サイエンス

抗生物質は摂取からどれぐらいで効果が現れるのか?

by Jernej Furman

病院で診察を受けた結果、抗生物質を処方されることがあります。人によってはなかなか効かないという印象があるかもしれない抗生物質ですが、「人によって」だけではなく、「どんな細菌か」「どんな症状か」「免疫反応はどうか」「いつ飲み始めたか」によっても、その効果が現れるのには違いがあるそうです。

Health Check: I’m taking antibiotics – when will they start working?
https://theconversation.com/health-check-im-taking-antibiotics-when-will-they-start-working-107528


ウエスタンオーストラリア大学のクリスティーン・カーソン氏とティム・イングリス氏によれば、抗生物質は大腸菌やコレラ菌、ブドウ球菌などの「細菌」によって引き起こされる感染症の治療には有効ですが、インフルエンザウイルスやノロウイルスなどの「ウイルス」や、カンジダや白癬の原因である「真菌」には効かないとのこと。また、細菌によって引き起こされる病気であっても、急性中耳炎や副鼻腔炎などには抗生物質はあまり効かないそうです。

抗生物質は大きく分けると、マクロライド系抗生物質キノロン系抗生物質などいろいろな細菌に有効な広域抗生物質と、ベンジルペニシリンのように一部の細菌にのみ有効な狭域抗生物質の2つがあります。いろいろな細菌に効くからとりあえず広域抗生物質を使えばいいというわけではなく、他の細菌へ影響を与えないようにするため、たとえば肺炎レンサ球菌が原因の感染症の時にはベンジルペニシリンが使われたりします。

しかし、抗生物質に対して、細菌が耐性を持つという事例があります。たとえば、淋病の原因となる淋菌は、様々な抗生物質に対しての耐性を獲得したことが知られています。

つまり、抗生物質が効くかどうかは医者がいかに適切な抗生物質を選ぶかが問題となってきます。しかし、「完璧な世界」であれば、患者がどういう人なのか、感染症の性質はどんなものか、感染症を引き起こしている細菌は何か、その細菌に対する抗生物質の働きはどういったものか、といった情報を組み合わせて注意深く処方する抗生物質を選ぶところですが、そのプロセスには2日から4日が必要で、実際には医者の目の前にはすぐにでも治療方法を求める患者がいるという状況があります。プロセスを高速化する試みは行われているものの、まだ有効なものはなく、現状は「最良の推測」の結果での処方となっています。

by MPCA Photos

抗生物質には細菌を殺す殺菌剤と、細菌の増加を食い止める静菌剤がありますが、いずれにしても、抗生物質による治療のゴールは、病気を引き起こしている細菌を身体から追い出すことにあります。ところが、細菌の中には適切な抗生物質が投与されても効果が現れるまで時間がかかる緑膿菌のような細菌がいて、また、抗生物質への防御反応が出ることもあります。

このため、胃薬のように「飲んだらすぐ効果が出る」というわけではなく、症状が長引いていて、まるで抗生物質が効いていないかのように感じるケースがあるようです。

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in サイエンス, Posted by logc_nt

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