ゴッホの複製画を20年以上描き続けた画工・趙子勇による「星月夜」の実物を見てきた
世界の絵画市場のうち、6割の複製絵画が中国・深圳市の大芬(ダーフェン)という場所で生み出されていて、画工の数は実に1万人を超えているとのこと。そのうちの1人、趙子勇(チャオ・シャオヨン)氏は20年以上かけて10万点以上のゴッホ作品を生み出してきました。ゴッホに人生を捧げることになった趙氏が、オランダにあるゴッホ美術館へ行って姿を追いかけるドキュメンタリー映画「世界で一番ゴッホを描いた男」の日本公開に合わせて、公開劇場のうち3カ所でで趙氏による「ゴッホの複製画」の実物が展示されるということだったので、どのような絵なのか見に行ってきました。
映画『世界で一番ゴッホを描いた男』
http://chinas-van-goghs-movie.jp/
絵画が展示されているのは東京の新宿シネマカリテ(「15本のひまわり」「クロー平野の収穫、背景にモンマジュール」)、名古屋の伏見ミリオン座(「包帯をしてパイプをくわえた自画像」)、大阪のシネ・リーブル梅田(「星月夜」)。
シネ・リーブル梅田は梅田スカイビルの3F・4Fにあり、展示が行われているのは4Fのエントランス部分。ニューヨーク近代美術館の永久コレクションである本物のゴッホの「星月夜」ならこんな展示方法は不可能だといえます。とはいえ、ゴッホの絵をもとに画工・趙子勇氏の手で描かれた複製画のホンモノではあります。
間近まで迫れるのでカラーコピーなどではなく手描きの絵画であることが肉眼ではっきりと確かめられます。複数の色で塗り分けられた空は、絵の具が大きく盛り上がっています。
ちょっと意外に感じたのは絵のサイズ。右上にある月の部分の大きさはだいたいSuicaと同じぐらい。スケールの大きな絵なので、なんとなく巨大な絵をイメージしていましたが、展示されていたのは映画館に飾られているポスターより小ぶりなもの。実物の寸法は73.7cm×92.1cmですが、複製画市場では様々なサイズの絵が制作されています。
実物をぼんやりとしたイメージでしか覚えていなかったため、「星月夜」といえばこういう絵画だという気がしていましたが……
隣に並べられていたポスターにはゴッホの実物が使われているので、その差を比較することができる状態になっていました。あくまで、似せて描いたレプリカだということがよくわかります。
ちなみに、趙氏は取引先のオランダ人を画廊だと思っていましたが、実際に現地に行ってみて街の土産物屋であること、価格が卸値の8倍以上あることを知り、愕然とすることに。
映画「世界で一番ゴッホを描いた男」は「複製画ビジネス」はもちろんのこと、現代の中国社会が抱える様々な問題も描き出されているので、機会があればぜひ見てみてください。
映画『世界で一番ゴッホを描いた男』予告編 - YouTube
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