経費精算のウソをAIで見抜いて不正な請求をあぶり出すサービスが登場
By CafeCredit.com
会社を運営して売上を上げるためにはさまざまな経費がかかりますが、時には従業員や会社のトップまでもが経費をごまかして「小遣い稼ぎ」をしていることも。そんな、人の目だけでは見抜くことが難しかった不正な経費精算をAI(人工知能)の力を借りて防ぐサービスが登場しています。
Tempted to Expense that Strip Club as a Business Dinner? AI Is Watching - Bloomberg
https://www.bloomberg.com/news/articles/2018-11-14/ai-can-now-catch-lies-on-your-expense-report
海外での不正な経費精算の例では、出張の際に連れて行った愛犬のためのペットホテルの部屋を上司名義で予約したり、自分で通ったヨガ教室の費用を得意先の接待費用として計上したり、1人で見に行ったストリップ劇場の入場料を客先と訪れたステーキハウスの食事代として精算したりするケースなどが存在します。しかし、経理部に提出する申請書類に不備がなく、体裁も整っているとすれば、書面に書かれた内容だけを頼りにおかしな精算を見抜くことは容易ではありません。
そんな経理部の悩みのために提供されているサービスの一つが、カリフォルニアに拠点を置くAppZenです。同社は設立から2年もたたないうちにAmazonやIBM、Salesforceといった大企業にサービスを提供することに成功しており、これまでに合計で4000万ドル(約45億円)もの不正を発見しているとのこと。同社のCEOであるアナント・ケイル氏は「担当者には全ての書類に目を通す時間はありません。我々はAIにその作業を担当させ、人の目では見落としてしまう内容を見つけられるようにします」と述べています。
By chenjack
世界中でさまざまな不正防止や早期発見を支援する公認不正検査士協会(ACFE)の報告書によると、アメリカ国内だけでも2016年1月から2017年10月までの期間で2700件以上の不正が見つかっており、その被害額は70億ドル(約8000億円)にものぼっているとのこと。そのうち14%を占める出張旅費が最も多くの不正が行われている分野で、ウソの領収書を作成するツールFree Online Receipt Makerもその背後で暗躍している模様。このツールを使えば「それらしい」領収書が作れてしまうために、経理担当者が不正を見抜くことが難しくなっています。
AppZenなどAIを使ってその不正を見抜くサービスは、人の手だけではカバーしきれなかった確認作業をAIに担わせることで、精度の高い内容チェックを可能にしています。例えば、出張の際に利用した飛行機のチケット代は、同じ時期の平均的な価格を調べて照らし合わせることで妥当な内容であるかどうかをチェック。精算額が高すぎる場合は、本当は誰か別の人物を同伴させていたか、実は座席をビジネスクラスにアップグレードしたのをごまかしていた、などの内容を調査することが可能になります。
AppZenを利用すると、経理部に回される経費精算書類の全てをチェックすることが可能になるとのこと。AIがさまざまな情報と精算の内容を照合することで内容の妥当性を判断し、内容が怪しいと思われる場合はフラグを立てることで、経理部のスタッフが不正を見抜きやすいようにしています。この仕組みを利用することで、「同僚との昼食」の際に強いお酒「ウオツカ」が含まれていたことや、「得意先とのコーヒータイム」と称してスターバックスで約30万円分のギフトカードを購入していたことなどがあぶり出されたとのことです。
By thethreesisters
アトランタに拠点を置くOversight Systemsも同様のサービスを提供する企業の一つですが、同社によると経費精算のうち30%は何らかの怪しさを含んでいるとのこと。CEOのテレンス・マクロッサン氏は「ウソの経費精算をするために人々が絞り出している知恵には驚かされます」と、人々の涙ぐましい努力について語っています。
巧妙な手口の一つが、プログラミング言語「Python」の販促にかかる費用精算の中で見つかったとのこと。Pythonは言語の名前であると同時に、巨大なニシキヘビの総称でもあるわけですが、マーケティング担当者はPythonの販促アイテムとして生きたニシキヘビを用意。その際に、餌代として1200ドル(約14万円)分の肉の費用が計上されていました。
一見すると「巨大なニシキヘビだから餌代もそれなりにかかるのだろう」と思ってしまいそうな費用項目ですが、実際のニシキヘビは生きている動物だけを食べるという習性があるとのこと。結局、肉の費用はニシキヘビ用ではなく、関係するスタッフが開いたバーベキューパーティーでのステーキ肉の代金として支払われていたものだったことが、AIによって見抜かれてしまったそうです。
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