Amazonが最新技術のテストをマッサージスパになりすまして隠している可能性
by Christian Wiediger
アメリカの放送通信事業の規制監督を行う連邦通信委員会(FCC)に提出された実験の許可申請によると、Amazonは何百もの最先端の無線機器をテストしようとしています。そして、このテストはAmazonがシリコンバレーに所有する3つの施設で極秘裏に行われている可能性がある、とIEEE Spectrumが報じています。IEEE Spectrumによると、Amazonがテストに用いているという3つの施設は、同社の秘密の研究を進める「Amazon Lab126」が所有する2つの建物と、シリコンバレーにあるAmazonの配送センターのひとつで、それらはマッサージスパや地域のコミュニティセンターになりすましているとのことです。
Amazon May Be Hiding Its Plans to Test New Wireless Tech by Masquerading as a Massage Spa - IEEE Spectrum
https://spectrum.ieee.org/tech-talk/telecom/wireless/amazon-may-be-hiding-its-plans-to-test-new-wireless-tech-by-masquerading-as-a-massage-spa
2018年11月19日、共有無線周波数で超高速ワイヤレスブロードバンドを提供することを目的とした新技術の「CBRS」を用いて、Chrome Enterprisesという企業が最大450台もの試作デバイスのテストを行いました。CBRSではFCCが軍用に事前に確保していた3.5GHz帯の無線周波数を用いることで、Wi-Fiよりも高速で信頼性の高い無線通信を実現するというものです。そして、CBRSの高速通信により、オフィスや病院、工場といった場所で新しいIoTアプリケーションが実現可能になるとのこと。
テストでは最大150台の固定ユニットと最大300台の移動ユニットが使用され、クパチーノ・サニーベール・トレイシーという3カ所でそれぞれ試験が行われたそうです。Chrome Enterprisesよりも先にComcastやNokia、Verizonといった大企業もCBRSのテストを行っていますが、IEEE Spectrumは「確認できたFCCにより認可を受けた公共の場でのCBRSのテストの中では、Chrome Enterprisesが行ったものが最大の規模だった」と記しています。
by Joshua Sortino
これほど大規模なテストを行っているにもかかわらず、Chrome Enterprisesについて調べてみると「奇妙なことに紙面上にしか存在しない企業だった」とIEEE Spectrumは記しています。同社の住所はジョージア州の郊外にあるオフィスビル内で、Chrome Enterprisesは2017年に企業の機密保護規則が厳しいデラウェア州で設立されていたそうです。また、Chrome Enterprisesのメールアドレスは無料のYahoo.comアカウントのものとなっています。
しかし、FCCに提出された書類には、Chrome Enterprisesの背後にどのような企業が存在するかのヒントが隠されているそうです。提出書類ではテストの候補地に3つの場所を指定する必要があるのですが、実際に指定した場所でテストを実施する必要はなく、指定場所から半径2km以内でテストを行えばOKというものだそうです。
Chrome Enterprisesが提出書類で指定した3つの場所は、クパチーノ・サニーベール・トレイシーのマッサージスパやコミュニティセンターでした。その各地点から半径2kmの円を描くと、いずれもAmazonの施設が見つかるため、実験はAmazonが行っているのではとIEEE Spectrumは推測しています。
Chrome Enterprisesが提出書類で指定したサニーベールの住所はここ。すぐそばに、Kindle、Fire TV、Echoといった端末を開発したAmazon Lab 126の本社があります。
Chrome Enterprisesが提出書類で指定したクパチーノの住所。「SJC3」と呼ばれるAmazon Lab 126のビルから500メートル以内の距離にあります。
さらに、提出書類で指定したトレイシーの住所がここ。目の前にAmazonの配送センターがあります。Amazonの配送センター内では無数の自動ロボットたちが稼働しているため、無数の移動ユニットや固定ユニットを用いるCBRSのテストにはうってつけと言えそうです。
また、Chrome EnterprisesからFCCに提出された書類は、以前にAmazonがFCCに提出した書類を書いたのと同じワシントンDCの弁護士によって書かれていたとのこと。あるセクションではそのままAmazonの提出書類の内容がコピーされているとのこと。
もしもAmazonがCBRSのテストのためにChrome Enterprisesという企業を作り出し、テストを実施する住所をわざと不正確に記していた場合、FCCは「申請者が意図的に虚偽の声明を出すことを罰する」ことができるため、実験の許可を取り消したり、罰金を科したりすることも可能だそうです。
なお、IEEE SpectrumはFCC、Amazon、Chrome Enterprisesにコメントを求めていますが返答は得られていないそうです。
・関連記事
Amazonはアメリカ郵便公社を私物化している、配達物の約8割がAmazonの荷物だという現状を職員が語る - GIGAZINE
Amazonがレビューで星4以上の高評価な商品だけを取り扱うリアル店舗「Amazon 4-star」をオープン - GIGAZINE
Amazonの5つ星レビューには販売業者がお金を払って書かせたものが存在する - GIGAZINE
実はAmazonは面接のためにどのような準備をすれば良いのか全て公開している - GIGAZINE
Amazonの労働者を檻に入れるかのような特許が話題に - GIGAZINE
・関連コンテンツ