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次のスマホ市場で最も有望な「インド」は中国勢が制圧済み、今後もスマホの覇権を中国勢が握り続ける見込み


中国のスマートフォン販売が減少に転じる中で、今後、最も重要視されるのは「インド市場」と言われています。中国に次ぐ世界第2位の巨大市場ですが、すでに中国製スマートフォンが席巻している状況で、地元のインド企業はもちろんAppleさえ入り込む隙がないようです。

Chinese smartphone makers are winning in India -- the fastest growing market | VentureBeat
https://venturebeat.com/2018/09/01/chinese-smartphone-makers-are-winning-in-india-the-fastest-growing-market/

調査会社Canalysは、2018年第1四半期の中国のスマートフォン販売台数が前年同期比で21%も減少したことを明らかにしました。これまで世界のスマートフォン市場をけん引してきた中国で、スマートフォンが隅々まで普及したことおよび革新的な技術的進歩がないことなどが原因で、ついに市場がピークを越えたとみられています。


中国をはじめとして先進国や新興国でスマートフォン市場が頭打ちになりつつある中、最も有望な市場として世界中のスマートフォンメーカーから熱い視線が注がれているのがインドです。インドは13億人という世界第2位の人口を抱えるだけでなく、いまだスマートフォン市場が発展途上であり、スマートフォンへの需要は今後数年間は衰えることなく拡大すると予想されています。


インドで2018年7月に発売された新型スマートフォンは42種類。前年7月が25台だったことと比べても、インドのスマートフォン熱はますます高まっているのがわかります。そんなインド市場のスマートフォンメーカーは、トップ5のうち4社が中国メーカーで、唯一中国勢の中に食い込んでいるのは韓国のSamsungのみ。しかし、長らくインドのトップベンダーとして君臨してきたSamsungもインドシェアは24%まで縮小し、2017年に中国のXiaomi(インドシェア29.7%)にトップの座を明け渡し、Vivo(同12.6%)、Oppo(同7.6%)、Transsion(同5%)という中国勢の猛追を受けてシェアを落とし続けています。


インド市場の3分の2を占めるまでになった中国勢ですが、3年前の市場シェアは15%以下でした。当時のインド市場はトップのSamsungとMicromaxなどの地元インド企業が大きなシェアを持っていました。潮目が変わった原因は、インド国内のモバイル回線事情の急激な変化が原因の一つに挙げられています。

インドでは実業家のムケシュ・アンバニ氏がインドに高速の通信網を整えるために、私財を投じてReliance Jioサービスを始めました。

インド一の実業家が私財を投じて激安の高速無線通信網を構築、インドにIT革命到来の予感 - GIGAZINE


Reliance Jioが価格破壊ともいうべき4G通信のサービス提供を開始したにもかかわらず、インドのスマートフォンメーカーはインド市民が手に入れられる低価格な4G対応スマートフォンのリリースに手間取ったとのこと。その間隙を中国市場で激しい競争を行っていた中国勢につかれました。2016年時点で総市場シェア46%を占めインド市場で存在感を見せていたMicromaxなどインド勢は市場から見放され、もはや回復不能なくらいの大差を中国勢につけられることになっています。


また、インドの政策変更に中国勢がいち早く対応したことが中国勢躍進の一因だとVentureBeatは指摘しています。2014年にインド政府は「Make in India」プログラムを発表しました。インドの製造業のGDPシェアを向上させるべく外資による国内投資を促進する目的で、Make in Indiaプログラムではインド国内で製品を製造する企業に税制面での優遇を与えました。この政策にいち早く適応したのがXiaomiで、2018年時点でインド全土に6つのスマートフォン製造工場を抱え、1万人以上のインド人を抱えるなど、インドで販売するスマートフォンをインド国内で製造する態勢を整えています。なお、Xiaomiがインドで雇用するインド人の95%が女性だそうで、雇用における男女格差を解消する役割も果たしています。

巨大なインド市場で大量のスマートフォンを製造することは、必然的に低コストでのスマートフォンの提供につながります。Xiaomiは税制面での優遇を受けつつ、低廉なインドの労働力をフルに活用することで、インド発の高性能かつ低価格なスマートフォン「Poco F1」を発表するまでに至っています。SoCにSnapdragon 845、メモリは6GB、UFS2.1ストレージを採用しつつわずか2万999ルピー(約3万3000円)という、中国産スマートフォンも真っ青なレベルのコストパフォーマンスを実現しています。


低価格製品をラインナップしないAppleは、長らくインド市場の攻略に失敗し続けています。Appleはすでに販売を停止したiPhone 4を再販したり、比較的低価格なiPhoneであるiPhone SEを残したり、iPhone SEをインド国内での製造に切り替えたりと対策を打ってはいますが、プレミアム価格スマートフォンの市場が育っていないインド市場では苦戦が続いています。しかも、OnePlusなどの高性能かつ低価格なスマートフォンがインドの高性能スマートフォン市場で急速に人気を集めており、プレミアムスマートフォン市場でもAppleは存在感を失いつつあります。


元々、中国のメーカーはインド市場向け端末の設計・製造を請け負ってきました。しかし、製造を請け負う中でインド人の好みを学習した中国メーカーは、インド企業のために製品を作るのではなく、自らで販売まで行う方針に切り替えたことでさらなるコスト減に成功し、もはやインド企業が食い込む余地はなくなってしまったようです。そして、価格競争がシビアなインド市場でもまれて優秀な製品を開発・販売することは、巨大なインド市場を制するだけでなく、世界的な販売戦略でも大きなメリットになりつつあります。例えば、インド市場で急伸するTranssionは、アフリカ市場でもトップベンダーになっています。


中国市場が頭打ちになる中、最も有望な市場として期待されるインド市場を中国勢が制することは、今後の世界的なスマートフォン市場でも中国メーカーがますます存在感を増すことを予感させます。

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in モバイル,   ハードウェア, Posted by darkhorse_log

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