるHulya Emir-Farinas氏は女性のBPMが高い理由について、女性の方が心臓が小さく、血液を循環させるためには多く働く必要があることを説明しています。
また、男女ともに中年に近づくにつれてRHRが上がり、その後に下がるという傾向がありますが、このような傾向はFitbitが調査を行うまで観察されてこなかったとのこと。上記の理由ははっきりしていないのですが、子育て期間中は忙しくてジャンクフードを食べたり運動できなかったりというライフスタイルになることが一因でないかとみられています。もちろん、中年になり自然と代謝が衰え、筋肉が弱くなることで心臓に入る血液が減ることで、より心臓が働く必要が出てきてRHRが上昇することも考えられます。
BPM(縦軸)とBMI(ボディマス指数/横軸)との関係はこんな感じ。BMIが低すぎても高すぎてもBPMの増加がみられ、女性であれば20前後、男性であれば23前後のBMIで最も効率的に体が動くということが示されています。
BPM(縦軸)と一週間あたりの運動時間(横軸)の関係をグラフにしたものがこれ。基本的に運動時間が増えるほどBPMが減少する関係にありますが、週当たりの運動時間が200分を超えたあたりから効果に大きな差がみられなくなっています。つまり、やみくもに運動時間を増やさなくとも、週200分程度の運動を心がければよいということ。
年齢別でRHRと運動頻度の変化を見るとこんな感じ。年齢が若いほど、「運動によるRHR減少」という利益を受けやすいことがわかります。ただし、「高齢だと運動してもRHRが減少しない」ということはなく、どの年齢でも運動の恩恵は受けられる模様。
BPM(縦軸)と睡眠時間(横軸)の関係をグラフ化したものがこれ。BMIと同じで、睡眠時間は少なすぎても多すぎてもBPMを上昇させ、ちょうどいい程度の「スイートスポット」が存在します。「8時間睡眠」という言葉に反し、「心臓の健康」という側面から見た時のスイートスポットは7.25時間とのこと。
世界55カ国のFitbit着用者のデータをBPM(縦軸)と活動レベル(横軸)でマッピングしたグラフがこれ。興味深いことに、同じ年齢・性別・運動レベルでも国によってBPMに差があることが示されました。1日の活動時間が55分でもコスタリカ人のRHRは62拍、インド人のRHRは70拍です。
RHRは運動以外にもさまざまな要素の影響を受けるため、栄養状態・BMI・遺伝子・習慣・医療といったものの違いから差が生まれているのだろうとEmir-Farinas氏は考えています。
また、顕著な点としては、ヨーロッパ諸国は他国に比べて全体的に運動レベルが多いことが示されていますが、これは都市設計上、日常生活で運動が余儀なくされているためだとのこと。またカタールは運動レベルが低いにも関わらずRHRが少なくなっているのは、血圧や心臓の薬が使用されていることが関係していると研究者はみています。
Yahoo!ファイナンスのコラムニストであるデイビッド・ポーグさんが、自分のデータと妻のニッキーさんのデータを比較してみたグラフが以下のもの。ポーグさんは全くマラソンをしませんが、ニッキーさんはマラソン大会に過去16回出場し、「砂糖や脂肪分を最後に摂取したのは幼稚園の時だろう」といわれるほどに健康に気を遣っている人物。
グラフから、一日の歩数・運動時間・ノンレム睡眠で優れた結果を出すニッキーさんの方がRHRが低いということが示されています。一方で、ポーグさんは睡眠時間をしっかりととれていることがFitbitのデータで示されました。
また、ポーグさんの生活の各イベントでBPMがどう変化するのかを示したものが以下。ランニングマシン(トレッドミル)による定期的なトレーニングを始めたことで、全体的には心拍数は下がったとのこと。そして、腎臓結石が心拍数を増加させること、クリスマス・感謝祭・家族の集まりといった休日のイベントはリラックスさせるものと思いきやストレスを増加させ心拍数を上げる要素になっているということが判明しています。
・関連記事
呼吸で心拍変動(HRV)をコントロールするとストレスに強くなる - GIGAZINE
定期的なエクササイズの頻度によって動脈硬化と心臓発作のリスクに違いが現れることが研究で確認される - GIGAZINE
「運動を始めるには遅すぎる」ことはなく、数十歳以上若い筋肉を保てることが明らかに - GIGAZINE
「自分はよく運動している」と思い込むことで実際に人は健康になる - GIGAZINE
「運動後のストレッチ」の効果は私たちが想像するものとは違う、減量や健康のためにストレッチするべき理由とは? - GIGAZINE
「運動はウォーキングで十分なのか?」という質問に各分野の専門家5人が回答するとこうなる - GIGAZINE
「適度な運動」の「適度」がどのくらいなのか研究で判明 - GIGAZINE
・関連コンテンツ