1000馬力をたたき出す「芸術作品」、アストンマーティンのハイパーカー「ヴァルキリー」のV12エンジンが公開
アストンマーティンとレッドブル・レーシングとのパートナーシップの下で開発されているハイパーカー「ヴァルキリー」に搭載されるV12エンジンの姿が初めて公開されました。排気量6.5リッターの自然吸気V12エンジンは1万500回転で1000馬力を絞り出すハイパフォーマンスエンジンでありながら重量がわずか200kgを少しオーバーするだけという、最高の技術が結晶した「芸術品」と呼べるもの。公開されたムービーでは、V12エンジンが咆哮する快音を聴くことができます。
Hear The Future Of The Supercar At 11,000rpm: The Aston Martin Valkyrie's V12 - Carfection - YouTube
ヴァルキリーは、アストンマーティンがレッドブル・レーシングとともに開発を進めている超高性能ハイパーカー。「空力の鬼才」との異名を持つレーシングカーデザイナー、エイドリアン・ニューウェイの手によるヴァルキリーは、約1トン程度の軽量級ボディに1000馬力を発揮する6.5リッター・V12エンジンを搭載します。価格はおよそ200万~250万ポンド(約3億~3億7500万円)とみられ、生産台数は世界限定150台。日本でも11台の受注を得ているとのこと。
車体を後方から見ると、こんなふうに車体の底面がぽっかりと開けられています。これは、車体底面に空気を流すことで車体を路面に押し付ける力「ダウンフォース」を発生させるため。デザイナーのニューウェイがF1マシンなどで培ったノウハウがつぎ込まれています。
ヴァルキリーは2017年10月、日本で内外装のお披露目が行われていました。
アストンマーティン・ヴァルキリー ビジュアル42枚 【画像・写真】 - webCG
https://www.webcg.net/articles/gallery/37262
そんなヴァルキリーに搭載されるのが、このV12エンジン。レーシングエンジンの名門である「コスワース」が開発したエンジンは、ターボチャージャーを使わない自然吸気エンジンながら1000馬力という出力をレブリミットギリギリの10500rpmで発揮。実車では、この超高性能エンジンをミッドシップに搭載し、さらに電気モーターを使ったハイブリッドシステムがアシストする構成となる予定。
エンジン単体の重量は206kgとのことで、シリンダーが12本もある大きなV12エンジンでこの重量は驚異的というほかありません。ヴァルキリーは軽量化のためにこのエンジンを車体の構造材としても使用しており、その造りはまさにレーシングカーそのもの。
この人物は、コスワースのマネージングディレクターであるブルース・ウッド氏。ヴァルキリーのエンジンに求められるパワーや重量、そしてロードゴーイングカーとして排ガス規制をクリアすることや高い耐久性など、あらゆる面での高い性能を目指して開発を行ってきました。
コスワースではこのエンジンの開発を始めるにあたり、まずは3気筒のテスト用エンジンで性能追求を進めたとのこと。開発の結果約250馬力に到達した3気筒エンジンを4つ組み合わせることで、出力1000馬力のV12エンジンが誕生。3気筒ずつまとめられるエキマニ(排気管)には巨大な触媒が装着されており、環境面にも配慮した設計になっていることがわかります。
先述のように、このエンジンは車体と一体化されて全ての応力を受けることとなります。エンジン本体には車体の重量そのものや加速・減速にかかる力、コーナリングフォースなど高いストレスがかかるため特殊な設計が求められますが、そのあたりはレーシングエンジンコンストラクターであるコスワースのお家芸。車体とエンジンはこのようなブラケットを介して4本のボルトで結合されます。
エンジンを前方から見たところ。あくまで「ロードカー」のエンジンとして開発されたV12エンジンには、レーシングカーとは異なり「静粛性」が求められます。そのため、通常のレーシングエンジンであれば前側に配置されるカム駆動用のギアセットは、エンジンの後方に移動されています。カム駆動用のギアから出るノイズはエンジンが生み出す騒音の少なくない部分を占めており、そのまま車体に搭載するとシャシーのバルクヘッド(隔壁)で共鳴したギアノイズが車内に飛び込んで充満することになるため。
これはギアボックスにつながるクラッチ部分。超高性能エンジンが生み出す強大なパワーを受け止めるためには、レーシングカー同様の「カーボンクラッチ」が不可欠ですが、カーボンクラッチは「つながり」が唐突すぎるためにロードカーの快適性を確保することができません。そこでアストンマーティンは、異素材のクラッチディスクを採用することで、快適性と高いクラッチ性能を両立させたとのこと。
エンジン出力測定用のエンジンベンチにのせられ、快音をたてて回るV12エンジン。エキマニの一部は、排ガスの熱で赤く発光しています。
澄んだ気持ちの良いエグゾーストノートを出すV12エンジンのパワーを測定する画面には「963HP」、つまり963馬力との表示。この時のエンジン回転数は約9800回転なので、あと700回転分のパワーが上乗せして1000馬力@10500rpmという出力をたたき出します。
徹底したこだわりで作られるヴァルキリーのV12エンジンは、軽量化にも抜かりがありません。吸気系にはカーボンファイバーとアルミハニカムによる軽量・高剛性なパーツが用いられていますが、デザイナーのニューウェイはこの部品に用いる塗料の重さにさえ注文をつけてきたとのこと。結果、通常の仕様では以下のようなクリア塗装で仕上げられますが、オプションで「クリア塗装なし」を選ぶことも可能であるとのこと。その重量差は、わずかに80グラムですが、完璧主義者であるニューウェイの徹底的なこだわりが垣間見えます。
このような技術とこだわり、そして「カネ」が投じられたヴァルキリーを手にできるのは世界中でたった150人だけの幸福なオーナーのみ。日本にも11台がやって来る見込みなので、どこかの街中で遭遇できるのを期待したいところです。
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