29日間のハイキング生活で体重・BMI・血糖値・代謝効率などはどう変化するのか?という実際の記録
by Micah. H
「座りっぱなしの生活」が健康や寿命に与えることなどから、健康的な生活を送るために「適度な運動」が必要だというのはもはや常識と言えます。しかし、実際に運動が体に与える影響というのは分かりづらいもの。そこで、運動が体に与える影響を可視化すべく、29日間、1日8~10時間のハイキングを大自然の中で行い、ハイキングの前後で体重・体脂肪・血糖値・ホルモン値などがどのように変化するのかを観察したレポートが公開されています。
This Is What Happens to Your Body on a Thru-Hike | Outside Online
https://www.outsideonline.com/2125031/what-happens-your-body-thru-hike
Kyle Boelteさんは35歳の男性。身長は175cmで、ハイキングを開始する前の体重は68kgでした。多くの会社員と同様に平日はコンピューターの前に座って作業することが多いそうですが、週に8kmほどのジョギングを2回ほど行い、週1で山に自転車で走りにいくという生活だったとのことで、もともと日常的に運動は行っていた様子。
Boelteさんは妻と2人で、年間150人ほどしかクリアできないという782kmのThe Colorado Trail Foundationのハイキングに挑戦。ハイキングは29日かけて行われ、多い日は1日に40.2km、少ない日は24.1km、平均して1日28.9kmの距離を歩いたそうです。1日の歩行時間は8~10時間だったとのこと。
ハイキングを行う前にBoelteさんは血液検査を含めた身体検査を行っており、782kmのハイキングが29日間でBoelteさんの体にどのように変えたのか、「体重・BMI」「安静時の心拍数」「血糖値」「コルチゾール値とテストステロン値」「代謝効率」という5項目についてまとめられています。
◆体重・BMI
by Franck Mahon
Boelteさんの体重は68kgが63.5kgに、肥満度を表すBMI値は22.2から20.7に、体脂肪率は13%から5%に変化し、アスリートのような引き締まった体になったとのこと。なお、測定はタニタのデジタル体重計で行われました。
◆安静時の心拍数
by Marianne Lopez
安静時の心拍数は心臓の強さを測る目安となるもので、アスリートの平均は40~60bpmと言われています。心臓が強くなるほど一拍で送りだす血液の効率が高くなるので心拍数が減少しますが、Boelteさんの安静時心拍数はハイキングを行う前後で48bpmから40bpmへと変化。心臓が鍛えられ、ハイキング前と同じ量のジョギングをより容易に行えるようになったそうです。
◆血糖値
by Edward Conde
赤血球中のヘモグロビンのうちどれくらいの割合が糖と結合しているかを示す「ヘモグロビンA1c」を測定したところ、ハイキング前のBoelteさんは5.9%だったのに対して、ハイキング後は5.6%に。5.9%という数字は「正常」とされる値よりも高く、「糖尿病前症」にあたるため医師が懸念するところだったそうですが、ハイキングの後には正常の範囲内である5.6%にまで下がるという結果になりました。
ヘモグロビンA1cが高くなる原因は遺伝のほか、生活習慣にもあると言われています。Boelteさんは平常時でも1日40~60分の運動を行っていましたが、1日の大半は座っての作業で、パスタやピーナッツバターやジャムのサンドイッチ、エネルギーバーなどをよく摂取していたとのこと。
ハイカーの多くはハイキングの最中にマッシュポテトやスニッカーズバーといった高炭水化物の食べ物を摂取しますが、Boelteさんはナッツやジャーキー、ドライフルーツを中心とした食事をし、高炭水化物の食事は1日1回にしていました。炭水化物少なめの食生活と、食後を含めて1日中歩き回るというライフスタイルのおかげで、Boelteさんの血糖値は正常と呼べるレベルまで下がったわけです。
◆コルチゾール値とテストステロン値
by Sherif Salama
コルチゾールは炭水化物・脂肪・タンパク質の代謝を制御する人体にとって必須のホルモンですが、ストレスが多いとコルチゾールのレベルがあがることでも知られています。ハイキングを行う前、Boelteさんのコルチゾール値は正常値の範囲内ではあるものの高い値でしたが、ハイキングを終えたあとは数値が40%も下がっていたとのこと。
自然の中で過ごすことはストレスを減らすという研究結果も発表されており、運動中心の生活だけでなく、大自然の中でハイキングを行うという環境もストレス減少に役立ったのかもしれません。
また、テストステロンは男性ホルモンの一種で、エネルギーやリビドー、筋肉の発達、攻撃性といったものを制御します。Boelteさんのテストステロン値はハイキングによって2倍にも増加。原因は不明ですが、「18kgもの荷物を1日10時間も運び続けたためか、いつもの生活を離れて冒険をしてたためによるものだろう」とBoelteさんは推測しています。
◆代謝効率
by martin.mutch
人間のエネルギー源となるのは炭水化物と脂肪です。穏やかな運動をしている時、人間のエネルギー源として使われるのは主に脂肪で、運動が激しくなるにつれて炭水化物が使われていきます。そして、標準的な人は肝臓に2500kcalの炭水化物と5万kcalの脂肪を貯蓄していると言われます。
これまでの常識では、エネルギー源として重要なのは脂肪よりも炭水化物と言われてきました。しかし、研究が進むにつれ、アスリートたちはこれまで信じられてきたよりも多くの脂肪を燃やしていることが判明してきています。このことから導けるのは、運動量が多い人ほど脂肪の燃焼効率が上がるということ。ということで、Boelteさんは自身の体における脂肪と炭水化物の燃焼効率がハイキングの前後でどのように変化するのかを観察しました。
ハイキングを行う前のBoelteさんのエネルギー燃焼比率は、心拍数が112bpm、つまり穏やかなエクササイズをしている時には脂肪と炭水化物で66:34でした。少し運動を激しくして心拍数を145bpmにまで上げると、比率は52:48に。さらにペースを上げて心拍数を153bpmにすると脂肪と炭水化物の燃焼量が同じになったとのこと。
しかし、ハイキングを行った後は、心拍数が110bpmの時の脂肪と炭水化物を燃焼する比率は91:9、心拍数が145bpmの時が70:30、そして心拍数が148bpmの時に初めて脂肪と炭水化物の燃焼比率が同じになったとのこと。これはつまり、1カ月間のハイキング生活によって、Boelteさんの体は脂肪の燃焼効率が格段に上がったということを意味します。
29日間という短期間の間でBoelteさんの体には大きな変化が現れました。ハイキングの効果を持続させるべく、Boelteさんは1日を通してできるだけ歩くことにしているそうです。2012年に「食後に歩くことは血糖値を下げるのに効果がある」という研究結果が発表されていることから、特に食後に歩くことを意識している、とBoelteさん。そのかいあってか、ハイキング終了から2カ月たった時点でも体重や体脂肪は安定しているとのことです。
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