「運動はウォーキングで十分なのか?」という質問に各分野の専門家5人が回答するとこうなる
by Hugues de BUYER-MIMEURE
健康のために行う運動には、「有酸素運動」がいいという見方のほか「筋トレが必要である」とする考え、「やりすぎはよくない」というものなど、さまざまな意見があります。「適度な運動」の「適度」とはいったいどの程度なのか?と謎が深まるなかで、スポーツ科学・理学療法士・作業療法士・バイオメカニスト・健康科学者という5人の専門家が「運動はウォーキングで十分なのか?」という質問に答えています。
We asked five experts: is walking enough exercise?
https://theconversation.com/we-asked-five-experts-is-walking-enough-exercise-94991
◆1:スポーツ科学者
いいえ:もちろん、何もしないよりはウォーキングを行う方がよいのですが、健康の利益を最大化するにはランニング・サイクリング・水泳のような有酸素運動と筋力強化エクササイズの両方を行うべきだというのが、スポーツ科学者であるJackson Fyfe氏の意見。人は年齢を負うごとに筋力がなくなり骨密度も落ちてきますが、これらを改善することで、日常的なタスクをより楽に行えるようになり、転倒やそれに伴うケガのリスクを下げることが可能です。
Fyfe氏は「ウォーキングのみの運動は多くの人にとって十分ではない」と考えており、定期的に行う運動プログラムとして、適度あるいは強度の高い有酸素運動と、筋力トレーニングの両方を行うことを推奨しています。
◆2:理学療法士
はい:理学療法士のCarol Maher氏は、時速5kmほどの適度なペースでウォーキングを行うことは、心臓疾患・肥満・2型糖尿病・うつ・骨粗しょう症・がんなどさまざまなリスクを減らすことができ、健康上の利益があると説明しています。Maher氏は10分以上のウォーキングを行うことを推奨しており、きびきび歩いたり山登りをするなど強度の強いものであればさらに利益を大きくできると述べました。
by Amanda Perez
◆3:作業療法士
はい:作業療法士のJulie Netto氏は、ウォーキングの利点を「自分に合わせてゴールを設定できること」だとしています。歩くペースや強度、距離、スティックを使うかどうか、などによってウォーキングの強度は強くも弱くもなり、簡便性を重視したいのであればトレッドミルを使ってもOK。これまでの研究でウォーキングにはうつ症状を軽くするなどの健康上のメリットが示されています。コミュニティの人々や、ハイキング仲間など、人々と交流するきっかけになるのもウォーキングの利点です。
◆4:バイオメカニスト
はい:「時速4~6kmのウォーキングを1日30分~1時間行うことができれば、ウォーキングは十分な運動になる」と具体的な数字を示したのがバイオメカニストのKevin Netto氏。Netto氏はウォーキングの利点について、「慢性病から体を守ってくれること」「他のエクササイズに比べてケガのリスクが少ないこと」「無料であること」「家族・友だち・ペットを巻き込めること」を挙げています。家族や友だちを巻き込めることは、運動を持続させる上で大きなモチベーションになるとNetto氏は述べました。
室内環境でウォーキングが行う必要がある人・行いたい人は、仲間を見つけてショッピングセンターを歩くのもアリ。重要なのは、人にとっての最良の薬である「運動」を楽しむことだとNetto氏は主張しています。
by hao ji
◆5:健康科学者
はい:調査によると、オーストラリアに住む成人は、1日あたり30分ほどの時間を「歩く」ことに費やしているといいます。これは人々の1日における運動の40%を占めますが、かつてシドニーの人々は1日に4~6時間も歩いていたとのことなので、運動量は激減していると言えます。
健康科学者のTim Olds氏は、ウォーキングによって健康上の利益は手に入るとしていますが、一方でランニングなど強度の高い運動の方が短時間で行え時間の節約になるとも示しています。死のリスクを20%減らそうとした時に、ウォーキングなら1日あたり56分も行うことが必要ですが、ランニングなら16分で同じメリットを得られるというのがOlds氏の見方です。
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