メモ

「もはや虫垂炎は手術をせずとも抗生物質で十分治療できる」という研究報告

by Global Panorama

虫垂炎は、大腸の一部である「虫垂」で細菌が増殖して炎症を起こした状態です。虫垂炎は放置すると細菌の増殖が進み、腹膜炎を引き起こして命に関わることも。そのため、虫垂そのものを早急に切除する外科手術処置が虫垂炎治療の主流ですが、「抗生物質の投与」も十分効果的な治療法として見直すべきという実験結果が発表されています。

Five-Year Follow-up of Antibiotic Therapy for Uncomplicated Acute Appendicitis in the APPAC Randomized Clinical Trial | Emergency Medicine | JAMA | JAMA Network
https://jamanetwork.com/journals/jama/article-abstract/2703354


After century of removing appendixes, docs find antibiotics can be enough | Ars Technica
https://arstechnica.com/science/2018/09/after-century-of-removing-appendixes-docs-find-antibiotics-can-be-enough/


虫垂炎の治療では、虫垂や盲腸の切除という外科手術による処置が主に行われています。かつては開腹手術が主流でしたが、技術が発達した現代では、腹部に小さな穴を数カ所開けるだけで可能な腹腔鏡下手術が行われるケースも増えています。


一方で、虫垂炎は細菌の増殖が原因であるため、抗生物質の投与も1つの治療法です。しかし、再発する可能性が高いとして、抗生物質投与のみの処置は比較的初期段階の虫垂炎に限られていました。ただし、抗生物質の投与がどれだけ再発率が高いのか、長期にわたって行われた研究はなかったとのこと。

フィンランドのトゥルク大学病院に勤めるPaulina Salminen氏は、「今や抗生物質もより効果の高いものが開発され、CTスキャンなどによってより正確な診断も可能となったため、外科手術第一という虫垂炎の治療法を見直すべきだ」と主張。「長期にわたって抗生物質による薬物療法を行った場合の虫垂炎再発率」を調べるため、18~60歳の患者530人を対象に、5年間にわたって虫垂炎治療の臨床実験を行いました。

臨床実験では、530人のうち273人が虫垂切除手術を受け、残り257人に抗生物質の点滴と抗菌薬の経口投与を行ったとのこと。その結果、抗生物質投与の治療を受けた患者の虫垂炎再発の累積発生率は、5年間で39.1%だったことが判明しました。つまり、抗生物質投与の治療を受けた患者のうちおよそ6割が外科手術をすることなく虫垂炎を治癒できたというわけです。また、抗生物質を投与された患者で合併症を起こした割合はわずか6.5%だったのに対して、外科手術を受けた患者は、虫垂そのものを切除するため再発はありませんが、24%がその後に合併症を引き起こしたとのこと。

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また、抗生物質を投与された患者の病気休暇はおよそ11日前後だったのに対し、開腹手術を受けた患者の病気休暇はおよそ22日前後ということが判明し、薬物療法は回復までの日数も短く済む可能性があると報告されています。

このことから、Salminen氏率いる研究チームは、抗生物質の投与も外科手術と同様に虫垂炎に対して十分有効な治療法であると論じています。ただし、今回の研究では外科手術と抗生物質による薬物療法でかかる医療費や保険との兼ね合いについては調査されていません。抗生物質による薬物療法を虫垂炎の治療法として評価するためには、システム面に関する研究も今後の課題といえます。

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in メモ,   サイエンス, Posted by log1i_yk

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